全く知らない歴史があった ☆4点
フレディ前村の遺族によって書かれた『革命の侍〜チェ・ゲバラの下で戦った日系2世フレディ前村の生涯』を原作とする日本とキューバの合作映画で監督は阪本順治、主演はオダギリジョー、共演に永山絢斗
予告編
映画データ
本作は2017年10月6日(金)公開で全国で110館強での公開ですが2~3週間の公開で10月20日(金)ないしは10月27日(金)で上映終了してしまうところが多いようで、その後は10館ほどでの公開となるようです。
映画館で予告編は見たことなくて、原作も未読ですが阪本順治監督ということで観てきました。
そういえば昨年オダギリジョーさん主演の『オーバー・フェンス』が公開されたときに、舞台挨拶不在の記事を見ましたがこの作品の撮影だったんですね。
監督は阪本順治さん
近作は『団地』を観てます。
主演はオダギリジョーさん
近作は『リアル~完全なる首長竜の日~』『渇き。』『オーバー・フェンス』『湯を沸かすほどの熱い愛』を観てます。
共演に永山絢斗さん
近作は『みなさん、さようなら』『海辺の生と死』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
フレディ前村ウルタード: オダギリジョー
エルネスト・チェ・ゲバラ: ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ
中国新聞社 森記者: 永山絢斗
フィデル・カストロ: ロベルト・エスピノーサ・セバスコ
グスタボ: ルイス・マヌエル・アルバレス・チャルチャバル
ホセ: アルマンド・ミゲール
アレハンドロ: ヤスマニ・ラザロ
ハシント: ダニエル・ロメーロ・ピルダイン
ルイサ: ジゼル・ロミンチャル
ベラスコ: エンリケ・ブエノ・ロドリゲス
ホアキン: アレクシス・ディアス・デ・ビジェガス
タニア: ミリアム・アルメダ・ヴィレラ
広島県庁外事課 矢口: 田中幸太朗
あらすじ
1959年7月24日、外務省の中南米課のもとに1本の電話が入る。日本を訪問していた“エルネスト”・チェ・ゲバラ(ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ)らが急遽、広島へ向かったという。ほとんどの記者が興味を示さずにいたが、唯一地元の中国新聞社・森記者(永山絢斗)だけが取材に同行。ゲバラは、原爆ドームや原爆資料館などを訪れ、こう感想を述べるのだった。「君たちは、アメリカにこんなひどい目に遭わされて、どうして怒らないんだ」と。
それから数年後の1962年4月、ひとりの日系人青年がキューバの地に立っていた。愛する祖国ボリビアのため、医者になることを決意し、ハバナ大学の医学部を目指してやってきたフレディ前村(オダギリジョー)である。20歳の彼は、ハバナ大への入学を前に、最高指導者フィデル・カストロ(ロベルト・エスピノサ)によって創立されたヒロン浜勝利医学校で、医学の予備過程を学ぶこととなる。
1963年の元旦に憧れのゲバラが学校にやってきて、フレディは個人的に話しかけた。「あなたの絶対的自信はどこから?」。ゲバラは答えた。「自信とかではなく怒っているんだ、いつも。怒りは、憎しみとは違う。憎しみから始まる戦いは勝てない」。そんな矢先、母国ボリビアで軍事クーデターが起こり、フレディは『革命支援隊』に加わることを決意する。ある日、司令官室に呼ばれ、ゲバラから戦地での戦士ネームである、“エルネスト・メディコ”という名を授けられ、ボリビアでの戦いへと向かうのだった……。(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
ゲバラの映画は結構やってると思うんですが、どれも見たことなくて、この頃の南米の歴史にも疎く、ゲバラがアルゼンチンの裕福な家の出身で医者で日本にも来てたというのは本作で初めて知ったくらいの知識での鑑賞になります。
映画の冒頭は1959年の外務省。
キューバからの視察団(といってもゲバラと側近と駐日キューバ大使の3人)が大阪から予定に無かった広島に急遽向かうと知って慌てる様子が描かれます。
地元広島の新聞社の森記者もキューバからの視察団が平和記念公園や原爆ドームや県庁を表敬訪問することを知って取材に向かいますが、キューバ革命に成功した政権というだけで詳しいことは知らず、ゲバラの肩書も少佐だったため扱いとしては小さいものでした。
冒頭15分~20分くらいは広島ロケでオダギリジョーさんはなかなか出てきません。
そして1962年のキューバに飛ぶとオダギリジョーさん出てきますが、日系2世のボリビア人役なので日本語は一言も話しません。
全編スペイン語で凄いです。
ヒロン浜勝利医学校は奨学生でボリビアからの留学生を20人くらい受け入れてて、フレディはその中の1人です。
入学して5日目にキューバ危機が起こると寄宿舎が対空砲兵舎になったため、フレディは民兵に志願しますが留学生の中にはボリビアに帰る者もいました。
キューバ危機が去ると、また勉学に励みます。
ある日フレディは留学生仲間のルイサが妊娠したことを知ります。
相手も留学生仲間のベラスコでしたが、ベラスコがルイサに書いたラブレターの文面をフレディが考えてあげたことがあり、実はフレディもルイサが気になってましたが表には出しませんでした。
友人たちによるとベラスコはルイサと結婚する気はなく父親になる気もないとのことで、怒ったフレディは問い詰めに行きますがベラスコは奨学金を維持し医師になるのが最優先の利己的な男でした。
