抑制の効いた演出でよかった ☆4.5点
予告編
映画データ
あらすじ
誰もが認める無敗の世界ライトヘビー級王者、ビリー・‘ザ・グレート’・ホープは、ボクシングの聖地マディソン・スクエア・ガーデンで行われた試合で強烈な右で逆転KOを決め、脚光を浴びていた。彼の武器は怒りをエネルギーにする過激なスタイルだが、妻と娘の心配は絶えない。そして、その怒りが引き金となり、最愛の妻の死を招いてしまう。悲しみに暮れ自暴自棄な生活を送るビリーは、ボクシングにも力が入らず世界チャンピオンの称号を失い、信頼していた仲間、そして娘まで失ってしまう。もはや何もない。明日の生活にさえ困るどん底の境遇の中、ビリーは第一線を退き古いジムを営むティックに救いの手を求める。彼は、無敗を誇った自分を唯一苦しめたボクサーを育てたトレーナーだった。
「お前にはしばらくグローブを握らせない」「お前の短気は命取りだ」「ボクシングはチェスのようなものだ」ボロボロの元チャンプ、ビリーへのティックの罵詈雑言。しかしその言葉には再生のための鍵が隠されていた。やがてビリーは、過去の自分とひたむきに向き合うことで、闇の中に光を見出していく。「娘を取り戻したい」ビリーはプライドも名声もかなぐり捨て、父として、ボクサーとして最愛の娘のために自分を変え、再びリングに上ることを決意する。そして、ティックは復活のための秘策をビリーに授けるのだった…。
(公式サイトhttp://southpaw-movie.jp/より引用)
ネタバレ感想
だいたい想像できる内容だったんですけど、面白かったです。
上映時間124分もあったんですね。
中だるみする感じも無く、そんなに長く感じませんでした。
予告編とかを見てて、観る前はもっと過剰なのかなぁと思ってましたが、わりと淡々としてて、この監督さん(アントワーン・フークア)の作品初めて観たんですけど、抑制が効いててよかったと思いました。
物語は前半レイチェル・マクアダムス、後半フォレスト・ウィテカーという感じで、レイチェル・マクアダムスは『スポットライト 世紀のスクープ』でお気に入りになったんですけど、スポットライトとは違ってかなりセクシーな感じだったので凄くよかったです。
まさかあんな感じであっさり死んじゃうとは思ってなかったのでビックリしました。
フォレスト・ウィテカーもこれぞ名トレーナーという雰囲気でよかったです。
ジェイク・ギレンホール演じる主人公ビリー・ホープは、選択出来うる限り、最悪の選択しかしてなかったので、ああなるのも当然だなと思いました。
アメリカは子供の養育に対しては厳しいので、子供がお父さんと一緒にいたい、父親も子供と一緒にいたいと思っても、それだけで許可されるものでなく、映画『チョコレートドーナツ』でもその辺の理不尽な感じが描かれてましたが、親にどれだけ社会性が有るかが問われるので、主人公は変わらなければならないんですね。
本作の場合、父親を変えるために娘の方から父離れするひたむきさがよかったです。
施設育ちで識字率も低いであろう父親と単語のスペルの問題を一緒にやるシーンはよかったです。
さて、新トレーナーと出会って徹底的にやったのは防御。
これ元々は43連勝して四大団体(WBA、WBC、IBF、WBO)の統一ライトヘビー級チャンピオンだったわけですが、あんなに防御の技術が無くてチャンピオンだったというのはリアリティがない話なんですけど、まあそれは置いておきます。
縄張ったトレーニングとか映画的に映えるし面白いからいいのです。
デンプシーロールを習得した「はじめの一歩」みたいで漫画的で楽しいのです。
それで、タイトルの『サウスポー』なんですけど、主人公右利きなんですよね。
なんでだろうと?思って見てると、新技を授けられるんですね。
スイッチしてからのサウスポー。
これはここぞってときだけに出す必殺技です。
ラスト、力石のアッパーみたいの決まってカッコいいですよね。
チャンピオンをダウンさせるけど、ゴングに救われて判定へ。
最初に書いた通り、想像できる内容というのは主人公が勝ってハッピーエンドだろうなと思ったんですが、この判定になったとき負けるかな?と思ったんですよね。
ロッキーの1みたいにナイスファイトだったけど負けるみたいな。
というのも伏線が張られていて、ビリー・ホープがウィテカーにトレーナーを打診したときに理由が語られていて、それは以前、ウィテカーがトレーニングしてた選手と対戦してて、そのときは判定で勝ったけど、本当はジャッジを買収しててそれで判定で勝ったと。
43連勝したけどその試合だけは負けてたと認めたんですね。
その選手を指導したあなただからコーチを引き受けて欲しいと。
ボクシングはプロモーターのマッチメイクによるところも大きくて、作られたチャンピオンというのも存在します。
今作のプロモーターもご多分に漏れず山っ気のある人物として描かれていて、長らく主人公と関わってきた人物です。
レイチェルとの会話で10年くらいって言ってたかな。
きっと彼はその試合の買収にも関わっていたと思うんですよね。
そんな彼は今は現チャンピオン側。
2人の判定が読み上げられ1対1。
3人目は116対112(くらいだったかな?大差)
あ、これ買収されてて負けるな、と思ったんですけど、そんな捻じくれてなかった。
ビリー・ホープが勝った!希望が勝った!
これ負けてても物語的には全然問題なかったと思うんですよ。
でもこれ監督の気持ちも込められているなーと思いました。
ボクシング界への希望や、人生への希望が。
ひたむきに、真面目に、一生懸命やってれば勝つ!って。
汚れてしまった現代に嬉しいメッセージだと思いましたよ。
鑑賞データ
池袋シネマ・ロサ レイト割引 1300円
2016年 63作品目 累計73600円 1作品単価1168円
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