ストイックさの先にある世界 ☆5点
予告編
映画データ
漫画原作は未読です。
先日第1シリーズが終了したアニメ版は見てました。
かなり面白かったです。
アニメ版は「魔法少女まどか☆マギカ」の新房昭之監督・シャフト制作だけあって、第1シリーズの前半、特に主人公・桐山零の内面描写や葛藤シーンでは、かなりまどマギ感がありました。
後半はわりと原作(読んでないですけど)に忠実だったんじゃないかと思います。
特に島田八段のエピソードにはやられましたね。すっかり島田八段のファンになっちゃいました。
(Amazonビデオで第1話が無料で見れるようです)
映画は東宝とアスミック・エースの共同配給で珍しいなと思ったんですけど、最近はわりとあるみたいです。
アスミック・エースだけだと300館規模での公開は厳しいでしょうから公開規模が大きくなってよかったんですけど、予想より入ってないようで。
うーん、いい作品なのに勿体無い。
確かにアニメ版にも見られたシリアスとコミカルの重ね合わせは減ってて、特に三姉妹とのほっこり感は少なくなってますが、それは尺的には致し方ないところで、その分、贅肉をそぎ落としたといいますか、研ぎ澄まされた上質な将棋映画になってて、昨年末の『聖の青春』と並んでいい映画だったと思います。
(聖の青春☆4.5点にしてたけど5点でいいな)
本作は3月18日の公開で、早く観たかったんですが、仕事終わりの19時台とかのちょうどいい時間になかなかやってなくて観れず、元々、前提として、前後編映画はあまり好きでは無いというのと、前編だけでも138分あると知って、ストーリーも知ってるし、鑑賞意欲も少し失せたんですけど、観に行ってよかったです。これ海外の映画祭に持って行ったらよかったんじゃないかな?
あらすじ
春のある日、東京の将棋会館で、17歳のプロ棋士・桐山零(神木隆之介)は、義理の父で師匠の幸田柾近(豊川悦司)との対局に勝利する。9歳の時に交通事故で両親と妹を失った零を内弟子として引き取ったのが、父の友人の幸田だった。
零は幸田家を出て、下町のアパートで一人暮らしを始めていた。1年遅れで再編入した高校では、会話を交わすのは担任の林田先生(高橋一生)だけだ。中学生でプロ棋士としてデビューした零は、史上5人目の天才ともてはやされているが、家も家族も友達もなかった。
ある時、具合が悪くなって道に倒れていた見ず知らずの零を、近隣の町に住む川本あかり(倉科カナ)が自宅へ連れて帰り介抱してくれる。その日から、長女のあかり、次女のひなた(清原果耶)、末っ子のモモ(新津ちせ)の3姉妹、すぐ側で和菓子屋〈三日月堂〉を営む祖父の相米二(前田吟)と零との温かな交流が始まる。
冬を迎えたある夜、零の部屋の前で義姉の香子(有村架純)が待っていた。妻のいるプロ棋士の後藤正宗(伊藤英明)と微妙な関係を続けている香子は、かつて弟の歩と共にプロ棋士を目指していた。二人が零に勝てなくなった時、幸田は自分の子供たちにプロへの道を諦めさせる。荒れる香子を見て零は家を出たのだが、香子も父親を避けて家をあけるようになっていた。
新年を川本家で迎える零。楽しいお正月は、皆で初もうでに出かけた神社で、後藤と香子に出くわしたことで一変する。零は香子から、もし自分が獅子王戦トーナメントで後藤に勝ったら、家に戻るという約束を強引に取り付ける。
獅子王戦─それは、将棋界の最高峰を決めるビッグタイトルの一つ。タイトル保持者の宗谷冬司(加瀬亮)と闘う挑戦者をトーナメントで決めるのだ。零が後藤に当たるには、島田開(佐々木蔵之介)を倒さなければならない。さらに幼い頃からのライバル、二海堂晴信(染谷将太)が「新人王になる」と宣戦布告した、新人戦トーナメントも待ち受けていた──。(公式サイトhttp://www.3lion-movie.com/story/より引用)
ネタバレ感想
前編は獅子王戦の宗谷名人(加瀬亮)vs島田八段(佐々木蔵之介)の対戦を桐山零(神木隆之介)が大盤解説するところまでを描いてるのですが、クライマックスが2つあって、1つはこの獅子王戦。
もう1つはアニメ版では無かったと思うのですが、獅子王戦の前に新人戦トーナメントの決勝戦があって桐山vs山崎順慶(奥野瑛太)の対戦が描かれてました。
この新人戦の決勝は、準決勝で二海堂晴信(染谷将太)が山崎に敗れてるため、敵討ち的な要素もあり見応え十分だったので、てっきり前編はそこで終わるのかと思ってたら、まだ続いたので驚きました。
本作は基本的にシリアスで、撮り方も『聖の青春』のようにじっくりと撮られています。
全体的な台詞も少なめで、将棋シーンでは特に台詞が少ないので、役者陣の表情を捉えてることが多いのですが、主演俳優クラスを脇役に並べているので、その演技、特に表情は大変見ものでした。
キャスティング発表時、原作ファンには評価が高かった佐々木蔵之介さんはもちろん、後藤九段役の伊藤英明さんもよかったですが、何といっても一番よかったのはスキンヘッドの山崎役の奥野英二さんで、あの爬虫類のような表情が劣勢に回ると段々に弱々しくなる様子は、厳しい勝負の世界、まさに弱肉強食の世界を表現していたと思います。
また、対戦中、ストレスで常に胃の痛い島田八段の表情は、ボディブローのようにダメージが蓄積されていくボクシングを思い浮かべました。まさに盤上の殴り合い。
獅子王戦トーナメントの島田八段vs後藤九段の対戦で大福とかのおやつを摂る(脳内の糖分補給のため)シーンがありますが、あそこは映画『どついたるねん』で、自分も減量中なのに、同じように減量に苦しむ対戦相手の所へ行ってローストチキンを食べてる(そのあと吐く)のを見せつけてた赤井英和さんのようで、ボクシング映画を観てるみたいでした。
それからキャスティングで上手いなと思ったのは川本三姉妹(あかり:倉科カナ、ひなた:清原果耶、もも:新津ちせ)の亡くなった母親で写真だけの登場ですが、母役が奥貫薫さんで、その妹役で三姉妹の叔母役が板谷由夏さんというのは上手いなと思いました。
何か姉妹感あると思いました。
将棋連盟の神宮司会長役の岩松了さんと最年長棋士の柳原役の斉木しげるさんのコンビは「踊る大捜査線」における初期のスリーアミーゴスのような役回りで緊張感を和らげる緩衝材的役割がありました。
人気急上昇中の高橋一生さんは先生役、ドラマ闇金ウシジマくんのシーズン3で洗脳クンを演じた中村倫也さんは三角役と、このお2人は声がとてもいいですね。
将棋連盟御用達のスナックというかクラブのママに筒井真理子さんとホステスに内田慈さんとかは、ワンシーンだけなのに豪華ですし、キャスティングに手抜かりないですなぁ。
唯一の心配は『るろうに剣心』二部作の後編で息切れした感のある大友監督の演出ですが、後編は宗谷の秘密が描かれるらしいので期待したいと思います。
いや、ホント、行間を埋める役者陣の演技は必見ですので、ぜひ観に行って欲しいと思います。
鑑賞データ
新宿バルト9 夕方割 1300円
2017年 50作品目 累計49400円 1作品単価988円
『3月のライオン 後編』の感想はこちらからどうぞ
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