登場人物少ないが広がりがあってよい ☆4.5点
予告編
映画データ
『シックス・センス』のM・ナイト・シャマラン監督の最新作です。
前作『ヴィジット』のときは、ちょうど『マイ・インターン』とか『ジョン・ウィック』が公開されてた頃で、観に行こうかなぁと思いつつもスルーしたのですが、製作費500万ドルくらいの低予算の作品で日本での興行収入も7000万円ですから、観た人も少ないんじゃないかと思います。
日本でも大ヒットした『シックス・センス』は公開時には観てなくて、評判を聞いてあとからDVDで観たんですが、所謂本人オチってやつで、それなりに面白かったのですがヒットし過ぎだろうと思いまして、この1作で評価が定まってしまった感じで過剰評価といいますか、新作が過大に期待されるタイプな監督のイメージです。
あとシャマラン監督作で観てるのは『サイン』と『ヴィレッジ』のような気がするのですが、あまり覚えていません。
『シックス・センス』のときは子役のハーレイ・ジョエル・オスメント君が可愛いというのでも話題になりましたよね。
映画界には子役と動物には勝てないという言葉がありますが、ハーレイ君がいたのもヒットの要因ではないかと思います。
そんなハーレイ君は2年前に『Mr.タスク』という作品で久しぶりに観ました。
いい感じにオッサンになってましたね。
本作は劇場での予告編はあまり目にしなかったんですが、アメリカで公開された時にヒットしていて評判もいいらしいことは知っていました。
内容も最近まで知らなかったんですけど、多重人格者が女子高生を誘拐・監禁する話で、なるほどと。
主演は多重人格者のケビン役にジェームズ・マカヴォイ
X-MENシリーズを観たことがないので初めましての役者さんですが、ネオナチみたいな坊主頭と『セブン』でのケヴィン・スペイシーを彷彿させる怪演で上手かったですね。
監禁されるヒロインの女子高生のケイシー役に真野恵里菜ちゃん。
もといアニャ・テイラー=ジョイ
この方も初めましてでしたが、ずっと真野ちゃんと思って観てまして可愛かったですね。
同じく監禁される女子高生のクラスメート、クレア役でヘイリー・ルー・リチャードソン
この方は眉毛が印象的なんで先日観た『スウィート17モンスター』の親友役(クリスタ)の人だとすぐに気が付きました。
同じく監禁される女子高生のクラスメート、マルシア役でジェシカ・スーラ
それからケビンがカウンセリングを受けているDr.フレッチャー役にベティ・バックリーという方。
この方、ブライアン・デ・パルマ監督の『キャリー』ではキャリーの担任先生役だったそうで、狙ってキャスティングしたのかなぁなんて思いました。
主要登場人物はこんなもんかな。
あとシャマラン監督自身はDr.フレッチャーを手伝う役で出てきます。
あらすじ
級友のバースデーパーティの帰り、車に乗った3人の女子高生。見知らぬ男が乗り込んできて、3人は眠らされ拉致監禁される。目を覚ますとそこは殺風景な密室…彼女たちはその後、信じがたい事実を知る。ドアを開けて入ってきた男はさっきとは違う異様な雰囲気で、姿を現す度に異なる人物に変わっていた― なんと彼には23もの人格が宿っていたのだ!そして、さらに恐るべき24番目の人格が誕生すると、彼女たちは恐怖のどん底に。
3人 VS <23+1>人格。果たして、3人は無事に脱出できるのか!?(公式サイトhttp://split-movie.jp/storyより引用)
ネタバレ感想
これ、あれですね。
自分は予告編をちゃんと見ないで本編を観たので気づかなかったのですが、予告編観ると結構ネタバレしてるんですね。
まずケイシーは元々は誘拐される子じゃなかったりします。
完全にもらい事故、ならぬ貰われ誘拐。
ケイシーはクラスでは浮いた存在で、誰も友達がいなかったりします。
この日は、ほぼ義理状態でクレアの誕生会に出席していて、帰るときにクレアの父が一緒に送ってくれるってことになってこの監禁に巻き込まれます。
ケビンの狙いはクレアとマルシアで数日間尾けられてました。
この映画、最初、とっつきにくく感じたのですが、監禁したら監禁したとこだけで、話がずーっと続くのかと思いきや、ケビンがちょくちょくDr.フレッチャーの所に行くんですね。
最初フレッチャーが何者かが分からず(病院とかではなく自宅にずっといるので)戸惑うんですけど、観てるうちに多重人格者の症例に詳しい精神医学者とか心理学者だというのが分かります。
フレッチャーが住んでるマンションの螺旋階段がイメージとして挟まれるのも序盤のうちは分かり辛くしてたと思います。
