偉大なるマイペース ☆4.5点
ジャコメッティの友人で最後の肖像画のモデルとなったジェイムズ・ロードの回顧録「ジャコメッティの肖像」を元に映画化。
監督は俳優としての出演が多いスタンリー・トゥッチ、主演はジェフリー・ラッシュとアーミー・ハマー
予告編
映画データ
本作は2018年1月5日(金)公開で全国7館での公開です。
今後順次公開されて最終的には23館での公開となるようです。
シャンテで予告編は見ていました。
監督はスタンリー・トゥッチ
俳優としての出演が多くて『プラダを着た悪魔』とかに出てます。
監督しては5作目で1996年に監督した『シェフとギャルソン、リストランテの夜』で様々な映画賞を受賞してます。
主演にジェフリー・ラッシュ
近作は『鑑定士と顔のない依頼人』『キング・オブ・エジプト』を観てます。
主演にアーミー・ハマー
近作は『コードネーム U.N.C.L.E.』『フリー・ファイヤー』『ノクターナル・アニマルズ』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
アルベルト・ジャコメッティ: ジェフリー・ラッシュ
ジェイムズ・ロード: アーミー・ハマー
ディエゴ・ジャコメッティ: トニー・シャルーブ
アネット・ジャコメッティ: シルヴィー・テステュー
カロリーヌ: クレマンス・ポエジー
矢内原伊作: タカツナ・ムカイ
あらすじ
パリ、1964年。 アルベルト・ジャコメッティ(ジェフリー・ラッシュ)の個展が開かれている。友人で作家のジェイムズ・ロード(アーミー・ハマー)は肖像画のモデルを依頼される。アメリカに帰国寸前だったロードは、彼の「2日で描き上げる」との言葉を信じて、イポリット=マンドロン通り46番地にあるアトリエへ向かった。作家であるロードにとって、巨匠の仕事を間近で見られるチャンスと張り切るが、18日にも及ぶ地獄のセッションになるとは予想もしていなかった。
当時すでに名声を得ていたジャコメッティだが、自宅兼アトリエは狭く汚く古びており、そこに妻のアネット(シルヴィー・テステュー)と右腕的存在の弟ディエゴ(トニー・シャルーブ)の3人で暮らしている。アトリエに乱雑に置かれた未完成の作品の数々に圧倒されるロードの心中なぞ気にも留めず、ジャコメッティは真っ白なカンバスをイーゼルに立てかけた。ロードの顔の角度を微妙に調整し、パレットに絵の具を出し、たばこをくわえながら描き始める。「肖像画とは決して完成しないものだ」と不吉な言葉を発しながら……。
モデル1日目のセッションが終了した。カンバスは完成にはほど遠い。そこへジャコメッティのミューズ的存在の娼婦のカロリーヌ(クレマンス・ポエジー)がフラリと現われる。苦虫を噛み潰したような表情で作業していた時とは一転、陽気なカロリーヌにジャコメッティはメロメロだった。アトリエの外には悲しそうに見つめるアネットが。2人は3年間も、妻の目の前で堂々と不倫しているのだ。
2日目。ジャコメッティはなぜか集中力を欠き、「絶対に完成しない」と叫び始めた。肖像画は未完成で、ロードは帰国を延期する。
3日目。筆は遅々として進まない。モデル経験のあるアネットと話すうちに、ロードは肖像画が完成しないのではと不安を感じる。
4日目。ジャコメッティは「明日は本格的に始める」と上機嫌だ。しかし、突然現れたカロリーヌに邪魔されて、セッションは終了。アトリエの外では、ジャコメッティの親友、矢内原伊作とアネットがお楽しみ中だ。
5日目。ジャコメッティは行方不明になったカロリーヌのせいで癇癪を起こし、セッションは絶不調に。
数日後、カロリーヌが舞い戻り、セッションが再開される。さらなる帰国の延長でロードは恋人に愛想を尽かされるが、創作の合間にジャコメッティから聞くピカソとの裏話や、目に見える現実を作品で表現するために葛藤するジャコメッティとのセッションは、何物にも代えがたい貴重な体験だ。
14日目。ジャコメッティは完成間近の肖像画を太い筆で消す。絶望するロードに「希望が最高潮になると、私は投げ出すんだ」と笑う。15、16、17日目。描き、叫び、消すが繰り返される。果たして、ロードは恋人の待つNYへ帰れるのだろうか。肖像画は無事、完成するのか……。
