プロットが古いのは否めない ☆4点
1962(昭和37)年に発表された三島由紀夫のSF的な長編小説の映画化で『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督。
出演は主役となる家族の父役にリリーフランキー、母役に中嶋朋子、長男役に亀梨和也、長女役に橋本愛
予告編
映画データ
映画館では上の予告は見なかったんですけど、下の特報を見て面白そうだなぁと思い鑑賞。
監督は吉田大八さん
やっぱり吉田大八監督といえば『桐島、部活やめるってよ』だと思うんですけど、これはツイッターで大根仁監督が絶賛してたのを見て1時間後には観に行ってましたからね。
あと自分でも気づいてなかったんですけど、桐島を観る以前にレンタルですが『クヒオ大佐』を見てました。
これも面白かったんですよね。
『紙の月』は劇場で見よう見ようと思ったんですけど、なかなかいい時間にやってなくて見そびれて、後からWOWOWでやったのを見たんですけど、今作も上映2週目ですが上映回数減らされるの早くないですかね?
3週目とかになるとどうなるか分からないので早めに観に行ってきました。
主演はリリー・フランキーさん
元々はフジテレビのバラエティ「ココリコミラクルタイプ」にレギュラー出演するようになって一般の人にも知られるようになったと思うんですけど、役者目指してた訳じゃ無いのにいまや映画に出ずっぱりだからすごいです。
脇役の方が多いですが、一番最近で主演したのは『シェル・コレクター』かな。
共演に中嶋朋子さん
やっぱり何といっても「北の国から」の蛍。
映画ではあまりお見かけしませんが『家族はつらいよ』にも出てますね。
共演に亀梨和也さん
今年は『PとJK』一昨年は『ジョーカー・ゲーム』を観てます。
共演に橋本愛さん
この方も映画の出演多いです。
先日観た『PARKS パークス』
吉田監督とは桐島で、リリーさんとはシェルコレクターで再びとなります。
あらすじ
当たらないお天気キャスターの父・重一郎(リリー・フランキー)、野心溢れるフリーターの息子・一雄(亀梨和也)、美人すぎて周囲まわりから浮いている女子大生の娘・暁子(橋本愛)、心の空虚をもて余す主婦の母・伊余子(中嶋朋子)。
そんな大杉一家が、ある日突然、火星人、水星人、金星人、地球人として覚醒。
美しい星・地球を救う使命を託される。
ひとたび目覚めた彼らは生き生きと奮闘を重ねるが、やがて世間を巻き込む騒動を引き起こし、それぞれに傷ついていく。
なぜ、彼らは目覚めたのか。
本当に、目覚めたのか——。
そんな一家の前に一人の男(佐々木蔵之介)が現れ、地球に救う価値などあるのかと問いかける。(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
まず自分は全然読書しないからあれなんですけど、三島由紀夫がこういうSF的なものを書いてたのにビックリしました。
ウィキペディアを見ると三島は推理小説は嫌いだったけどSFは好きだったんですね。
この作品をSF小説と言っていいかは難しいところで、三島の「これは、宇宙人と自分を信じた人間の物語りであつて、人間の形をした宇宙人の物語りではない」という言葉からすると、SF的なものをモチーフに取り入れた作品ということになります。
宇宙人じゃなくても、ある日突然、天命とか天啓を受けた人の話でもよくて、妄想に取り憑かれた人の話ということになります。
ただ映画だけを見てるとそこが難しいんですよね。
ここで感想を書くまでは、私は完全にSF映画だと思って観てました。
人間の形をした宇宙人の話。
金星人である娘の暁子は観客にも答えが示されます。
暁子は自分を金星人であると思ってて、憧れのミュージシャンである竹宮(若葉竜也)も金星人で、自分は処女懐胎して竹宮は金星に帰って行ったと思ってますが、実際はバンギャがバンドマンに引っかかるのと同じで、夢を語られ、それを信じ、(薬を使って)気付かないうちに肉体関係を結ばされ、飽きたら捨てられた、という事でしょう。
海で竹宮とUFOを見た表現があるのは幻想とか幻影とか夢ですね。
火星人である父の重一郎の場合は難しいです。
重一郎はアシスタントの中井玲奈(友利恵)と不倫して二人で車で帰る途中で白い光に覆われ、気づいたら田んぼの中に車が埋まってて、アシスタントはいなくて一人だったわけですが、翌日アシスタントに会ったときに、どうやって帰ったのか聞くんですが、そこは答えを示さないでシーンが変わります。
車ごと田んぼの中に埋まってて警察官に起こされたわけですが、あれが事実かどうかなのかですが、あれも妄想なんでしょうな。
というのもその前のベッドシーンでコトが終わって眠ってると、不自然にアシスタントが着替え出して帰るという流れになってるからで、あそこから妄想に入っているのでしょう。
水星人である一雄の場合はエレベーターでの予知ですが、あれも結果的に失敗(犯人と思った人物は銃を持っていなかった)したので、完全な妄想ですよね。
お母さんの伊余子だけは何人でも無くて、強いて言えば地球人なんですが、ミネラルウォーターのマルチ販売にハマる話は面白いんですけど、あの話はあんまり他の話に掛かってこないような?
表彰式での流れから一雄の話に掛かってきますけど、家に大量のミネラルウォーターが置いてあっても誰もそれには触れずにいて、お話としては完全に浮いてしまっているんですが、それも監督の狙いなのかしら?
映画を観てる最中はSF映画だと思って観てたので、重一郎が火星に帰っていくラストは、なんとも宙ぶらりんに思って、じゃあ家族の再生を描いてるのかな?とも思ったんですけど、それだとそこまで家族の崩壊を描いてるわけでもないので、そのテーマも薄いような気がして、何が言いたいか分からなかったんですけど、そのまんまお天気キャスターの重一郎が危惧している地球温暖化とかそういうのを真剣に考えろってことなのでしょうかね?
末期がんでステージ4の重一郎の希望で家族で協力してUFOが迎えにくるところまで車で運ぶのですが、常磐道通って福島入って、警察官の規制線を突破してってことは、福島の立ち入り禁止区域に入るっていう表現だと思うんですけど、あれも唐突なんですが、反原発へのメッセージということでしょうか?
テレビ局の屋上で黒木(佐々木蔵之介)と繰り広げられる論戦は、原作でいうところの、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」の章を意識してかかれたシーンでしょうが、確かに迫力があって映画でもクライマックスになってましたけど、このテーマは『寄生獣』でやっちゃってますからちょっと弱いんですよね。
やっぱり昭和37年当時のSF的なものをプロットにしたのは、現在に当てはめると古くなってしまうので、時代設定は当時のままにすればよかったと思います。
(小説と映画ここが違う↓)
あと、やっぱり自分としては、ストーリー的にもう一捻り欲しくて、あの家族に起こったことならば、もうちょっと家族の再生を分かるように描いて頂きたかったかな、と。
ただテーマとしてはありきたりになってきてるものを、中盤なんかの細かいカット割りで畳みかけるような演出で魅せるのは、吉田監督の手腕で映画を退屈じゃなくさせてたと思いまして、そういうところはさすがだなぁと思いました。
鑑賞データ
TOHOシネマズ渋谷 シネマイレージデイ 1400円
2017年 90作品目 累計95400円 1作品単価1060円
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