予想だにしない展開が ☆5点
予告編
映画データ
配役は以下の通りです。
フリッツ・バウアー: ブルクハルト・クラウスナー
カール・アンガーマン: ロナルト・ツェアフェルト
ウルリヒ・クライトラー: ゼバスティアン・ブロンベルク
パウル・ゲプハルト: イョルク・シュッタオフ
ヴィクトリア: リリト・シュタンゲンベルク
シュット嬢: ローラ・トンケ
ゲオルク=アウグスト・ツィン: ゲッツ・シューベルト
シャルロッテ・アンガーマン: コルネリア・グレーシェル
シャルロッテの父: ロバート・アツォーン
ツヴィ・アハロニ: マティアス・ヴァイデンヘーファー
ハインツ・マーラー: ルーディガー・クリンク
フリードリヒ・モルラッハ: パウルス・マンカー
アドルフ・アイヒマン: ミヒャエル・シェンク
イサー・ハレル: ティロ・ヴェルナー
チェイム・コーン: ダニー・レヴィ
あらすじ
1950年代後半、ドイツ・フランクフルト。検事長フリッツ・バウアー(ブルクハルト・クラウスナー)は、ナチス戦犯の告発に執念を燃やしていた。そんな彼のもとに、逃亡中のナチス親衛隊中佐アドルフ・アイヒマンがアルゼンチンに潜伏しているという重大な情報を記した手紙が届く。バウアーはアイヒマンの罪をドイツの法廷で裁くため、国家反逆罪に問われかねない危険も顧みず、その極秘情報をモサド(イスラエル諜報特務庁)に提供する。しかしドイツ国内に巣食うナチス残党による妨害や圧力にさらされ、孤立無援の苦闘を強いられていく。
(Movie Walkerより引用)
ネタバレ感想
昨年『アイヒマン・ショー』を見たんですが、アイヒマンが終戦後15年間も潜伏生活を送っていて、アルゼンチンのブエノスアイレスにいたなんて知らなかったんですが、本作はそれをどうやって捕まえたかに焦点が当てられていて、スター・ウォーズでいえば『新たなる希望』と『ローグ・ワン』みたいな関係になります(分かり辛い例え)
それであらすじを読んで、どんな風に捕獲作戦が行われたかが克明に描写された、スパイ映画っぽい展開になるのかなぁ?なんて思ったんですが、どちらかというと政争ドラマっぽい地味な展開で、ちょっと分かり辛い部分もあって眠くなっちゃったんですね。
でもラスト15分ぐらいが驚愕の展開で驚きましたし、震えちゃいまして☆5点の評価にしました。
以下、激しくネタバレしますので未見の方はご注意を。
これ知らなかったんで驚いたんですが、まず、終戦後のドイツなんですが、政府高官の中にはナチの残党が結構潜んでいたんですね。
で、主人公のバウアー検事長はユダヤ人なんですが、ナチス戦犯の告発に執念を燃やしてるんですけど、ナチス戦犯が逮捕されちゃうと、芋づる式に自分の名前もゲロられて逮捕されちゃかなわんということで、ナチ残党の政府高官はことごとく妨害工作をする訳です。
アイヒマン潜伏先の情報はバウアー検事長の元に届いた1通の手紙により分かるんですけど、それはアルゼンチンに亡命したユダヤ人が、自分の娘がどうやらアイヒマンの息子と付き合ってるようだ、ってことで、ドイツでナチ戦犯の告発に執念を燃やしているバウアー検事長宛てにダイレクトで送ってきたんです。
で、バウアー検事長も、これは精度の高い情報だ、と思うんですけど、おいそれとは動けない訳です。
情報が他の政府高官に筒抜けになると妨害されちゃうので、秘密裏にイスラエルの諜報機関(モサド)に情報を流すんですが、これ国家反逆罪にも問われかねない罪で違法なんですね。
モサドもモサドでこの1個だけの情報じゃ動けない、もう1個確実な情報が欲しいと言うのです。
孤立無援なバウワー検事長は、部下の検事の中から信用できそうなやつを選んで相談するんですね。
この部下はカール・アンガーマンていう若い検事なんですが、裏のジャーナリストで情報屋みたいなのを知ってるから、そいつに探らせましょうとなるんです。
それで、どういう訳かこの映画、本筋とは関係なさそうな所で、ボーイズラブというか同性愛的なことを匂わせるんですね。
バウアー検事長は昔、同性愛的なわいせつ罪で逮捕された事がある(でも政敵の情報なので本当かどうか分からない)とか、アンガーマンが妻からの子作りの求めを拒否する描写とか、バウアーがアンガーマンを家に呼んだ時、アンガーマンの靴下がチェック柄なのをバウアーがじっと見つめる描写とか、その反対に今度は車に2人で乗った時バウアーの靴下が同じようなチェック柄とか…。