友人たちから「あいつに何言っても無駄だ」と言われると諦めます。
代わりに優秀なフレディはもうすぐ助手に採用されそうなことから、その給金でルイサを支援することにします。
学校生活の間にはゲバラがやってきたり、カストロがやってきたりします。
カストロとはバスケットボールしてました。
フレディはカストロとの対話の中で「今自分には(医学生ではなく)他にやるべきことがあるんじゃないか?」と聞きますが、「やるべきことはその時がきたら自然と分かる」と言われます。
ルイサは子供が生まれると、結婚してる人や子供を持つ人が入れる寄宿舎に移ります。
映画内ではこの寄宿舎が結構立派なお金持ちの家みたいで、なんとなくキューバは貧しいイメージがあったのですが、授業中は子供の面倒を見てくれる人とかもいて、社会主義いいじゃん!と思いました。
そんな感じで順調に医学生生活を送ってたんですが、ある日新聞で祖国ボリビアで軍事クーデターが起きたのを知ります。
親友のホセと相談し、学校を辞めて祖国ボリビアのために国に戻ることに決め、学部長に相談しますがある条件を出されます。
それはインターンで資格を取れというものでした。
農村で予防注射打ったりしてインターンで資格をとると、みんなには内緒で学校を辞め、ゲバラをリーダーとする革命支援隊に加わります。
キューバ最西端で8ヶ月の軍事訓練を受けるとボリビアに戻ります。
ボリビアでゲリラ戦を展開していた革命支援隊ですが、そのうちに政府軍に追われるとフレディの隊はゲバラの隊とはぐれてしまいます。
闇雲に探し回ってもゲバラの隊と合流できる可能性は少なく、負傷者もいたことから暫く森の中での野営を決めます。
食材などは革命に協力的な近所の農家から分けてもらいましたが、川向に安全な野営地があると聞いて翌日手引きしてもうらことにします。
しかし、政府軍はすぐそばまで迫っていて、この農家を脅して見渡しのいい川へおびき出す作戦でした。
移動したフレディたちの隊は待ち伏せていた政府軍の餌食となります。
フレディ以外ほとんどが撃たれ即死します。
フレディは捕捉され、死んだ者たちの名前を吐くように言われます。
ゲバラの教えでは戦地では仲間内であっても本名を名乗らず戦士名で通せとのことで「エルネスト」という戦士名もゲバラから与えられたものでした。
本名を告げるときは死を覚悟したときだと言われてました。
フレディは執拗な拷問にも口を割らず「俺の名前は、フレディ前村ウルタードだ」と叫びます。
すると政府軍の中の一人の兵士が言います。
「そいつ知ってる。幼いころ近所に住んでいて裕福なのを鼻にかけてた、いけ好かない野郎だ」と言います。
フレディはその兵士の顔を見ると思い出します。
ボリビアに居た頃、近所に住んでた貧しい家族の末っ子で、度々品物を分けてあげていた子でした。
政府軍のリーダーはその兵士にフレディを処刑するように命じると銃殺されます。
フレディ前村、25歳の生涯でした。
その2か月後、ゲバラも捕捉処刑され39歳の生涯を閉じたことがテロップで説明されます。
森の中を進むフレディが、エルネスト呼ばれ、振り返ったところでタイトルが出て映画は終わります。
そのあとは少しドキュメントで、没後50年、医学生時代の友人たちがゲバラやエルネストが祀られてる墓に献花してる様子が描かれ、それぞれがフレディへの思いを口にしてエンドロールとなります。
物語はゲバラが序盤に語る「君たちは、アメリカにこんなひどい目に遭わされて、どうして怒らないんだ」という言葉に集約されてて、これが全ての行動原理になっています。
南米の各国は植民地支配が終わり自主政権が誕生しますが、後に軍事クーデターが起こり軍事政権が誕生すると、その殆どがアメリカの傀儡政権となります。
ゲバラやフレディのような裕福な層はそれに気づき声を上げているんですが、フレディを殺した兵士のように貧しい者ほど傀儡、懐柔されてしまいます。
フレディの父親は鹿児島から渡ってきた人でフレディが18歳の時に亡くなってます。
先日、何かのテレビでなぜ南米に日系人が多いのかをやってたんですが、アメリカが途中で移民の受け入れを制限したことから、アメリカに渡ろうとしてた人が南米に渡ったと言ってたんですが、そういうことを踏まえるとフレディが革命に身を賭すのは宿命な気もしました。
日本パートは冒頭の15分~20分くらいで、それ以外は全編キューバロケでオダギリジョーさん以外、全員キューバの俳優さんなので、ほぼキューバ映画を見てる感じです。
実話ベースなので演出に奇をてらったところはなく、キューバの大河ドラマ的な感じもして、途中ちょっと眠くなったりもしたんですが、ラストは切なかったです。
医大生の話なので途中解剖シーンとかも少し出てきて、キューバ版ヒポクラテスたち感も少しありました。
この企画、日本の大手配給会社では通り辛い企画だと思うんですが、邦画ではチャレンジングな企画だと思いますし、配給したキノフィルムズもなかなかの英断だったと思います。
コミック原作の邦画がコケまくってる現在、作る側も見る側もこういう映画にも、もう少し目が向くといいなぁと思いました。
鑑賞データ
TOHOシネマズ新宿 シネマイレージデイ 1400円
2017年 171作品目 累計183100円 1作品単価1071円
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