戦地に赴いた良心的兵役拒否者の信念 ☆5点
銃を持たない兵士として第二次世界大戦での沖縄戦で75人の命を救った衛生兵デズモンド・ドスの実話を映画化。
監督はメル・ギブソン、主役のデズモンド役にアンドリュー・ガーフィールド
予告編
映画データ
本作はあまり予告を目にしてなくて、今年の戦争映画なら『ダンケルク』か、くらいに思ってたんですけど、TOHOシネマズ・シネマイレージウィークだったので何気なく観に行ったら、これがめちゃめちゃよかったんです。
監督はメル・ギブソン
実はメル・ギブソンの監督作は見たこと無くてアカデミー賞5部門を獲った『ブレイブハート』とかも説教臭いのかな?と勝手に思ってて、自分の中では『マッド・マックス』と『リーサル・ウェポン』で止まってたんですけど、わりとしっかりとグロを描く監督のようで、この機会に『パッション』と『アポカリプト』を見てみようと思いました。
主演はアンドリュー・ガーフィールド
今年はマーティン・スコセッシ監督の『沈黙 -サイレンス-』で観てますが、テーマ的にも本作とは対になる感じでした。
共演にサム・ワーシントン
一昨年の『エベレスト 3D』も凄かったです。
共演にテリーサ・パーマー
『トリプル9 裏切りのコード』『聖杯たちの騎士』と作品は観てるんですけど、印象に残ってないかな。
『X-ミッション』にも出てました。
共演にルーク・ブレイシー
『X-ミッション』の主役の人だったんですけど、短髪にしてたので気づきませんでした。
テリーサ・パーマーとは主役とヒロインの関係でした。
あと共演にヴィンス・ヴォーンとヒューゴ・ウィーヴィング
あらすじ
ヴァージニア州の豊かな緑に囲まれた町で生まれ育ったデズモンド・ドスは、元気に野山を駆け回る少年だったが、家族に問題を抱えていた。
父親のトム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は、兵士として戦った第1次世界大戦で心に傷を負い、酒におぼれ、母バーサ(レイチェル・グリフィス)とのケンカがたえない日々を送っていた。
月日は流れ、成長したデズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、看護師のドロシー・シュッテ(テリーサ・パーマー)と恋におち、心躍る時を過ごしていた。
だが、第2次世界大戦が日に日に激化し、デズモンドの弟も周りの友人たちも次々と出征する。
そんな中、子供時代の苦い経験から、「汝、殺すことなかれ」という教えを大切にしてきたデズモンドは、「衛生兵であれば自分も国に尽くすことができる」と陸軍に志願する。
グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)の部隊に配属され、ジャクソン基地で上官のハウエル軍曹(ヴィンス・ヴォーン)から厳しい訓練を受けるデズモンド。
体力には自信があり、戦場に見立てた泥道を這いずり回り、全速力で障害物によじ登るのは何の苦もなかった。
だが、狙撃の訓練が始まった時、デズモンドは静かにしかし断固として銃に触れることを拒絶する。
軍服や軍務には何の問題もなく「人を殺せないだけです」と主張するデズモンドは、「戦争は人を殺すことだ」と呆れるグローヴァー大尉から、命令に従えないのなら、除隊しろと宣告される。
その日から、上官と兵士たちの嫌がらせが始まるが、デズモンドの決意は微塵も揺るがなかった。
しかし、出征前に約束したドロシーとの結婚式の日、デズモンドはライフルの訓練を終えないと休暇は許可できないと言われ、命令拒否として軍法会議にかけられることになる。
面会に訪れたドロシーに、銃に触れないのはプライドが邪魔しているからだと指摘されたデズモンドは、その“プライド”こそが大切だと気付く。
「信念を曲げたら生きていけない」というデズモンドの深い想いに心を打たれたドロシーは、「何があろうと、あなたを愛し続けるわ」と励ますのだった。
「皆は殺すが、僕は助けたい」─軍法会議で堂々と宣言するデズモンド。
ところが、意外な人物の尽力で、デズモンドの主張は認められる。1945年5月、沖縄。
