舞台でやった方が ☆1.5点
名優・仲代達矢が『春との旅』『日本の悲劇』に続き小林政広監督とタッグを組んだ人間ドラマ。
半世紀以上のキャリアを誇るも現在は認知症の疑いがあり、家族から見放された往年のスターを描く。
共演に黒木華、原田美枝子、小林薫、阿部寛
予告編
映画データ
WOWOWでプロモーションをすごいやってるのと仲代達矢さんが84歳でツイッター始めるなど、大々的にPRしてる本作ですが、本命の『ジェーン・ドウの解剖』を観るまで時間があったので観て参りました。
監督は小林政広さん
長編映画15本以上撮られてるんですけど1本も観たことないです。
元々は1980年代後半からピンク映画の脚本を書かれてたみたいです。
主演は仲代達矢さん
経歴はもう凄すぎてウィキペディア見て下さいって感じなんですけど『切腹』とか好きです。
最近だと、昨年末にWOWOWのドラマ日本版「コールドケース」の第6話にゲスト出演されてました。
共演に阿部寛さん
阿部さんと仲代さんはつかこうへいさんの「熱海殺人事件」で繋がるんですよね。
仲代さんは映画版の主演ですが、仲代さんだけ木村伝兵衛が二階堂伝兵衛に変えられたりしてます。
阿部さんはつかさんの舞台で元モデルから役者へ脱却できるようになります。
阿部寛さんのHP、相変わらずいいですよね。
今年は『恋妻家宮本』で優柔不断な夫を
昨年は『海よりもまだ深く』で愛想尽かされて離婚したダメ人間を
演じられていて、本作と同じような役でした。
共演に黒木華さん
昨年は『リップヴァンウィンクルの花嫁』を観ました。
ドラマ初主演だった「重版出来!」はすごくいいドラマだったんですけど、視聴率奮いませんでした。
共演に原田美枝子さん
現在、娘さんの石橋静河さんが主演されている『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』が公開中です。
共演に小林薫さん
本作ではセリフひとことでした。
以上、本作はこの5人しか出てきません。
あらすじ
桑畑兆吉(仲代達矢)は舞台、映画にと、役者として半世紀以上のキャリアを積み、さらに俳優養成所を主宰する大スターだった。
芝居を愛し続けた、かつてのスターも、今や認知症の疑いがあり、長女・由紀子(原田美枝子)とその夫であり、兆吉の弟子だった行男(阿部寛)。
そして、由紀子と愛人関係にある謎の運転手(小林薫)に裏切られ、高級老人ホームへと送り込まれる。
遺書を書かされた挙句にだ。
しかし、ある日、兆吉はその施設を脱走する。
なにかに導かれるように、あてもなく海辺を歩き続ける。
シルクのパジャマ姿にコートを羽織り、スーツケースを引きずって-。
兆吉は彷徨い歩くなかで、妻とは別の女に産ませた娘、伸子(黒木華)と突然の再会を果たす。
兆吉には、私生児を産んだ伸子を許せず、家から追い出した過去があった。
伸子に「リア王」の最愛の娘・コーディリアの幻影を見た兆吉。
兆吉の身にも「リア王」の狂気が乗り移る。
かつての記憶が溢れ出したとき、兆吉の心に人生最後の輝きが宿る-。(公式サイトhttp://www.umibenolear.com/より引用)
ネタバレ感想
映画はトンネルを抜けた兆吉がぶつくさ言いながら歩いてくるところから始まります。
そして老人ホームから脱走したと連絡があったと思われる、由紀子夫妻が家から出てくるところから始まるんですけど、この映画、なぜか室内のシーンが無く、ほぼ浜辺か車の中です。
家の前には車が2台停まってて、1台は高級車のクラウンでその前には何をするでもなくヤクザチックな謎の運転手が立ってます。
行男はもう1台のアクアに乗って探しに行こうとしますが、由紀子が探しに行かなくていいと止めます。
行男はそれでも構わず車に乗ると由紀子も助手席に乗ってついてくるんですが、そのまま見つからなくていいとか、死んじゃっていいとかいいます。
ちなみに舞台は金沢です。
兆吉は浜辺を歩いてると前に伸子がいて追い抜きます。
追い抜くんですが、伸子の恰好を見て女性なのにその恰好は?とか、あなたはどちらさん?とかやります。
伸子も言い返すんですが、老人がパジャマ姿でスーツケース引きずって浜辺を歩いてて、どこに向かってるのか分からないと言ったら、ボケ老人が徘徊してるとすぐに気づいて警察なりなんなりに連絡すると思うんですけど、そういうことはしないで、まともにやりあってます。
