絶望しかない世界 ☆4点
予告編
映画データ
あらすじ
FBIの誘拐即応班を指揮する捜査官ケイト・メイサー(エミリー・ブラント)は、アリゾナ州の荒野にたたずむ一軒家で信じがたい光景を目の当たりにした。誘拐事件の人質を救出するために強行突入したその家は、メキシコの麻薬組織ソノラ・カルテルの最高幹部マヌエル・ディアスの所有物で、壁の中に数十体もの腐乱死体が隠されていたのだ。しかも離れの物置を捜索中に凄まじい爆発が起こって警官ふたりが死亡し、ケイトも頭部にケガを負ってしまう。
その日のうちにFBIの会議室に呼び出されたケイトは、上司のジェニングス(ヴィクター・ガーバー)から思いがけないことを告げられる。アメリカ社会を蝕むソノラ・カルテルの壊滅とディアスの追跡を専任とする特殊チームが編成され、現場経験が豊富なケイトがその一員にスカウトされたという。その場でチームの作戦リーダーを務める特別捜査官マット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)と対面したケイトは、突然の出向要請に困惑しながらも、巨悪を討つ使命感に駆られて「志願します」と返答した。
後日、アリゾナ州内の空軍基地に赴いたケイトは、グレイヴァーに迎えられて小型ジェット機に乗り込む。機内にはアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)という見知らぬ寡黙な男が同乗していた。行き先はメキシコのフアレス。この日、どのような作戦を行うのか事前に何も知らされていないケイトは説明を求めるが、なぜかグレイヴァーは具体的なことを明かさない。アレハンドロは麻薬カルテルの内実に精通したコロンビア人の元検察官で、コンサルタントとして作戦に携わっているのだという。
ケイトを含む特殊チームの一行は数台の車に分乗し、物々しく武装したメキシコ警察に先導されながらフアレス市内へと向かう。そこでケイトの目に飛び込んできたのは、麻薬カルテルが見せしめのため高架下に吊したいくつもの惨たらしい死体。それはまさにカルテルの暴力に支配された街のおぞましい実態だった。やがてチームがある施設でディアスの兄ギエルモの身柄を引き取ったのち、ケイトはさらなる衝撃に見舞われる。アメリカ国境の手前で渋滞に巻き込まれた際、カルテルの襲撃を事前に察知したチームが猛烈な銃撃を浴びせ、敵を皆殺しにしたのだ。民間人を巻き添えにしかねない無法なやり方に反発したケイトは、グレイヴァーに猛然と食ってかかるが、「これが現実だ。見るものすべてから学べ。君は学ぶためにここにいる」と一蹴されてしまう。
アリゾナ州に戻って相棒のレジー(ダニエル・カルーヤ)と合流したケイトは、グレイヴァーとアレハンドロから次のような重要な説明を受ける。チームの当面の狙いは、カルテルが混乱に陥る事態を発生させ、アメリカのどこかに潜伏しているディアスをメキシコに呼び戻させること。それがうまくいけばカルテルの頂点に君臨する麻薬王ファウスト・アラルコンの居場所を突き止めることができるという。すでにギエルモを拷問で締め上げたアレハンドロは、カルテルがアメリカとメキシコの往来に使用している秘密のトンネルの存在を聞き出していた。
グレイヴァーは前日の宣言通り“混乱”を引き起こすため、金融機関に現れたカルテルの資金洗浄屋を拘束し、ディアスの口座を凍結させた。ケイトはあくまで合法的にディアスを逮捕するよう主張するが、グレイヴァーはおろか、上司のジェニングスさえもそれを聞き入れてくれない。苛立ちを募らせたケイトはレジーを伴ってバーに繰り出し、そこで意気投合したテッド(ジョン・バーンサル)という警官を自宅のアパートに招き入れる。しかし行きずりの情事は、たちまち悪夢に変貌した。テッドは捜査情報を探るために、ケイトに接近したカルテルの内通者だったのだ。カルテルの動きを先読みしていたアレハンドロに危ういところを救われたケイトは、もはや何も信じることができない無力感に打ちのめされる。
