悪魔憑きといわれた病気の正体 ☆3.5点
ニューヨーク・ポストの記者スザンナ・キャハランの自身の闘病経験のノンフィクションの映画化でプロデューサーはシャーリーズ・セロン
監督はセロンに抜擢されたジェラルド・バレット、主演はクロエ・グレース・モレッツ
予告編
映画データ
本作は2017年12月16日(土)公開で全国9館での公開です。
来年3月頃まで順次公開され最終的には28館での上映となるようです。
東京では角川シネマ有楽町だけだったので予告編は目にしませんでした。
『8年越しの花嫁 奇跡の実話』と公開日が同じで内容も同じということで観てきました。
監督はジェラルド・バレット
1987年生まれのアイルランド出身の監督で『Pilgrim Hill 』と『Glassland』という2本の長編を監督してます。
映画祭で注目され、サンダンス映画祭で主演男優が特別賞を受賞した『Glassland』を観たシャーリーズ・セロンの目に留まり、本作の起用になったようです。
主演はクロエ・グレース・モレッツ
近作は『ダーク・プレイス』『フィフス・ウェイブ』を観てます。
共演にキャリー=アン・モス
近作は『バイバイマン』を観てます。
共演にジェニー・スレイト
先月観たばかりの『gifted/ギフテッド』に先生役で出てました。
他に共演と配役は以下の通りです。
スザンナ・キャハラン: クロエ・グレース・モレッツ
スティーヴン・グリウォルスキ: トーマス・マン
トム・キャハラン: リチャード・アーミティッジ
ローナ・ナック: キャリー=アン・モス
マーゴ: ジェニー・スレイト
リチャード: タイラー・ペリー
アレン: アレックス・ザハラ
ジゼル: ジェン・マクリーン=アンガス
上院議員: ケン・トレンブレット
ナジャー医師: ナヴィド・ネガーバン
ライアン医師: ロバート・モロニー
カーン医師: アガム・ダーシ
シスキン医師: ジャネット・キダー
サムソン医師: ヴィンセント・ゲイル
あらすじ
21歳のスザンナ・キャハラン(クロエ・グレース・モレッツ)の毎日は、希望と喜びに満ちていた。
憧れのニューヨーク・ポスト紙で、まだ駆け出しだが記者として働き、いつか第1面を飾る記事を書くと燃えている。
プライベートでも、プロのミュージシャンを目指すスティーヴン(トーマス・マン)と付き合い始め、会うたびに互いの想いが深まっていた。そんな中、父(リチャード・アーミティッジ)と母(キャリー=アン・モス)が、バースデイ・パーティを開いてくれる。
二人は離婚していたが、娘のスザンナを通して良好な関係を築いていた。
それぞれのパートナーとスティーヴンに囲まれて、ケーキのキャンドルを吹き消そうとした時、スザンナは初めて体調の異変を感じる。
皆の声が遠のき、めまいを覚えたのだ。デスクのリチャード(タイラー・ペリー)から、スキャンダルを抱えた上院議員のインタビューという大きな記事を任されるスザンナ。
彼女の才能を認める先輩記者のマーゴ(ジェニー・スレイト)からの後押しもあっての大抜擢だ。ところが、スザンナの体調は、日に日に悪化していく。
視界が揺れ、会話も聞き取れず、夜も眠れなくなり、締め切りを破るだけでなく綴りや文法までミスしてしまう。
やがて手足が麻痺するようになり、病院で診察を受けるが、検査結果はすべて異常なしだった。遂にスザンナは、取り返しのつかない失敗を犯す。
上院議員のインタビューの席で、スキャンダルに引っ掛けた下品なジョークで彼を侮辱したのだ。
リチャードから激しく叱責されるが、なぜそんな言葉が口から出たのか、スザンナ自身にも分からなかった。今度は突然、激しい痙攣の発作を起こすようになるスザンナ。
両親に付き添われて精密検査を受けるが、やはり異常はない。
そうこうするうちに、劇的な幸福感に包まれてはしゃいだかと思うと、その直後には深い絶望感と被害妄想が沸き起こって周囲の人々を罵倒するようになり、会社の上司はもちろん、両親さえも手に負えなくなってしまう。何度検査を受けても、医師たちは「異常なし」と繰り返し、精神の病だと決めつける。
