今年No. 1かも ☆5点
予告編
映画データ
あらすじ
東京の都心部に張り巡らされた高速道路の下。アツシ(篠原篤)が橋梁のコンクリートに耳をぴたりとつけ、ハンマーでノックしている。機械よりも正確な聴力を持つ彼の仕事は、ノック音の響きで破損場所を探し当てる橋梁点検。健康保険料も支払えないほどに貧しい生活を送る彼には、数年前に愛する妻を通り魔殺人事件で失ったという、つらく重い過去がある。
郊外に住む瞳子(成嶋瞳子)は自分に関心をもたない夫と、そりが合わない姑と3人で暮らしている。同じ弁当屋に勤めるパート仲間と共に皇族の追っかけをすることと、小説や漫画を描いたりすることだけが楽しみだ。ある日パート先にやってくる取引先の男とひょんなことから親しくなり、瞳子の平凡な毎日は刺激に満ちたものとなる。
企業を対象にした弁護士事務所に務める四ノ宮(池田良)は、エリートである自分が他者より優れていることに疑いをもたない完璧主義者。高級マンションで一緒に暮らす同性の恋人への態度も、常に威圧的だ。そんな彼には学生時代から秘かに想いを寄せている男友だちがいるが、ささいな出来事がきっかけで誤解を招いてしまう。
それぞれの“恋人たち”は、失ってはじめて「当たり前の日々」のかけがえのなさに気づいていく―― 。
(公式サイトhttp://koibitotachi.com/より引用)
ネタバレ感想
個人的には今年No.1かもと思えるくらい素晴らしい作品で、エンドロールでは溢れ出る涙が止まりませんでした。
実は橋口作品は評判の『ハッシュ』も『ぐるりのこと』も見たことなくて、前作の短編『ゼンタイ』しか観たことないのですが、そのときの上映のトークイベントで橋口監督の人となりを知ることができました。
まず橋口監督御自身がゲイであること。
『ハッシュ』『ぐるりのこと』で一定の成功を収めたが金銭的には余裕が無かったこと。
それというのも信頼してる同業(プロデューサーとかそんな感じだったと思います)の人にお金の管理を任せていたが、その人にことごとく使い込まれてた上に、最後は持ち逃げされてしまったこと。
またそれと同時に、今まで一緒に映画を作ってきた人々が蜘蛛の子を散らすように去っていったことなどです。
ゼンタイ公開時に監督の色々なインタビュー記事なども読みましたが、監督自身がマイノリティということもあって、印象としては「今の世の中ではとても生き辛い人だな」と思いました。
そうしたことを踏まえて本作を観ると、そうした監督の思いが明らかに具現化されているのが分かりました。
自分自身はもう少し社会と上手く折り合っていけるタイプの人間なので、監督や登場人物たちに100%の共感は出来ませんが、ある種の社会との関わり辛さとか、日常のもやもやした思いとか、そういう誰にでも当てはまることは少なからず描かれていたと思います。
主演の3人はほぼ無名の方たちでしたが、シネマインパクトの企画で製作された前作『ゼンタイ』のワークショップから篠原篤さん、成嶋瞳子さんのお二人が選ばれ、ゲイの弁護士役の池田良さんの3人とあわせてとても素晴らしい演技でした。
重い背景を持った3人をシリアスに演じるのはとても大変だったと思います。
特に篠原篤さんが感情を爆発させるシーンでは心が激しく揺さぶられました。
また対照的に脇役にはベテラン勢を配し、その脇役もそれぞれキャラが立っている魅力的な人物が多く、コミカルな場面もあって笑いあり涙ありで心の振れ幅を大きくしていたと思います。
光石研さんのヤバすぎるシャブ中とか、シャンプーハットの黒田さんの元左翼でロケット弾で片腕を失った上司とか、色々サイコーでした。
それと予告を観た時からいい歌だなと思っていたのですが、Akeboshiの「Usual life」がかかるラストはホントに素晴らしく、最後、指差し確認で暗転してエンドロールでもいいなと思ったのですが、最後にきてのタイトルバックに痺れエンドロール後もしばらく席を立てませんでした。
この映画たぶん好き嫌いが相当別れるとは思いますが、最近の邦画大作なんかより、よっぽど多くの人に見てもらいたいですし、ヒットして欲しいなと切に思える映画でした。
鑑賞データ
テアトル新宿 TCGメンバーズ ハッピーフライデー1100円
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