ムーンライト 評価と感想/4月4日 オカマの日 新宿にて

ムーンライト 評価と感想
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ゲイとバイの十年愛 ☆5点

予告編

映画データ

ムーンライト (2016):作品情報|シネマトゥデイ
映画『ムーンライト』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:ブラッド・ピットが製作陣に名を連ね、さまざまな映画祭・映画賞で高評価を得たドラマ。
http://cinema.pia.co.jp/title/172165/

2017年 第89回アカデミー作品賞の受賞作品です。

毎年、2月3月は、アカデミー賞の発表に合わせて、日本では作品賞のノミネート作品が封切られることが多いんですが、今年は少なくて、まだ今のところ『ラ・ラ・ランド』と本作のみ。

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トラブルのあったアカデミー作品賞の発表ですが、発表時は全く本作のことを知らなくて、断片的に見た映像のイメージでは、黒人の貧民街からの~、みたいな話かと思いましたが、公開されて漏れ伝わってくる話によるとゲイの話だとか。

上にあげた本国版の予告編は何回か見ていて、イメージ的な抽象的な映画かな?と思っていたのですが、下の日本オリジナル予告を見るとかなり分かりやすいですね。

公開規模は全国で80館弱で、自分がよく観に行く映画館ではTOHOシネマズ系列でしかやってなかったので、六本木か新宿で観ようと思ったんですけど、ちょうどいい時間が新宿だったので新宿で観ました。

劇中オカマという台詞が出てくるのですが、そういえば今日(4月4日)はオカマの日で、新宿2丁目近いし、聖地だ!と思いまして、上映終了後、周囲を見渡しましたが、ゲイのカップルで観に来てる感じは無かったかな。
というか、この日は2丁目のお店はイベントやってるところが多いでしょうから、そっち行きますね。

あらすじ

シャロン(アレックス・ヒバート)は、学校では“リトル”というあだ名でいじめられている内気な性格の男の子。ある日、いつものようにいじめっ子たちに追いかけられ廃墟まで追い詰められると、それを見ていたフアン(マハーシャラ・アリ)に助けられる。フアンは、何も話をしてくれないシャロンを恋人のテレサ(ジャネール・モネイ)の元に連れて帰る。その後も何かとシャロンを気にかけるようになり、シャロンもフアンに心を開いていく。ある日、海で泳ぎ方を教えてもらいながら、フアンから「自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな」と生き方を教わり、彼を父親代わりのように感じはじめる。家に帰っても行き場のないシャロンにとって、フアンと、男友達ケヴィンだけが、心許せる唯一の“友達”だった。

高校生になったシャロンは相変わらず学校でもいじめられている。母親のポーラは麻薬におぼれ酩酊状態の日も多くなっていた。自分の家で居場所を失ったシャロンは、フアンとテレサの家へ向かう。テレサは「うちのルールは愛と自信を持つこと」と、昔と変わらない絶対的な愛情でシャロンを迎えてくれる。 とある日、同級生に罵られひどいショックを受けたシャロンは、夜の浜辺に向かうと、偶然ケヴィンも浜辺にやってくる。密かにケヴィンに惹かれているシャロン。月明かりが輝く夜、二人は初めてお互いの心に触れることに… しかし、その翌日、学校ではある事件が起きてしまう。

あの事件からシャロンは大きく変わっていた。高校の時と違い、体を鍛えあげ、弱い自分から脱却して心も体も鎧をまとっている。ある夜、突然ケヴィン(アンドレ・ホーランド)から連絡がある。 料理人となったケヴィンはダイナーで働いていて、シャロンに似た客がかけたある曲を聴きふとシャロンを思い出し、連絡をしてきたという。あの頃のすべてを忘れようとしていたシャロンは、突然の電話に動揺を隠せない。 翌日、シャロンは複雑な想いを胸に、ケヴィンと再会するのだが―。

(公式サイトhttp://moonlight-movie.jp/story/index.htmlより引用)

ネタバレ感想

幼少期(小学生時代)のシャロン(アレックス・R・ヒバート)はかなり心を閉ざしてる感じで、口数も非常に少ないです。
麻薬売人の元締め的なフアン(マハーシャラ・アリ)は何を聞いても喋らないシャロンをいきなりご飯に連れてってくれるのですが、最初、なんでそこまで親切にしてくれるんだろ?と思いまして、フアンはショタのゲイなのかな?と思いましたが、違いました。
このフアンとテレサ(ジャネール・モネイ)のカップルは物凄くいい人なんですが、何でこんなにいい人なのかは謎です。

フアンとシャロンが初めて会った日は、シャロンが家の住所を言わなかったので、一晩泊めてからシャロンの家に送ってあげて、その際に初めてシャロンの母親ポーラ(ナオミ・ハリス)と会うのですが、見た目は小奇麗にしてて、シャロンにもテレビ見ちゃダメとか言ってたので、教育熱心なお母さんなのかな?と思ったのですが、まさかのヤク中だったという。
ときどき男も引っ張り込んで売春してた感じでしたけれど、ナオミ・ハリスの母役は不思議とビッチ感は無かったですね。酷い人でしたけど。
劇中はフアンの車やシャロンの部屋の壁の色に代表されるように、青色が象徴的に使われてたんですけど、ポーラが怒るシーンでは赤色が象徴的に使われてました。

幼少期のシャロンがいじめられてるシーンは、最初にいじめっ子に追いかけられてるシーンだけで、なぜいじめられてるか理由が分からないんですが、シャロンがフアンに「僕、オカマなの?」って突然聞くので分かります。
ナヨナヨしてるってことでいじめられるんでしょうけど、本作はこのシーンに限らず、直接的には描かないで、文脈から推察するっていうシーン(フアンの死とか)が多く、いい映画の特徴である、余白の大きい映画だったと思います。