そして、最初に会った時点で伸子は父親だと気づいていません。
父親を捜しにきたのにです。
伸子は兆吉が57歳のときに26歳の妾に産ませた子で、伸子は母が産んだ歳と同じ26歳になっています。
伸子が男と子供を作ってからは縁が切れてましたが、前日、兆吉の携帯電話に電話したところ連絡つかなくて、あてもなく金沢に捜しにきたのですが、なぜか40kmも離れた千里浜海岸で会えるという展開です。
伸子は途中で父だと気付いて、恨みつらみをぶつけますが、兆吉はボケているので当然のごとく何のことか分かりません。
「暖簾に腕押し」ってこういうことだよな、と思って見てましたが一向に進まない展開に「まさか、このまま浜辺だけで終わらないよな?」と危惧しましたが、ほぼそんな感じでした。
兆吉が腹減ったといって泣くので、しぶしぶ伸子が弁当買って戻ると兆吉はいませんでした。
その頃兆吉は、由紀子を一旦自宅に降ろし、再び兆吉を探すため浜辺を車で流してた行男に見つけられるのでした。
当然の如く、行男のことも分からない兆吉。
相変わらず、暖簾に腕押しみたいなことやってると、弁当を持って捜しにきた伸子に見つかります。
いや、短時間で浜辺で伸子の視界から消える兆吉の脚力すごいですわ。
伸子は兆吉が由紀子夫妻のところに居るものと思っていたので、高級老人ホームに入れられてたことを知ると、行男と由紀子を非難するんですが、そんなにいけないことかな?と思って観てました。
由紀子の「野垂れ死んだっていい」にも、カチンときましたけど、基本的に人を不快にさせるセリフが多かったです。
例えば、施設側が警察に捜索願出してもいいけど、元有名人だから騒ぎになるとそちらが困るでしょう、と言われたとか。
一応、伸子が千里浜海岸に来たのも理由はあって、子供を夫側に取られたので、入水自殺しようと彷徨ってたところ兆吉に会ったのでした。
この後は、行男が兆吉を施設まで連れ帰り、ウダウダしているとまた兆吉が消えてて、追いかけた伸子がまた見つけて、それをまた行男が見つけて、行男が兆吉と出会った頃を思い出し、妻のいいなりにならないと自宅に連れて帰ることを決心すると、安心したように伸子がいつの間にかいなくなり、入水自殺をします。
連れ帰る決心をした行男が由紀子に電話すると、また心変わり(ここなんてホントあっさりと変わって、その前の大熱演は何なの?と思います)がして、謎の男が運転する車で海の近くまできていた由紀子のところに、兆吉を連れて行きます。
兆吉は由紀子のことは憶えてて、由紀子が施設に連れ帰るのですが「一人で大丈夫?」と兆吉を職員に預けるでもなく施設の玄関のところに置いていっちゃう(意味不明でしょ)ので、また兆吉が浜辺に行って一人でリア王を演じていると、海の中に倒れて死にそうになるんですが、入水自殺したと思われた伸子に助けられて、映画は終わります。
登場人物も5人(といっても謎の運転手は無くてもいいくらい)で、ほぼ浜辺か車の中の会話で展開されるので、映画じゃなくて舞台の方がいいんじゃないかなぁ?と思いました。
その場面場面の演者さんの熱量は凄いんですけど、どうにも脚本がちぐはぐであれ?って思うことが多くてダメでした。
セリフも映画だとリアリティが感じられませんが、舞台なら勢いで見れると思うんですよね。
この映画、兆吉に仲代達矢さんと三船敏郎さんを当て書きしたような作品だと思うんですが、行男役に役所広司さん、伸子役に三船美佳さんをキャスティング出来たら凄かったのになぁと思いました。
レイバンのサングラスかけて由紀子にひとこと、「…悪党」とつぶやく小林薫さんは、いったいどういうヒットマンなんだろう?と思いを馳せることぐらいしか楽しめるところが無かったです。
エグゼクティブプロデューサーも「北の国から」の杉田成道さんなんですけど、なんともツラい映画に仕上がってしまったなぁという感想でした。
鑑賞データ
テアトル新宿 水曜サービスデー 1100円
2017年 91作品目 累計96500円 1作品単価1060円
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