必ず原因を究明すると決意した両親と、「絶対に治るから、一緒に頑張ろう」と誓ったスティーヴンが支え続けるが、次第にスザンナは手足が動かなくなり、全身が硬直し、口さえきけなくなってしまう。あと3日間の観察で変化がなければ、精神科へ転院させると宣告する医師たち。
期限が迫るなか、一人の医師がスティーヴンの“ある言葉”に突き動かされるのだが──。(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
本作の上映時間は89分なので『8年越しの花嫁 奇跡の実話』と違って、抗NMDA受容体脳炎と確定診断がつくまでが描かれてます。
また8年越しの花嫁と違うのは昏睡状態にまでは陥ってなくて意識はあります。
ただ人格が無い感じでしょうか。
スザンナの最初の異変は自身の誕生日を祝ってもらってるときで、めまいがしてうまくローソクが消せません。
自分じゃ消せなくて家族が息を吹いてくれます。
スザンナの両親は離婚してて、お互いが再婚してるんで父とその再婚相手、母とその再婚相手、彼氏と計6人でお祝いしてるのがアメリカだなと思います。
父トムは銀行員で転職しようとしてるようでしたが、ミュージシャンを目指してるっていうスティーヴンにはあまりいい顔しません。
そのうち、スザンナは幻聴や幻覚がするようになります。
キッチンの蛇口から水がポタポタ落ちてくる音が聞こえるんですが、父に見てもらっても水は漏れてません。
会社の先輩記者マーゴがトコジラミについての記事を書いてると、自身の手に発疹が出来たと言ってトコジラミによるものかな?と見せますが、先輩記者には発疹は見えません。
そのうちに乾いた咳をしたり、体が怠かったりと風邪のような症状も現れます。
3,4日しても体調が回復しないスザンナは病院を受診します。
病院ではMRI検査までしますが異常が見つかりません。
ストレスからくる精神的なものだろうと言われ、夜遊びや深酒を控えるように言われるだけでした。
その後もめまいや体調不良が続き、寝坊して遅刻したりしながらも出社します。
不倫スキャンダルの釈明インタビューをする上院議員との約束の時間にも遅れて出社したりします。
インタビュー中には上院議員の釈明を下ネタで茶化し相手を怒らせるなど、不良記者化していき編集長のリチャードに激怒されます。
スティーヴンが泊まりにきて同じベッドに寝ていたスザンナは寝言を言い始めると上半身を起こし体が硬直して、完全にエクソシスト状態になります。
首は回りません。
そのうち激しく痙攣し、驚いたスティーヴンは救急搬送します。
しかし病院に着くと痙攣が治まってるスザンナは帰りたいと言いますが、スティーヴンが説得して受診させます。
結局、てんかん発作だろうということになり抗てんかん薬を処方されて帰ります。
翌日スティーヴンから連絡を受けてスザンナの両親がやってきます。
父トムは、なんですぐに連絡をくれなかったんだとスティーヴンにキレています。
母ローナは、そんなこと言ってる場合では無いと言い、スティーヴンに感謝すると、スザンナに一人暮らしはさせておけないとローナの家に来るように言い、スティーヴンも賛成します。
母ローナの家から出社するようになったスザンナは会社に来ると急にネガティブになって周囲に喚き散らしたり、かと思えば急にポジティブになって編集長に大きな仕事を任せるように掛け合ったり、激しい躁鬱の症状を示します。
心配した編集長は家族に連絡してスザンナを自宅待機とします。
自宅待機となって1日中家にいるスザンナに母も手に負えなくなります。
母は何よりスザンナの目を見てると、瞳の奥にスザンナはいなく別人のようになってしまっていると言います。
父トムは、ここに至ってもまだ深刻に捉えておらず、そんな大げさなと言うので、ローナはトムにスザンナの面倒を任せます。