それから監禁されてるケイシーの幼少期もちょいちょい差し込まれるんですね。
これも最初観てると分からないのですが、あとで伏線となって生きてきます。
ちょっと集中力が途切れそうになるんですが、ケイシーの幼少期役の子が、これまた素晴らしく可愛いのでそこに注目すると観れます。
最近では『はじまりへの旅』といい『LION/ライオン ~25年目のただいま~』といい可愛い子役が続きます。
それでケビンがフレッチャーの元を頻繁に訪れるのは、人格の中でトラブルが起こっていて無意識のSOSなんですが、フレッチャーの元を訪れる際は「社交的でアーティスティックな才能があるゲイ」の人格バリーが現れてて、この人格は全人格の中でもリーダー的存在なんですね。
ただ最近、ヘドウィグという9歳の少年の人格がたまにイニシアチブを持つようになって、それまで抑えられていた反社会的な人格のデニスとパトリシアが顔を出すようになります。
女子高生を誘拐したのはデニスの人格で、それまでは抑えられていたんですが、数年前にケビンが女子高生に自分の手を胸にもっていかれるという軽いいたずらがあって、それで目覚めちゃって女子高生と裸のダンスがしたいというデニスの人格が顔を出すようになります。
パトリシアは女性の人格ですが、デニスとコンビのような存在でヘドウィグという子供の人格を言葉巧みに操り、全人格のコントロールをしようとしてます。
この映画では23人の人格があるという設定ですが、多重人格といえば90年代に日本でもベストセラーになったダニエル・キイス著「24人のビリー・ミリガン」を思い出すんですが、これディカプリオ主演で映画化するって話あったんですけどどこにいっちゃったんでしょうかね?
シャマラン監督も当然これはモデルにしてると思われ、本作でも24番目のビーストという人格が生まれようとしていて、これが予告編の「人格によって肉体が変化する」とか「あいつが来る」にかかってます。
ヘドウィグたちによって語られるビーストは、鋼の肉体、壁の僅かな凹凸でも登れるという、言葉だけで『グエムル-漢江の怪物』みたいのを想像してしまったのですが、これが実在するのか?
『ユージュアル・サスペクツ』で言えばカイザー・ソゼにあたると思うのですが、フレッチャー先生は信じていません。
でも観客は出てくるって分かります。
それはフレッチャー先生が診た多重人格者の症例の中で、ある者は人格の中で重量挙げの選手になる人もいて、その人の場合は自分の3倍もの重量を挙げると言ってるからで、フレッチャー先生自身が人格によって肉体が変化するって言ってるからです。
そしてこれは超能力にも繋がってくる話ではないかとフレッチャー先生は言います。
ケビンの多重人格、解離性同一性障害は母親の厳しい折檻によって引き起こされたのですが、ケイシーの幼少期が描かれるのも秘密がありました。
ケイシーは幼いころから父親と叔父(父の弟)とで森で鹿狩りをしてたのですが、父からはハンターとしての心得みたいのを幼いながらによく聞かされます。
そのため忍耐強く物怖じしない子に育つのですが、森の中では動物ごっこと称した裸のじゃれ合い、性的虐待を叔父からされていました。
一時は叔父をライフルで殺しそうになりますが、父が心臓発作で死んでしまい、叔父との生活を余儀なくされることになります。
ケイシーがクラスでも浮いた存在だったのは、問題を起こせば学校で居残りさせられるからで、家に帰りたくないからでした。
なのでケイシーはケビンに監禁されても、他の二人のようには慌てません。
他の二人は逃げようとして独房のような部屋に入れられてしまいましたが、ケイシーはじっくりと状況を見極めてから行動に移します。
ヘドウィグが少年の人格と分かると、そこから突破口を見出そうとします。
ヘドウィグと仲良くなるとケイシーはヘドウィグの部屋に案内され、そこで秘密のおもちゃであるトランシーバーを見つけます。
ヘドウィグはトランシーバーはおもちゃでなく使えると言います。
ケイシーが強引に使うと確かに外の人と会話出来ましたが誰だか分かりません。
助けを求めるもデニスによって部屋に戻されてしまいます。
シャマラン監督、ニクいなと思ったのは、クレアとマルシアが逃げ出そうとして見つかったら罰として、クレアはシャツ、マルシアはズボンを脱がされ下着姿になるのですが、ケイシーは2回上着を脱がされるものの着込んでいるため下着姿までにはならず、ケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)のも見たいぞと思うんで貼っときますね。