グローヴァー大尉に率いられて、「ハクソー・リッジ」に到着した第77師団のデズモンドとスミティ(ルーク・ブレイシー)ら兵士たち。
先発部隊が6回登って6回撃退された末に壊滅した激戦地だ。
150mの絶壁を登ると、そこには百戦錬磨の軍曹さえ見たことのない異界が広がっていた。
前進した瞬間、四方八方からの攻撃で、秒速で倒れていく兵士たち。
他の衛生兵なら見捨てるほどの重傷の兵士たちの元へ駆け寄り、「俺が家に帰してやる」と声をかけ、応急処置を施し、肩に担いで降り注ぐ銃弾の中を走り抜けるデズモンド。
ひるむことなく何度でも、戦場に散らばった命を拾い続けるデズモンドに、感嘆の目を向け始める兵士たち。
しかし、武器を持たないデズモンドに、さらなる過酷な戦いが待ち受けていた─。(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
あらすじを読んでいただくと分かるのですが、この映画は入隊してから衛生兵として認められるまでの前半と、衛生兵として沖縄戦に従軍する後半とに、きっちり分かれているので大変見やすいですし、上映時間の139分もあっという間です。
前半は今年公開されてアンドリュー・ガーフィールドが主演を務めた『沈黙 -サイレンス-』のロドリゴ神父が抱えた葛藤と同じで、踏絵を踏むか踏まないか、銃を取るか取らないかで葛藤する主人公が描かれていました。
映画内では深くは触れられてないですが、主人公のデズモンドはキリスト教の中でも原理的な宗派セブンスデー・アドベンチスト教会(SDA)の信者で安息日も日曜日ではなく土曜日だったりします。
キリストの「汝、殺すことなかれ」を守るために銃にはさわれないんですが、踏絵を踏むことによって隠れキリシタンの命を救ったロドリゴ神父と、銃を取らないことによって人を殺さなかったデズモンドは、行動としては正反対ですが人の命を救ったという結果は同じでした。
「信念を貫き通す」「不屈の精神」というテーマで昨年公開されたアンジェリーナ・ジョリー監督の『不屈の男 アンブロークン』もテーマとしては似ていましたが、本作の方が映画としての出来は格段に上手かったですね。
軍法会議で除隊になりそうなところ、第一次世界大戦で激戦地で戦った父が当時の上官の現上層部に掛け合ってくれて衛生兵として認められると、お話は一気に沖縄戦に飛びます。
後半の沖縄戦は冒頭から一気に凄かったです。
10分~20分くらいやってたでしょうか?
『プライベート・ライアン』の戦闘シーンを完全に超えてましたね。
下半身が千切れた遺体の上半身を持って盾にして進むなんて、初めて観ましたよ。
グロさも塚本晋也監督の『野火』を超えてました。
日本軍の激しい抵抗の末、撤退を余儀なくされるグローヴァー大尉。
増援を待つため部隊は一旦基地に引き上げますが、その間も崖の上に残り、虫の息の仲間を一人黙々と助けるデズモンド。
助けた仲間をどうやって150mの崖下に降ろすかなんですが、ここは訓練のときに習ったもやい結びが役に立ちます。
ロープを使って木を滑車代わりにして降ろし、結果、日本人2人を含む75人を助けました。
映画のラストは、増援されたグローヴァー大尉の部隊が8回目のハクソー・リッジに向かいます。
その日は土曜日でデズモンドの礼拝が終わるのを待ってから出撃するのでした。
一応、沖縄戦の日本側の指揮官である牛島満中将と思われる人物の切腹シーンがありまして、沖縄慰霊の日、1945年6月23日が土曜日なのですが、実際のデズモンドは負傷のため5月21日に後方に送られたようなので、この辺は映画的フィクションだと思います。
前半の主人公のアメリカ軍内部の戦いと後半の実際の戦争がテンポよく描かれ、史実とテーマも絞られてて分かりやすいですし、強烈な反戦メッセージというのは無いですが、凄惨な描写は改めて反戦を意識させてくれますし、エンターテイメント作品としても立派に仕上がってると思います。
鑑賞データ
TOHOシネマズスカラ座 シネマイレージウィーク 1100円
2017年 107作品目 累計114900円 1作品単価1074円
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