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
当初は、その日のお昼前くらいから始めて2~3時間、遅くても夕方くらいには終わるということで、軽い気持ちで引き受けた絵のモデルがまさか、こんなことになるなんて!というお話です。
なんていうんですかね、志村けんさんのいい話し風の長めのコントあるじゃないですか、あんな感じです(笑)
だいたいしばらく描いてるうちに筆が止まって、ジャコメッティが「ファ~~ック」って叫んで、気を遣ったジェイムズが「今日は止めて、また明日にしましょうか?」というのが延々続く感じです。
城は見えるけど、いつまでも入れないカフカの「城」みたいな感じでシュールなのです。
ジェイムズがジャコメッティの弟のディエゴに「どうしたらいい?」と聞くと、「兄貴は時々、期限を守ることがあるから、期限を指定するといい」と言われますが、大御所のジャコメッティにそんなこと言えるはずもなく、ひたすら耐えるジェイムズは不憫なんですが笑えるのです。
ジャコメッティが行きつけのカフェでランチをとるシーンがあるんですが、飲み物も食べる物も決まってるので、店員も手慣れててグラスに赤ワイン注ぐと、ワンプレートになった卵料理とパンが出てきて、それをワインで流し込むように凄い勢いで食べると、店員がすかさずグラスに赤ワイン注いで、ジャコメッティは食後の一杯をゴクゴクと飲み干して、テーブルにお金置いて帰っていくっていうのが、2~3分でしょうか(笑)志村けんのスイカの早食いじゃないんだから。
その間、ワインが出てきたとき、ジェイムズに何頼む?って聞いあげて、ジェイムズは「コーラ」って答えてて、カワイイったらありゃしないです。
7,8日目になるとだいぶ絵が仕上がってきて、ジェイムズも安堵するんですが、ジャコメッティはなかなか満足しないで細かい線を入れていきます。
ジェイムズも見るたびに絵がよくなっていくんで、なるほどと思うんですが、ジャコメッティが「一旦消してその上に描いてくのもアリだぞ」と不吉なことを言い始めます。
ジェイムズはドキドキしながらも、「もうほぼ完成してるし、さすがにそれはないだろう」と思ってたのですが、14日目に悲劇が起こります。
ジャコメッティがさりげなく平筆を手にすると軽やかなタッチで筆が進むので、ジェイムズは筆が進んでるなぁと思うのですが、ハッとしてキャンバスを覗き込むと顔の部分が塗りつぶされているのでした。
絶望するジェイムズを横目に笑うジャコメッティはドSですよ(笑)
そのあとはもう、描いては消してが繰り返されます。
なんかもうその様子は、メンヘラがリストカット繰り返してるみたいで爆笑しちゃいました。
さすがに洒落にならなくなってきたジェイムズはディエゴに再び相談すると一計を案じます。
ジャコメッティが平筆に持ち替えたときが危ないので、そのタイミングでジェイムズは伸びをするふりして立ち上がると、キャンバスの方に向かい絵を見て、素晴らしい出来栄えと褒め称えます。
するとディエゴも現れて2人で褒め称えると、ディエゴが「兄貴、これで美術館に送ろう」と言うと、ジャコメッティも納得して絵が完成するのでした。
ジャコメッティとの18日間に及ぶ濃密な時間を過ごしたジェイムズはニューヨークに戻ると、それ以降は手紙のやり取りだけでジャコメッティと会うことはなく、その1年2か月後の1966年にジャコメッティが64歳の生涯を閉じるとその作品が最後の肖像画となります。
作家であるジェイムズは、この18日間の回顧録を執筆することを決意して映画は終わります。
本作は上映時間90分で舞台もほぼジャコメッティのアトリエなので、一種のシチュエーション・コメディと言ってもいいと思います。
実際、劇場では下手なコメディ映画より笑いが起きてました。
一見すると地味目な映画ですが、深刻になることもないですし、ジェフリー・ラッシュの演技に終始笑って観ていられるので、なかなかのおススメ映画でございます。
鑑賞データ
TOHOシネマズシャンテ 1か月フリーパスポート 0円
2018年 8作品目 累計3100円 1作品単価388円
コメント
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