話それたんで戻します。
フレッチャー先生は頻繁にやって来るバリーを不審に思って人格が違うことを見抜くんですね。
そこにはバリーのふりをしたデニスがいて先生も初めましてでした。
デニスからもビーストの話を聞かされますが先生は信じないんですね。
それでいよいよビーストが目覚めそうになるとバリーはSOSのメールを立て続けにフレッチャー先生に送るので、先生はようやくケビンの家へ向かいます。
ケビンの家へ行ったフレッチャー先生はトイレ借りるふりして他の部屋を調べるとクレアを見つけるんですが、デニスにバレてケイシーたちを襲った催涙スプレーと同じみたいので眠らされちゃいます。
デニスはそのまま外へ出て駅のホームに花束を置くと車両基地みたいなトコに行ってビーストに変身しちゃいます。
夜の街を疾走して自宅に戻るビースト。
プロレスのベアハッグみたいな技で先生を殺すと、クレアとマルシアも齧って殺しちゃいます。
ケイシーは落ちてた釘を使って閉じ込められてた部屋から出ると、フレッチャー先生の死体を見つけます。
死体のそばには先生の書いたメモがあり、ケビンのフルネーム(ケビン・ウェンデル・クラム)を言えと書いてありました。
ケビンのフルネームを言うことで、母親に折檻されてた頃のケビンを呼び戻すんですね。
ビーストに追い詰められたケイシーはケビンのフルネームを叫ぶとケビンの人格が現れます。
ケビンの人格だけは2014年から眠らされていて状況が分かってませんでした。
ケイシーに状況を説明されるとライフルで殺してくれとケビンは言います。
ライフルはそこ、弾はケビンの制服の胸ポケットにあると言います。
ライフルは見つかったものの弾が見つからないうちに、目の前で次々に人格が入れ替わりまたビーストが現れたので、ケイシーは建物の奥に逃げます。
奥には更衣室のようなロッカーがたくさんあって、その中にケビンのロッカーを見つけて開けると制服がかかっていて弾を取り出すと、ビーストが向かってきます。
ここで鹿狩りのときのハンターの心得が生きてきて弾が当たるかと思いきや当たりません。
ケイシーは通路の奥の脇にある檻の中に入り鍵を閉めると、ビーストがすぐそばまでやってきます。
真正面にいるビーストに2発銃弾を命中させますが致命傷には至らず、ビーストは檻の鉄柱を物凄い力で曲げてこじ開けてきました。
すると、ケイシーの体に防御反応なのか、みみず腫れのようなアザが現れます(か服が破れてて元々あったのが見えたかも)。
それを見たビーストはケイシーもまた自分と同類なのを悟ってその場から離れるのでした。
檻の中で気を失っていたケイシーは警備員に助け出されます。
そこは動物園の中でケビンの勤務先でした。
ヘドウィグの持っていたトランシーバーは動物園のトランシーバーでした。
とあるダイナー。
テレビで今回の事件のニュースをやってます。
動物園で女子高生2人と精神科医が殺されたと。
逃げた犯人にあだ名が付けられてたので、客の1人が15年前にも車椅子の犯人にあだ名が付けられた事件あったよなと言います。
するとカウンターに座っているダンという名札を付けた男が「ミスター・グラス」だよと言って映画は終わります。
ダン役は突然のブルース・ウィリスでビックリ!
何のことか分かりませんでしたが、エンドロール後に急告というお知らせがあって2019年に『アンブレイカブル』と本作の続編が作られるということでした。
なので本作は『アンブレイカブル』と同じ世界観の中で作られていて、スピンオフ的な作品にもなるのかな?
たぶんビーストとアンブレイカブルがどうなっちゃうか?でしょうから、マーベル・シネマティック・ユニバースというかDCエクステンデッド・ユニバースというかモンスターバースみたいで、シャマランバース化か!とやりよるなって感じです。
『アンブレイカブル』観てないので細かいところ(ビーストになる前、駅行って花手向けるところとか)が分からないですが、最後の方は監禁スリラーからジャンルが変わる感じでなかなか面白いと思います。
本作も900万ドルの低予算で作られましたが全米興収は8000万ドルを超えてきてるので、シャマラン監督は低予算でも自分で全てコントロール出来る映画の方がいいんじゃないかと思いました。
鑑賞データ
新宿バルト9 夕方割 1300円
2017年 75作品目 累計78300円 1作品単価1044円
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