ウェス監督頭おかしい(褒めてる) ☆5点
2018年の第68回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀監督賞)を受賞したウェス・アンダーソン監督による近未来の日本の架空都市を舞台にしたストップモーションアニメ。
声の出演でリーヴ・シュレイバー、ブライアン・クランストン、エドワート・ノートン、スカーレット・ヨハンソン
予告編
映画データ
本作は2018年5月25日(金)公開で、全国148館での公開です。
劇場での予告編はそんなに目にしなかった気がします。
監督はウェス・アンダーソン
作品は劇場で『ムーンライズ・キングダム』と『グランド・ブダペスト・ホテル』しか観たことありません。
両作ともビジュアルは「飛び出す絵本」のような可愛い世界観なんですけど、物語の方は冒頭から情報量が多く、登場人物も多いのでストーリーがさっぱり頭に入ってこず、しかも必ず眠くなるので自分にとっては鬼門の監督さんなんですよね。
ただ『グランド・ブダペスト・ホテル』の方はWOWOWで放送してたのを録画したんですけど、主人公が伝説的コンシェルジュといわれる所以が夜のテクニックにあるということを事前に理解した上で観たら面白かったんですよね。
なので事前にある程度情報を入れといた方がいい監督さんなのかな?と思いましたけど、本作に関しても殆ど予備知識無しでの鑑賞です。
キャラクターと声の出演は以下の通りです。
小林アタリ: コーユー・ランキン
スポッツ: リーヴ・シュレイバー
チーフ: ブライアン・クランストン
レックス: エドワード・ノートン
キング: ボブ・バラバン
ボス: ビル・マーレイ
デューク: ジェフ・ゴールドブラム
ナツメグ: スカーレット・ヨハンソン
ジュピター: F・マーリー・エイブラハム
オラクル: ティルダ・スウィントン
小林市長: 野村訓市
メイジャー・ドウモ: 高山明
渡辺教授: 伊藤晃
科学者助手ヨーコ・オノ: オノ・ヨーコ
トレイシー・ウォーカー: グレタ・ガーウィグ
ヒロシ編集員: 村上虹郎
通訳ネルソン: フランシス・マクドーマンド
ニュースキャスター: 野田洋次郎
筆頭執刀医: 渡辺謙
おばさん: 夏木マリ
ゴンド: ハーヴェイ・カイテル
スクラップ: フィッシャー・スティーヴンス
ナレーター: コートニー・B・ヴァンス
あらすじ
今から20年後の日本。メガ崎市ではドッグ病が蔓延し、人間への感染を恐れた小林市長が、すべての犬を“犬ヶ島”に追放すると宣言する。
数か月後、犬ヶ島では、怒りと悲しみと空腹を抱えた犬たちがさまよっていた。その中に、ひときわ大きな5匹のグループがいる。かつては快適な家の中で飼われていたレックス、22本のドッグフードのCMに出演したキング、高校野球で最強チームのマスコットだったボス、健康管理に気を使ってくれる飼い主の愛犬だったデュークだ。そんな元ペットの4匹に、強く生きろと喝を入れるのが、ノラ犬だったチーフだ。
ある時、一人の少年が小型飛行機で島に降り立つ。彼の名はアタリ、護衛犬だったスポッツを捜しに来た小林市長の養子だ。事故で両親を亡くしてひとりぼっちになり、遠縁の小林市長に引き取られた12歳のアタリにとって、スポッツだけが心を許せる親友だった。
スポッツは鍵のかかったオリから出られずに死んでしまったと思われたが、それは“犬”違いだった。何としてもスポッツを救い出すと決意するアタリに感動したレックスは、伝説の予言犬ジュピターとオラクルを訪ねて、教えを請おうと提案する。
一方、メガ崎市では、小林政権を批判し、ドッグ病の治療薬を研究していた渡辺教授が軟禁される。メガ崎高校新聞部のヒロシ編集員と留学生のウォーカーは、背後に潜む陰謀をかぎつけ調査を始める。
アタリと5匹は、予言犬の「旅を続けよ」という言葉に従うが、思わぬアクシデントから、アタリとチーフが仲間からはぐれてしまう。少しずつ心を通い合わせ始める一人と一匹に、さらなる冒険が待っていた─。(公式サイトhttp://www.foxmovies-jp.com/inugashima/より引用)
