今が最低ならあとは上がるだけと思える ☆3.5点
高専在学中にAV女優デビューをして話題になった紗倉まなの初小説でAV女優を巡る連作短編小説の映画化。
監督は『64-ロクヨン- 前編/後編』の瀬々敬久、主演に森口彩乃、山田愛奈、佐々木心音
予告編
映画データ
本作は2017年11月25日(土)公開で全国5館での公開です。
来年1月以降公開の所が多いようで最終的には21館での公開となるようです。
原作者の紗倉まなさんの活躍は凄いですよね。
こういうのでヤフーのトップニュースになったり
昨夜中々寝付けなくて、久々に色付きの絵を描いてました。前までの根暗な感じ(写真 右)の絵に比べたら、大分マシになった気がする😊…← pic.twitter.com/ywRtvUKz4E
— 紗倉まな (@sakuramanaTeee) 2014年8月7日
絵の才能とかも凄いです。
2月に映画化が発表されてから楽しみにしてましたが、なかなかいい時間帯の上映が無かったんですが、トーク付き上映の回がちょうどいい時間だったので見てまいりました。
監督は瀬々敬久さん
2000年頃までピンク映画を中心に撮られていた監督さんで、2010年に公開された『ヘヴンズ ストーリー』で第61回(2011年)ベルリン国際映画祭の国際批評家連盟賞フォーラム部門を受賞しています。
昨年は東宝の大作『64-ロクヨン- 前編/後編』を監督してます。
主演に森口彩乃さん
福山雅治さんなどが所属する大手芸能事務所アミューズ所属の女優さんです。
『最低。』上映が開始して1週間が経ちました。原作で私が好きな彼女の一途さ。【美穂】の女としての自信を取り戻しけんちゃんにもう一度向き合って欲しかった心情をよく観察して頂けると嬉しいです。何年も女として見て貰えなかった自分に失望してしまった彼女の覚悟を…。
唯一あったオフショット。 pic.twitter.com/dzlLBFJei3— 森口彩乃 (@cocomoon0828) 2017年12月2日
本作で初めて知りました。
主演に山田愛奈さん
2015年デビューで2017年6月号からノンノの専属モデルに起用されてます。
女性ファッション誌読まないんで本作で初めて知りました。
主演に佐々木心音さん
ドラマ「闇金ウシジマくん」を見てます。
映画出演作は『TOKYO TRIBE』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
橋口美穂: 森口彩乃
彩乃: 佐々木心音
本間あやこ: 山田愛奈
橋口健太: 忍成修吾
日比野至: 森岡龍
石村浩樹: 斉藤陽一郎
美沙: 江口のりこ
泉美: 渡辺真起子
本間知恵: 根岸季衣
本間孝子: 高岡早紀
マネージャー: 斉藤陽一郎
AV男優: 川瀬陽太
彩乃の妹: 紅甘
あらすじ
橋口美穂(森口彩乃)、34歳。何不自由なく暮らしているものの、どこか満たされない日々。夫の健太(忍成修吾)は何事にも無関心で、子供が欲しいと提案しても忙しい仕事を理由に断られる。最近は病に伏した父を姉の美沙(江口のりこ)と交代で見舞うため、家と病院を往復する毎日。このままずっと同じような生活が続くのだろうか……。そんな空虚な思いを埋めるため、美穂が決心したのはAVに出ること。今までずっと安定志向だった自分の人生を、ひょっとしたら変えることができるかもしれない。そう信じて彼女は新しい世界の扉を開けるが――。
本間あやこ(山田愛奈)、17歳。小さな喫茶店を営む祖母の知恵(根岸季衣)、東京から出戻った母の孝子(高岡早紀)と3人で、寂れた海辺の町で暮らす。人と接するのが苦手で、クラスメイトとも打ち解けることができない。自分の部屋でキャンパスに向かって絵を描いているときだけが唯一心休まる時間。しかしある日事件が起こる。登校すると、あやこの母親が元AV女優だという噂が広がっていたのだ。定職にも就かず、自由奔放な生活を送る孝子は田舎町では目立つ存在。あやこはそんな母親との距離感をいまだに掴めずにいたが、勇気を出して孝子に真相を確かめようとする――。
彩乃(佐々木心音)、25歳。専門学校に通うため、そりが合わない家族から逃げるように上京してきたが、軽い気持ちでAVに出演。その後人気女優となり、多忙な毎日を送る。この仕事に後ろめたさはない。むしろ天職かもしれないと思う。日比野(森岡龍)という頼りなさげな男とバーで意気投合した彩乃は、そのまま一緒に朝を迎えるが、彼女の仕事を知った母親の泉美(渡辺真起子)が突然現れ、穏やかな幸福感が一気に吹き飛ぶ。AVの仕事をやめるよう説得する母を置き去りにし仕事へと向かう彩乃だったが、撮影中に意識を失い、そのまま病院へ運ばれる――。
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
例によって原作小説は未読なんですが、原作だと「四人の女優を巡る連作短編」となっているようです。
映画では三人ですので、「男に誘われ上京したススキノの女」の話が無いようです。
映画はオムニバスなんですが、それぞれの話が章立てで独立してる感じでは無くて、それぞれが平行して描かれます。
ただし、それぞれのお話は終盤まで全く繋がってこないので、3人の主人公が頻繁に切り替わる映画の進め方に最初は戸惑うかもしれません。
たぶん、三人の話を最後の方で緩く繋げるのは映画オリジナルじゃないかと思います。
主婦・橋口美穂の話は夫とセックスレスでAV女優になる話です。
夫はアウトレットモールのデベロッパーか何かの会社員で仕事が忙しいといって妻を全然かまってくれません。
仕事の為とか言って寝室も別々なんですが、もうすぐ35歳になる妻の美穂は子供も欲しいと考えてます。
夫が朝寝てる隙に部屋に入るとアウトレットのチラシ作る傍らパソコンのDVDで夫はAVを見てるようでした。
私のことは全然かまってくれないのに…。
ってことでAVに応募します。
プロダクションのマネージャー(斉藤陽一郎)と面接して、裸の宣材写真撮られて帰ります。
美穂の父は入院してるんですが、モルヒネを打たれて意識混濁してるんで末期がんだと思います。
姉の美沙と交代で看病してるんですが、姉曰く、妹の方がしっかりしてて頻繁に通ってきてるようです。
その日も見舞いしてたら珍しく姉が来て、父親との思い出話に花を咲かせます。
姉妹は母親を早くに亡くし男手一つで育てられました。
父親の部屋をあさってたらAVのDVDが出てきた話をしてましたが、20年くらい前だったらまだビデオじゃないかな?