トムの家にやってきたスザンナはすぐに症状がでます。
食事時に幻聴が聞こえ、トムの再婚相手が自分の悪口を言ってると言います。
そのうち急におびえだしたスザンナをトムが介抱しようとするとそれも拒絶され手に負えなくなります。
ここに至ってようやく事態の深刻さに気付いたトムは病院に入院させます。
半ば強制入院となったスザンナですが、自分の悪口が絶えず聞こえると言って退院しようとします。
病院も一通りの検査をし、両親も揃って医師の説明を受けますが、数値的には問題ないと言われます。
考えられるのは精神的疾患だけで、統合失調症か双極性障害と言われますが、両親は納得できませんでした。
両親は医師にプレッシャーをかけ続け、その後も様々な数値検査をしますが異常が見つかりません。
病院は最後に3日間、スザンナのベッドをモニターで監視するなど24時間体制で取り組み、それでも原因が掴めなかったら精神病院に転院させると言うのでした。
病院に毎日見舞いに来ているスティーヴンにカーン医師が声をかけると、スティーヴンは瞳の中に彼女はいなく押し込められてると言います。
カーン医師も精神的疾患だけでは片付けられないと感じていたため、現在は大学で教鞭をとる恩師のナジャー医師に相談します。
カーン医師がナジャー医師に所見を伝えると興味深い症例と言われますが、現役の医師は退いてると言い難色を示すますが、協力してくれることになります。
ナジャー医師はこれまで他の医師がやったように基本的な質問、名前や現在が西暦何年かなどを質問します。
そしてスザンナに時計の絵を描かせます。
スザンナが描いた時計の絵は、12時から6時の間の右側に1から12までを書きこんだものでした。
ナジャー医師は統合失調症や双極性障害の患者ではこうは描かないと言い、脳の炎症により視野が半分失われているためと推察します。
炎症を起こしている正体を突き止めるためには脳生検するしかないと言います。
両親は脳生検に躊躇しますが、ナジャー医師は「自分の娘だったら間違いなく脳生検する」と力強く言うと両親も納得します。
そして次のシーンでは脳生検で抗NMDA受容体脳炎ということが判明し両親に伝えられます。
理解出来ない両親にナジャー医師が分かり易く説明すると、治療法はあると言い以前の90%まで脳の機能は回復すると言います。
その後はスザンナのリハビリが描かれて7か月後に職場復帰すると、編集長のリチャードから闘病記を書いてはどうかと勧められて映画は終わります。
このインタビュー記事によるとスザンナさんの場合、原因は卵巣奇形腫によるものじゃ無かったようですね。
まだ分からないところが多くある病気のようですが、今までずっと精神疾患だと扱われてきたものが、そうでは無かったというのが判明したことは大きいと思います。
映画は基本的にスザンナの症状を描いてるんで重いです。
そして周囲の人も原因が分からずイライラしているので見やすい映画では無いです。
これ病気の映画だと思って観なかったら、ホント、『エクソシスト』に近いなと思いました。
ニューヨークでしたから両親も教会とかに相談しなかったですけど、田舎なら教会の神父さんに相談しててもおかしくないと思いました。
現状でも原因が分からない不定愁訴って多いですが、だいたいがストレスって言葉で片付けられてることが多いような気がします。
そしてそういった症状に苦しんでインターネットで検索した人に対し、いい加減で誤った医療情報を提供していたキュレーションサイトの罪は重かったと思います。
科学や医学の進歩で、少しずつでもそういったことが明らかになればいいと思いました。
鑑賞データ
角川シネマ有楽町 TCGメンバーズ ハッピーチューズデー 1000円
2017年 208作品目 累計223100円 1作品単価1073円
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