ネタバレ感想
苦手だと思っていたウェス・アンダーソン作品でしたが、いやー、面白かったです。
まずは「百聞は一見に如かず」ということで公式から冒頭映像が公開されてるんで、そちらをご覧ください。
初っ端から『七人の侍』のようなノリと、「フォックス・サーチライト・ピクチャーズ」の片仮名のフォント、「ハーヴィー・カイテル」(ピーウィー・ハーマンみたいじゃないか)の表記にヤラれてしまいました(笑)
劇中でも上の動画で流れる「侍のテーマ」が頻繁にかかります。
物語は至極単純明快。
アタリ少年の護衛犬スポッツ探しにお供する犬5匹ですが、人間に飼われていたレックス、キング、ボス、デュークの4匹は協力的なのに対し、野良犬だったチーフは消極的。
しかし途中でアタリ少年とチーフ、それ以外の4匹に離れてしまうと、アタリ少年とチーフは心を通わせ、チーフの出生の秘密も明らかになるという筋立てです。
黒毛の犬だと思われたチーフをアタリ少年がシャンプーしてあげると、実は白毛に黒ぶちだと分かるんですが、これは「どろんこハリー」という絵本のオマージュだそうです。
そしてアタリ少年の護衛犬だったスポッツも白毛に黒ぶちだったのでSPOTS(まだら、斑点)と名付けられたんですが、スポッツとチーフが子犬の頃に生き別れた兄弟だったということが分かるお話です。
三船敏郎さんをイメージした小林市長は改心し、犬追放令を解除するとスポッツは護衛犬を引退し、チーフがアタリ少年の新しい護衛犬となり、桃太郎の鬼ヶ島じゃないですが、めでたしめでたしで映画は終わります。
本作は日本を舞台にしてるので絵本という雰囲気よりかは、紙芝居な雰囲気でしたね。
それにしてもウェス・アンダーソン監督、どんだけ日本好きなんだ?っていうくらい、古い日本の映画を見てるようで、日本人の観客の方が元ネタに気付かないっていうくらいの力の入れようなんじゃないかと思います。
『ゴジラ』に対する『シン・ゴジラ』の庵野秀明監督や、『仁義なき戦い』『県警対組織暴力』に対する『孤狼の血』の白石和彌監督のようなアプローチといいますか、オマージュに溢れてたと思います。
お寿司のシーンなんかでもわざとネタの上にワサビを乗っけたりして、ハリウッドで描かれる間違った日本を逆に茶化すっていう、非常にニクいことをやってくれます(笑)
個人的によかったのは主役の犬たちの声がオッサンばかりだったのがよかったですね。
リーヴ・シュレイバー、ブライアン・クランストン、エドワード・ノートン、ボブ・バラバン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラムとか、『七人の侍』の志村喬、木村功、稲葉義男、加東大介、千秋実、宮口精二の感じあるじゃないですか。
高校野球チームのマスコットだったボスがドラゴンズのユニホーム着てるのも、高倉健さんの『ミスター・ベースボール』からきてるのかなぁ?と思ったり。
相撲のシーンとかも横綱が7勝4敗で大関が9勝2敗って横綱ヤバいよなと思ったりして、とにかく画面からの情報量は多いんですが、見きれなくても本筋には関わらないですし、画面を見てて飽きないんですよね。
アタリ少年の名前はゲーム会社のATARIや元となった囲碁用語のアタリを想起しますが、個人的には「あたり前田のクラッカー」かなぁ。
もう冒頭の太鼓から『マッドマックス 怒りのデス・ロード』みたいでテンション上がりますし、ジョージ・ミラー監督ばりにウェス・アンダーソン監督は知的にぶっ飛んでて、とにかくサイコーでした。
鑑賞データ
新宿バルト9 夕方割 1300円
2018年 93作品目 累計85800円 1作品単価923円
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