ザ・ドラマティックス誕生の側面を描いてる面もあり ☆4.5点
1967年7月23日から27日にかけてミシガン州デトロイトで起こった暴動をアルジェ・モーテル事件を中心にドキュメントタッチで描いた作品で監督はキャスリン・ビグロー、主演にジョン・ボイエガとウィル・ポールター
予告編
映画データ
本作は2018年1月26日(金)公開で、全国83館での公開です。
東北地方は3月から公開される所が多いみたいで最終的には91館での公開となるようです。
予告編はシャンテに行ったときによく目にしてまして、面白そうだなと思ってました。
ポスターにはアカデミー賞最有力の文字が躍ってましたが、残念ながらノミネートには至りませんでした。
監督はキャスリン・ビグロー
『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』とすっかり実録派路線の監督になってしまいましたけど、この2作品は見てないんですよね。
見た作品は『ハートブルー』と『K-19』を劇場鑑賞してて、『ブルースチール』と『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』はレンタルで見ました。
『ハートブルー』はかなり好きなんですよね~、影響されてサーフィン始めようと思ったくらい(笑)
『ストレンジデイズ』も面白かったですね。
ピーター・ガブリエルの主題歌も印象的でした。
製作総指揮に回った前作の『カルテル・ランド』は観てますが、ドキュメンタリーなので感想書いて無かった(笑)
主演にジョン・ボイエガ
近作は『ザ・サークル』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を観てます。
主演にウィル・ポールター
近作は『なんちゃって家族』『レヴェナント:蘇えりし者』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
ディスミュークス: ジョン・ボイエガ
クラウス: ウィル・ポールター
ラリー(ザ・ドラマティックス): アルジー・スミス
フレッド: ジェイコブ・ラティモア
カール: ジェイソン・ミッチェル
ジュリー: ハンナ・マリー
カレン: ケイトリン・デヴァー
デメンズ: ジャック・レイナー
フリン: ベン・オトゥール
オーブリー: ネイサン・デイヴィス・ジュニア
リー: ペイトン・アレックス・スミス
マイケル: マルコム・デヴィッド・ケリー
モリス(ザ・ドラマティックス): ジョセフ・デヴィッド=ジョーンズ
コニャーズ下院議員: ラズ・アロンソ
ジミー(ザ・ドラマティックス): イフラム・サイクス
ダリル(ザ・ドラマティックス): レオン・トマス三世
オーブリー・ポラード・シニア(オーブリーの父親): ベンガ・アキナベ
フランク警官: クリス・チョーク
ラング弁護士: ジェレミー・ストロング
ロバーツ准尉: オースティン・エベール
マルコム(ザ・ドラマティックス): ミゲル・J・ピメンテル
アウアーバッハ弁護士: ジョン・クラシンスキー
グリーン: アンソニー・マッキー
あらすじ
1967年7月、暴動発生から3日目の夜、若い黒人客たちで賑わうアルジェ・モーテルに、銃声を聞いたとの通報を受けた大勢の警官と州兵が殺到した。そこで警官たちが、偶然モーテルに居合わせた若者へ暴力的な尋問を開始。やがて、それは異常な“死のゲーム”へと発展し、新たな惨劇を招き寄せていくのだった…。
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
本作の出演者は世界的に有名な俳優と言ったらスター・ウォーズ続三部作のジョン・ボイエガぐらいなんですが、そのボイエガもなかなか出てこないんですよね。
映画はデトロイト暴動の発端から描いていて、黒人の退役軍人を祝うために無許可で深夜営業していた酒場にデトロイト市警が踏み込むシーンから始まります。
市警側には黒人の刑事もいて、当初は酒場の裏口から連行するはずだったのですが、裏口が壊せなくて大通りに面した表口から大勢の被疑者たちを護送車に乗せることになります。
すると通りを挟んで黒人が集まりだし、警察に野次を飛ばします。
一部の者が投石しだすと暴徒化し収拾が付かなくなります。
市警は5台の護送車に被疑者たちを乗せて慌てて去りますが、暴徒化した住民が商店のウィンドウを破壊し略奪行為を始めるまでが映画の導入部になります。
そのあとは実際のニュース映像を交えながら、1日目、2日目、3日目と暴徒化するデトロイトの様子と鎮圧する軍の様子が描かれ、明確な主人公がいない感じで物語が進み、雰囲気としては『ダンケルク』に近い感じです。
『ダンケルク』も明確な主人公がいない感じでした。
暴動を収めるのは軍、略奪行為を取り締まるのは市警という感じで描かれ、略奪行為を目撃した警官のクラウスが犯人に発砲し死亡させたことが、アルジェ・モーテル事件を描く伏線となります。
アルジェ・モーテル事件への導入はデビュー前のザ・ドラマティックスの視点で描かれます。
その日は劇場でライブパフォーマンスすることになっていた彼らですが、出番になったところで劇場周辺が暴徒化し避難指示が出てパフォーマンスが中止となります。
彼らはバスに乗って帰路につきますが、その頃には暴徒化した住民は黒人の店であろうが見境なく略奪をしていて、バスも投石の被害を受けると、彼らは散り散りになって逃げます。その中でボーカルのラリーとマネージャー的役割のフレッドがアルジェ・モーテルに辿り着き、事件に巻き込まれることになります。主演であるディスミュークス役のジョン・ボイエガの出演はこの辺りからになります。