幼馴染で唯一の友達のケヴィンは面白いキャラクターで、シャロンへの理解は深いんですけど、いじめっ子たちから直接守るようなことはしないんですよね。
おしゃべりで明るくてどのグループとでも上手くやってけそうなタイプですが、そんなに群れる感じでもない。
ラグビーだかアメフトごっこだかの遊びに飽きて、シャロンにお前は強いって言って、取っ組み合いのじゃれ合い(レスリングみたいな)になるシーンがありますが、ああいうので目覚めちゃうんだよなぁ、と思って観てました。

少年期(高校時代)のシャロン(アシュトン・サンダース)は相変わらず内気で暗く、ドレッドヘアの奴に思いっきりいじめられてます。母親のことも侮辱されますが、母親は母親で更に酷くなってて、シャロンがテレサのところで貰ってきたお小遣いまでせびってヤク代に充ててます。
ケヴィン(ジャハーム・ジェローム)はピアスなんかしちゃって、男なのに妙な色気があります。
学校の休み時間、女にフェラだけさせるつもりだったのが、せがまれてバックから事をしてたら、先生に見つかって停学になりそう、なんてシャロンに話してきます。
おお、って答えるしかないシャロンでしたが、ケヴィンがバックでしてるのが夢に出てきちゃったりします。

母親と喧嘩して、月明かりの下浜辺へ行くと、ケヴィンがやってきます。
ケヴィンは冗談を言ったり、シャロンを励ましたりしてるんですが、そのうちいい雰囲気になって接吻。

もう、ここの持っていき方が凄くいいです。
シャロンはケヴィンを意識してたけど秘めたる思いは言い出せずにいて、ケヴィンがどう思ってるか分からなかったんですけど、両想いだったんだ!という安心感。
男同士ではありますが、シャロンは初恋が叶って初体験も済ませちゃいます。
あの砂浜に手のひらを擦り付けるトコとかいいですよね。
何かいっぱい出たんだろうな、と。

2人の関係は周囲に知られてはマズいんで学校ではよそよそしいんですけど、ドレッドヘアの奴がケヴィンに中学生時代はよく悪さしたけど、最近は大人しいからつまんないよな、とか言ってまた昔のゲームやろうって言います。そのゲームってのはトレッドヘアが指名したやつをケヴィンが殴るっていう遊びなんですが、まあ、やっぱりというか当然というかシャロンが選ばれちゃいます。
ケヴィンは1発殴って終わらせるつもりでしたが、シャロンが2回、3回と立ち上がるので殴るしかなく、最後はトレッドヘアの奴とかに袋叩きにされてしまいます。
保健室で手当してもらってると、学校の先生は訴えなさいと言いますが、シャロンはいいって拒否します。
翌日、遅刻して学校へ行くと、授業中の教室で椅子を使ってトレッドヘアの奴をぶちのめすと、そのまま警察に連行されてしまいます。

青年期のシャロン(トレヴァンテ・ローズ)を見たときは、フアン役の人が演じてるのかなと思ったんですよね。
一瞬、フアンの回想の話だったのかと思いまして、こんがらがったんですが、あんまり外人の顔の区別がつかないのと、もやしっ子だったシャロンがフアンみたいになってて、車も同じだったからなんですが、幼少期編でフアンが母親のことを話してるシーンがあって昔は嫌いだったと言ってたことから、ゲイの部分を除いてはシャロンと同じような境遇だったんだろうなと思いました。
なのであんなにシャロンに優しかったんだと。

少年期編で逮捕されたシャロンはアトランタの刑務所に送られて出所した後は、アトランタで麻薬の売人になり完全にフアン化(ギャングスター)してます。
母のポーラは施設に入っていて、留守電が入っていたので会いに行くと、酷い母親だったと謝られます。
ヤクも止めて真人間になっていたようでしたが、お母さん遅いよと思いました。
ホント、酷い母親だったのでシャロンが可哀想でしたが、シャロンも泣いて許してました。

ケヴィン(アンドレ・ホランド)から電話をもらって会いに行くと、青年期編ではいかつい感じのシャロンが、少年期編や幼少期編の頃のシャロンに戻った感じで上手かったです。
ケヴィンの仕事が終わって車で送ってあげるところでは、どうやってホテルへ誘うか?均衡を破るにはどうする?みたいな感じでドキドキしました。

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結果、ケヴィンの家へ行って、シャロンが、あれ以降俺に触れた者はいないってカミングアウトするシーンは切な過ぎて涙腺崩壊しそうでしたね。
もうね十年愛ですよ。いやもっとか?二十年愛とか。

 

去年のアカデミー賞では惜しくも作品賞にも監督賞にもノミネートにならなかった『キャロル』ですが、本作と同様にLGBTを描いた素晴らしい映画で、本作の作品賞の受賞は、去年のキャロルがあったからだとも思います。

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などがありましたが、いずれも切なかったですね。

また、未見ですが古くは
ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』(カンヌ映画祭監督賞受賞)

アン・リー監督の『ブロークバック・マウンテン』(アカデミー監督賞、脚色賞、オリジナル音楽賞受賞)

がありまして、このテーマの映画には良作が多いなと感じてる次第です。

鑑賞データ

TOHOシネマズ新宿 シネマイレージデイ 1400円
2017年 52作品目 累計52100円 1作品単価1002円

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