ベッキーさんのその後みたいな感じも ☆4.5点
『恋愛適齢期』『ホリデイ』『恋するベーカリー』『マイ・インターン』でナンシー・マイヤーズ監督とコンビを組んで製作を務めたスザンヌ・ファーウェルが、『さよなら、僕らの夏』のプロデューサーだったスーザン・ジョンソンを監督に据え、2003年に出版されたカレン・リスナーのヤングアダルト小説「Carrie Pilby」を映画化。
IQ185で14歳でハーバードに入学したものの、卒業後コミュ障で定職に就かず引きこもっているヒロインがセラピストの課題をクリアしながら成長する姿を描いた作品。
主演はベル・パウリー、共演にガブリエル・バーン、ネイサン・レイン
予告編
映画データ
本作は2018年10月20日(土)公開で、全国19館での公開です。
順次公開されて最終的には62館での公開のようです。
日本での配給は松竹です。
ヒューマントラストシネマ渋谷ではマスターセレクション作品になってたこともあって、結構前から予告を目にしていて、2017年の『スウィート17モンスター』みたいな感じで面白そうと思ってました。
監督はスーザン・ジョンソン
1970年生まれのアリゾナ州フェニックス出身の女性プロデューサー兼監督で、本作が長編映画初監督だそうです。
2004年に製作を手掛けた『さよなら、僕らの夏』がインディペンデント・スピリット賞のジョン・カサヴェテス賞を受賞してます。
主演はベル・パウリー
1992年生まれのロンドン出身の女優さんで初めましてです。
2015年に主演した『ミニー・ゲッツの秘密』がベルリン国際映画祭やサンダンス映画祭で受賞し、自身もゴッサム・インディペンデント映画賞で、『ルーム』のブリー・ラーソンや『キャロル』のケイト・ブランシェットを抑え女優賞を受賞してます。
共演にガブリエル・バーン
久しぶりにお顔を拝見しました。
一番最初に知ったのはエレン・バーキン主演の『シエスタ』なんですが、日本では未だにDVD化されてないんですね。
『ユージュアル・サスペクツ』は有名ですが、なんと言っても『ミラーズ・クロッシング』がめちゃめちゃカッコよかったです。
他に共演と配役は以下の通りです。
キャリー・ピルビー: ベル・パウリー
キャリーの父親: ガブリエル・バーン
ペトロフ医師: ネイサン・レイン
タラ: バネッサ・ベイヤー
ハリソン教授: コリン・オドナヒュー
マット: ジェイソン・リッター
サイ: ウィリアム・モーズリー
あらすじ
ニューヨークのマンハッタンで暮らすキャリー(ベル・パウリー)はIQ185、ハーバード大学を飛び級で卒業した天才だが、友達も仕事も持たず、読書ばかりしている【コミュ力】ゼロの屈折女子。話し相手はセラピストのペトロフ(ネイサン・レイン)だけ。ある日彼はキャリーにリストを渡し、そこに書かれた6つの課題をクリアするように告げる。「何のために?」「それで問題はすべて解決するの?」半信半疑ながらも、まずは金魚を2匹飼い始め、昔好きだったチェリーソーダを飲み、新聞の出会い広告でデート相手を探し…と1つずつ項目を実行していくキャリー。そして、人と関わり打ち解けたり傷ついたりする中で、徐々に自分の変化に気づいていく。キャリーは果たしてリストを全てクリアして、幸せを手にすることができるのか――?
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
本作の原題は『Carrie Pilby』(キャリー・ピルビー)で主人公の名前です。
映画は冒頭、セラピストのペトロフとのカウンセリングでの短い会話で、キャリーの設定が分かるようになっていて上手い入り方だと思いました。
冒頭で分かることは
キャリーはニューヨーク、父親はロンドンと離れて暮らしてること。
感謝祭(11月の第4木曜日)を一緒に過ごすはずがドタキャンされたこと。
父親とペトロフは友人関係だということ。
キャリーは母親が亡くなる12歳までロンドンに住んでいて、14歳で飛び級してハーバード大学に入学したギフテッドであること。
しかし現在は友達もいなく、毎日読書して引きこもっていること。
なのでセラピストであるペトロフは、それを改善するために年末までの5週間弱で成すべきことのリストを作り、実践させようとしてることが分かります。
そしてこれは話が段々進んでいくと明らかになるのですが、父親はロンドンで同棲している子連れの女性と再婚しようとしていて、そのことをキャリーに言えてないのが感謝祭でのドタキャンに繋がっていて、キャリーのことは当然心配してますが、再婚すればロンドンでの暮らしにも更にお金がかかってくるので、ニューヨークでの家賃とか生活費をいつまでも父親に頼りきりのキャリーに少しは自立して欲しいとも思っていて、医師であり友人であるペトロフに相談し、カウンセリングをお願いしている状況であるということが分かってきます。
そしてリストは、むかし楽しんでいて今は出来ていないことで作られ、以下のようになります。
まず「ペットを飼う」は2匹の金魚を飼い始めます。
「子供の頃好きだったことをする」はチェリーソーダを飲みます。
ここまでは簡単です。
次に「デートに出かける」は新聞の出会い広告で相手を探しますが、出会いをまだ馬鹿にしているキャリーは、婚約者がいるにも関わらず自分の気持を確かめたいと書いてるマットいう男を、婚約者に告げ口して懲らしめるつもりで会いに行きますが、思いのほか素敵な男性で心がときめきデートするようになります。
「友達を作る」は、この頃、父親に勧められ法律事務所の文書校正の仕事に嫌々就くも、勤務時間がフレキシブルで同僚ともあまり関わらなくて済む勤務体系が性に合って働けるようになり、同僚も変わったタイプが多く、その中のタラという女性と仲良くなり、タラの元カレのライブを観に行こうと誘われてライブを観に行ったりも出来るようになります。