結論からいうとこの2人は同性愛者なんですね。
2人とも妻帯者なんですけどバウワーに至っては長いこと別居してるみたいで。
この時代、同性愛はタブーで何なら逮捕されちゃうこともあるみたいで、結婚してるってのは体面を保つためだったのでしょう。
アンガーマンがバウアーの靴下に気づいたとき聞くんですね、昔、わいせつ罪で逮捕されたって噂があるけど本当ですか?って。
バウワーは本当だよって答えて、アンガーマンもそうなのを見抜いて、だから気を付けなきゃいけないよと諭すんですね。
それでその時アンガーマンは、度々出入りしていたナイトクラブの歌手を好きになっていて、そのことをバウワーに相談するんですが、もう会っちゃいけないよと諭されるんです。
いやー、そこであれっ?っとなってビックリでした。
そのナイトクラブの歌手、今まで女性だと思ってましたから。
それまでアンガーマンがナイトクラブを訪れる描写は2回あるんですけど、キャバレーみたいな所かな?と思ってたんですよね。
でも本当はゲイバーみたいな所で、その歌手もニューハーフといいましょうかシーメールといいましょうか、そういう人だったんです。
それでバウアーにもう会っちゃいけないよと言われてたんですけど会っちゃって、それまでは一線を越えてなかったんですけど、一線も越えちゃいます。
アイヒマン捕獲作戦の方は、裏の情報屋がアルゼンチンでのアイヒマンの肉声テープを手に入れたことによってサクッと終わります。
2つの情報を元にモサドが動いて、アルゼンチンでアイヒマンを拉致ってイスラエルに連行します。
でこの後はアイヒマン・ショーの流れになる訳です。
ただバウアーはアイヒマンの裁判をドイツで行うことにこだわっていて(きちんと総括するために)、イスラエル政府に身柄引渡を申請するつもりだったんですけど、国内で裁くことは難しい(政敵による抵抗で)ってことで却下されちゃいます。
それと政敵は、バウアーをなんとか国家反逆罪に問えないかと思案するんですが、それにはイスラエル諜報局に情報をリークしていたっていう証拠や証言が必要なんですが、その証言者としてアンガーマンを狙っていたんです。
実はアンガーマンが好きになったナイトクラブの歌手は、政敵の手先でアンガーマンと一線を越えた写真を撮らせていたんですね。
ナイトクラブの歌手には逮捕拘留されている彼氏がいて、言う事を聞けば釈放してやるって言われてたんです。
撮られた写真をネタにして、バウアーを裏切るよう説得されるのですが…。
いや、もうこの辺の展開が切なくてですね『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のアラン・チューリングみたいだなと思ったり
あるいは昨年の『キャロル』みたいだなと思ったり
隠さなくてはならない愛というのに泣けて、泣けて。
結局、アンガーマンは自ら写真をバウワーに見せて、警察に自首します。
バウワーを守るんです。
もうこの展開に震えましたよ。
直接的なこの2人の恋愛描写は無いですが、単なる上司と部下、師匠と弟子という師弟愛だけにとどまらない愛にやられましたね。
ラスト15分でガラッと評価変わりました、この映画。
一応、公式サイト見ますと、このアンガーマンなる人物は実在しなくて、映画用のキャラクターみたいなんですけど、この設定の伏線は凄く生きてましたね。
予告編を見ても全然分からないですし、史実を追っただけなら物足りなかったでしょうから。
ドイツのアカデミー賞(ドイツ映画賞)みたいなので6冠というのも納得です。
それにしてもフリッツ・バウアー検事長を演じたブルクハルト・クラウスナーは、船越英二さんとか愛川欽也さんに似てたなぁ。
ちなみに『顔のないヒトラーたち』という映画にもバウワー検事長出てくるみたいです。
鑑賞データ
ヒューマントラストシネマ有楽町 TCGメンバーズ ハッピーチューズデー 1000円
2017年 7作品目 累計3600円 1作品単価514円
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