ディスミュークスは工場での労働の他に民間の警備会社で警備員をしていて、その日はアルジェ・モーテル付近の食料品店の警備にあたっていたことから、この事件の一部始終の目撃者となります。
ラリーとフレッドは1部屋だけ空いていた部屋を取れると、モーテルのプールに繰り出します。
モーテルは暴徒化した区域から離れてるので喧騒とはかけ離れていて、2人はプールにいた白人女性のジュリーとカレンをナンパし、一夜のアバンチュールを楽しもうとします。
ラリーたちはジュリーたちに「部屋に来ない?」と誘われていくと、そこにはジュリーたちがモーテルで知り合ったカールたちがいて、アバンチュールの夢はあえなく潰えます。
会話の流れから、ジュリーは「どうしてデトロイトで暴動が起きてるのか理解出来ない」と言うと、カールはデトロイト市警が黒人にしてる横暴な取り調べを実践してみせますが、このとき皆を驚かそうとしてカールがおもちゃの銃を撃ちます。
驚かされたことに呆れたラリーやジュリーたちは自分の部屋に戻りますが、その頃、モーテルがある丘の麓に警備のために軍が集まり始めます。
調子に乗ったカールは憂さ晴らしもあって、麓の軍に向けておもちゃの銃を撃つと、暴動による狙撃者と勘違いした軍によって反撃されます。
麓の軍のそばにいたディスミュークスは市警と軍と一緒にアルジェ・モーテルに向かいますが、この中にクラウスもいます。
クラウスたちがモーテルに着くと、怖くなったカールは逃げようとしますが、クラウスは再び発砲し殺してしまいます。
前回の発砲では暴動の影響もあって処分が見送られてましたが、今度は確実に処分されると踏んだクラウスは倒れたカールのそばにナイフを置いて偽装工作するのでした。
その後は事態が飲み込めないラリーやジュリーたちが玄関付近に集められて尋問を受けることになります。
クラウスは現場から銃が見つからなかったため、銃のありかと撃った犯人を吐かせようと、暴力的で執拗な尋問が繰り返されるのが、この映画のメインとなります。
クラウスを演じたウィル・ポールターは『なんちゃって家族』でその存在を知ったのですが、特徴的な顔つきもあって『レヴェナント:蘇えりし者』に出てきたときもすぐに気づいたんですが、本作での彼の演技はめちゃめちゃ上手かったですね。
日本の俳優では柄本時生さんのポジションかな?とか思って観てたんですが、自分を正当化し間違った思い込みを信じて疑わずに突き進む若い警官の様子は、TwitterなどのSNSで攻撃的になる人たちを思い浮かべましたね。
なんて言うんでしょか、こう全く話がかみ合わない人物感というのがよく出ていました。
尋問は「死のゲーム」と呼ばれる、被疑者を一人だけ別室に連れて行き、発砲して殺したふりをして、他の被疑者に口を割らせるという方法がとられていたんですが、本当に射殺していると思い込んだクラウスの同僚のデメンズが、オーブリーという被疑者を射殺してしまいます。
結局、この尋問は他で大きな暴動が起こったために中止されるのですが、クラウスは他の被疑者を解放する際に脅して口封じをしますが、拒否したフレッドは殺されてしまい、この事件では3人が死亡するのでした。
暴動が鎮圧されると事件が明るみに出るのですが、事情を聞かれるために市警に呼ばれたディスミュークスが、一転して容疑者として扱われるシーンは震えましたね。
というのも、ディスミュークスは冷静沈着で、軍や警察に対しても、すぐに名前と身分を明かして善良な市民として上手く立ち回っていました。
その彼が容疑者として留置場に入れられるので驚くんですが、程なくして容疑は晴れ、クラウスたちが裁判にかけられることになります。
結局、クラウスたちは無罪になるんですが、これには驚きませんでしたね。
何せ、上の二つの記事を読んでも分かるように、この事件から50年経ってもアメリカ社会は変わってないんですから。
毎日新聞の記事にあるように、50年経ってもデトロイト暴動の芽は全く摘まれてなく、いつ同じようなことが起こってもおかしくないのですが、上のニューズウィークの記事にあるように差別や偏見ということも要因ですが、アメリカが銃社会であることが大きな要因だと思います。
問題は人種の偏見ということよりも、アメリカ社会に銃が溢れていることを前提に、警官は身の危険を感じたら相手を射殺して良いという法制や慣行が定着してしまっていることに根本的な問題がある
2017年もラスベガスとテキサスと大きな銃乱射事件が起きました。
立て続けに大きな銃乱射事件が起こっても全く銃規制の進まないアメリカの闇は深いです。
本作は、物語の中心に描かれてるアルジェ・モーテル事件の被害者の中にザ・ドラマティックスの元メンバーのラリー・リードがいるため、ザ・ドラマティックス誕生の側面を描いてる面もあります。
この辺はロサンゼルス暴動と絡めて描かれていたN.W.Aの伝記的映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』に繋がってくるかと思います。
因みに本作のような感じで、直接的にロサンゼルス暴動を描いた映画はまだないようですね。
ロサンゼルス暴動に向かう警察の腐敗ぶりを描いたジェイムズ・エルロイ原作の『ダーク・スティール』という映画がビデオスルーされてるみたいですが、ビグロー監督の『ブルースチール』とタイトルが似てるのは偶然かしら?
そのうち、ビグロー監督でロサンゼルス暴動のやつも撮りそうな気がしますね。
鑑賞データ
TOHOシネマズシャンテ 1か月フリーパスポート 0円
2018年 20作品目 累計9700円 1作品単価485円
コメント