翌日、グレイヴァーの思惑が当たってカルテルがディアスをメキシコに呼び戻し、いよいよチームのミッションは最大の正念場を迎えた。出発直前、ケイトはグレイヴァーからある驚愕の事実を告げられ、自分が都合よく利用されていたことにショックを受けるが、捜査の行方を最後まで見届けたい一心で作戦に同行する。しかし、ケイトはまだ何も知らなかった。これからカルテルの秘密トンネルに身を投じる彼女は、いかなる非情な現実を思い知らされるはめになるのか。そして不気味なまでに謎めいたアレハンドロが、この作戦に参加した真の目的とは何なのか……。
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
試写会で鑑賞しました。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作は『複製された男』を劇場公開時に見て虜になった口です。
この映画は1度観ただけでは分からないというのが売りでリピーター割なるものをやっており、好きな作風ということもあって2回観に行きました。
ポルトガルのノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴのミステリー風原作を90分弱に収めた手腕は見事で完璧な映画だと思いました。
そしてほぼ同時期くらいに『プリズナーズ』が上映されてたと思うのですが、このときはちょうど見たい作品が重なっていたのと、上映時間が150分弱ということもあって見そびれたのですが、こちらもおそろしく評判がよく後悔してたところ、ちょうどWOWOWでやってたので観たのですが、こちらも練りに練られた脚本に感嘆しました。
そして最近になってようやく『灼熱の魂』をレンタルで見たのですが、こちらもよくこんな話を思いつくなと驚いたのですが、出す作品、出す作品が軒並み高打率で、今現在、監督の名前だけで一番観たい人になっています。
本作『ボーダーライン』は昨年2015年のカンヌ出品時から非常に楽しみにしていた作品で原題は『Sicario』でした。
惜しくもカンヌは受賞できなかったのですが、今年2016年のアカデミー賞に撮影・作曲・音響編集の3部門でノミネートされています。
映画は冒頭から、誘拐事件の容疑者宅への奇襲捜査という緊迫感ある状況で、物語に一気に引き込まれました。
これまでにアカデミー賞に12回ノミネートされるも受賞には至っていない名撮影監督のロジャー・ディーキンスによる光と影の映像美が見事です。
緊張感を演出するジリジリとしたヨハン・ヨハンソンによる音楽・音響も見事で、その部門でのアカデミーノミネートも納得の出来です。
ただ今回、個人的な感想を言わせてもらえば、比較的このメキシコ麻薬戦争モノが好きな自分としては同監督の過去作よりストーリーテリングはやや弱かったかなと思います。
リドリー・スコット監督の『悪の法則』やテレビドラマシリーズ『ブレイキング・バッド』
それからドキュメンタリー映画の『皆殺しのバラッド』『カルテル・ランド』等を見てるので、少なくともエミリー・ブラント演じるケイトの目線では見れませんでした。
なので自分の場合は物語に意外性を感じませんでしたが、それらの作品に触れたことの無い人ならより刺さるものがあると思います。
しかしながら、ここからはネタバレになりますが、この映画で描いてたようなコロンビアマフィアの復権という動きは現実世界でもあるのでしょうかね?
そこら辺のことは疎くて分からないのですが、現実世界にあって脚本に反映したのか、それとも製作陣が考えたのか気になりますが、後者なら、よくこんなこと考えつくなと思いますし、前者でも現実世界の動きをいち早く取り入れてて関心します。
私の知る限りメキシコが麻薬取引を完全に掌握してから描かれた(おそらく2000年以降)映画では初めてだと思います。
アメリカが介入しフセイン政権を倒してイラクが混沌としたように、コロンビアの麻薬組織が壊滅して無秩序状態となったメキシコ。
どちらも絶望しかない世界ならば、管理できる必要悪の方がまだマシなのか、いやいやそれらを求める(需要)我々(先進国)が悪いのか、色々と考えさせられる映画です。
鑑賞データ
coco独占試写 角川試写室 0円
2016年 18作品目 累計22800円 1作品単価1267円
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