また、住んでるマンションの路上でディジュリドゥというアボリジニの民族楽器を演奏するサイという男と知り合います。
サイはキャリーの隣の部屋に越して来たばかりで、サイ曰く嘘ばかり言う男とルームシェアしてるとのことでした。
段々と物事が上手く転がり始めたキャリーは、マットともベッドインする流れとなりますが、枕元にあったマットと婚約者のツーショット写真を目にすると、辛い記憶が蘇ってきて我に返ります。
キャリーは同級生が年上ばかりで不安だったハーバード時代に、優しく接してくれた若いハリソン教授に惹かれて恋仲になりましたが、ハリソン教授には本命の彼女がいて遊ばれただけなのを知って深く傷ついた過去があり、マットの中にハリソン教授を見ると拒絶して帰りますが、マットからは「大人になれよ」と捨て台詞を吐かれます。
また「1番お気に入りの本を読む」は、母親が好きだったJ・D・サリンジャーの「フラニーとゾーイ」でしたが、母親の形見でもあるその本はハリソン教授に貸したまま戻ってきていませんでした。
順調にクリアしていたリストも1つが躓くと全てが崩壊し、飼っていた金魚も猫にやられて死んでしまいます。
また、ある日にはペトロフの不倫を目撃してしまい、ダメ押しにクリスマスイブには父親からクリスマスは会えないと電話がかかってきて、実は再婚したい女性がいると告げられると、いっぱいいっぱいになったキャリーは部屋の窓を開けて絶叫してしまいます。
するとその声を聞いて心配したサイが、クリスマスイブの夜の街へ散歩に連れ出してくれます。
キャリーは以前のやり取りでサイとは合わないと思っていましたが、キャリーの個性を認めてくれるサイの言葉に不思議と安らぎを覚え、ハリソン教授から本を取り戻す勇気までもらうと、翌日、キャリーはハリソン教授に電話します。
キャリーが意を決して電話をかけると結婚したハリソン教授の奥さんが出たため電話を代わってもらいますが、久しぶりに話すハリソン教授は悪びれる様子もなく「見つけたら送るよ」と軽く言われ電話を切られてしまいます。
クリスマスにひとりぼっちで、せっかくやる気になったリストも達成することが叶わないと悟ったキャリーは、怒りに任せてペトロフの元を訪れると、こんなリストに意味はないとまくしたて、ハリソン教授に貸した本のことも話してしまいます。
するとそこにはキャリーのことを心配してロンドンから駆け付けた父親もいて話を聞いていました。
父親を見てパニックになったキャリーは部屋を飛び出しますが、探しに来た父親は公園のベンチで座っているキャリーを見つけます。
父親がキャリーを見つけられたのは小さい時から「迷ったらアンデルセン像の下へ」と言ってたからで、キャリーに再婚のことを隠していたことを謝ると、一緒に本を取り返しに行くぞとハリソン教授の元へ向かいます。
キャリーと父親がハリソン教授の家に着くと、友人を招いてクリスマスパーティーを開いていたハリソン教授は、電話のときと同じように「見つけたら送っておく」と言って2人を適当にあしらおうとします。
しかしそんなことに構わず父親は家の中に入り本棚を探すとキャリーが貸した「フラニーとゾーイ」をあっさり見つけます。
父親はなおも邪険に扱おうとするハリソン教授をパンチで倒すと、無事に本を取り返し、キャリーは「1番お気に入りの本を読む」も達成することができます。
そしてキャリーは大晦日を迎えます。
あと達成すべきリストは「誰かと大晦日を過ごす」だけでした。
そこでキャリーは自分の気持ちに正直になると、クリスマスイブに寄り添ってくれたサイと大晦日の晩を過ごしたいと考え、隣の部屋のチャイムを鳴らします。
すると出てきたのはサイのルームメイトで、サイはニューヨークフィルのクラリネット奏者で既にこの部屋を出て行ったと言われます。
キャリーは最後の最後でリストが叶わなかったことに意気消沈して自分の部屋に戻ろうとすると、演奏用のフォーマルウェアを着たサイが慌てて出てきます。
キャリーが驚いてると、サイは「あいつは嘘ばっかり付くから」と言うと、2人は笑い合いキャリーの部屋で大晦日の夜を過ごすと、ベランダで寄り添って新年を祝う花火を眺めて映画は終わります。
実は鑑賞中はキャリーがそんなにIQ高そうに見えなくて「ギフテッドゆえの悩み」みたいには思わなかったんですけど、下の記事を読むと「同年代の友人が出来ない」とか「変人などのあだ名が付いてしまう」というのは、そのままキャリーに当てはまる感じですね。
また、そんなにコミュ障にも思えなかったんですけど、ハーバード大学を卒業して引きこもりになってしまったのは、ハリソン教授との酷い恋愛のせいで、ちょっとベッキーさんを思い浮かべて観てました。
また父親との関係がギクシャクしていたのは、ペトロフが指摘したように母親の死を受け入れられなかったからと感じられ、頭脳は大人顔負けでも心は年相応で、そのギャップが理解されないまま時が過ぎ、父親は再婚という新しい道を進んでいたからだと思いますが、アンデルセン像のくだりで父娘の絆を取り戻し、その足で父親がゲス野郎をぶちのめしてくれるので、観てる方もスッキリするんですよね。
そしてハッピーエンドとなるラストも、サイとの会話のちょっとした伏線が効いてますし、全体的に小粒ではありますが、女性スタッフが中心となった、なかなかのハートウォーミングなラブコメディに仕上がっていたと思います。
鑑賞データ
ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2018年 176作品目 累計158600円 1作品単価901円
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