姉役の江口のりこさんは「お父さんはあれ見てオナニーしてたんだよ、オナニー」とオナニー連呼します。
2人で看病してるとマネージャーから電話がかかってきます。
出演予定の女優がキャンセルしたらしく、翌日からのロケの作品に出てくれないかというものでした。
監督が宣材写真を見て気に入ってるとマネージャーは言います。
美穂は了承し、姉に明日は病院に来れないと伝えます。
翌日の朝、夫には、姉たちと三島に温泉旅行に出かけると言って家を出ます。
夫も「お父さんの看病ばかりで疲れるだろうから、ゆっくり休んでくるといいよ」と言って送り出してくれます。
撮影は森の中のコテージで行われていて、隣のコテージでは家族連れが遊びに来てます。
美穂にとってはデビュー作でしたが、マネージャーはスタッフに美穂を紹介すると、他の現場もあると言って帰っていきます。
初日の撮影はつつがなく終わりましたが、夜になって携帯をチェックすると姉から電話があって父親が死んだとのことでした。
マネージャーに連絡してタクシーで東京へ帰ります。
この辺は先日観た『おじいちゃん、死んじゃったって。』と一緒ですね。
よりにもよって初めてのAVでセックスしてる最中に父ちゃん死んじゃった、と。
ずっときちんと看病してたのに死に目に会えなかったなんて。
東京に着いて病院に向かう途中マネージャーに連絡入れると、必要な尺は撮れてるから撮影の心配はしなくていいと言われ、落ち着いたら連絡してと言われます。
病院で亡き父と対面すると遺体は姉の家に運ばれます。
夫の方が先に駆け付けてて、美穂が姉たちと一緒じゃなかったことはバレてると思うのですが、それどころじゃないのでしょう、そこには触れない夫です。
姉は美穂の方が世話してたから喪主に相応しいと言います。
それから、こんなときに何だけど妊娠したと言います。
お父さんが倒れて入院した日に妊娠が分かったので、命が入ってきたんじゃないかなぁと言います。
でも夫の子じゃなくて、別に付き合ってる人の子だと言う、ぶっとんだ姉でこの辺は笑えます。
美穂と夫は一旦喪服を取りに自宅に戻ります。
夫は翌日からシャワーも浴びれないだろうからと言って、シャワーを浴びようとしますが、美穂は私を抱いてと迫っていき「昨日までの私とは違う」と言います。
当然夫は何のことか分かりませんが、積極的な美穂にされるがままになってます。
夫もいつもと違うと感じたのか、美穂にオナニーしてと頼むと、見てる方が興奮するんだと性癖をさらけ出します。
興奮した夫が迫ってきてコトを終えると、美穂は良心の呵責からかAV撮影に臨んできたことを打ち明けます。
絶句する夫でしたが、そのことは葬儀が終わってからゆっくり話そうということになります。
通夜の朝、姉の家に戻り、準備をしてると一人の少女が訪ねて来ます。
高校生・本間あやこの話は母親がAV女優だったと学校で噂になる話です。
5歳のとき、母親の孝子に連れられ祖母・知恵の家にやってきます。
孝子は実家を飛び出して以来連絡もせず、十年ぶりの帰郷でした。
孝子は戻ってきても働きもせず、喫茶店兼食堂を営む知恵にパラサイトしてます。
あやこは小さいときから絵を描くのが得意で、高校生になった今も自宅で描いてます。
美術部などには入って無いようで友達もいませんが、新聞配達をしてるクラスメイトの男子が唯一、気にかけてくれてます。
学校に行って、自宅で絵を描き、祖母の食堂の手伝いをする毎日ですが、美術コンクールでの入賞が新聞記事になると、クラスメイトから「本間さんて絵を描いてたんだ」と注目されるようになります。
女子グループから画家は誰が好きなの?と聞かれ、ズジスワフ・ベクシンスキーと答えると、誰それ?と笑われピカソとかじゃないの?と言われます。
そして女子グループは去り際に「母親はAV女優だったんだって?」と言ってきます。
学校では、あやこの父親はAV男優で撮影中に出来た子だと噂されていました。
あやこが産まれて稼げなくなった母親が娘を連れて戻ってきたと陰口を叩かれていました。
あやこは、フラフラと遊びにばかり出かけていて家に寄り付かない母親への不満を、祖母である知恵にぶつけます。
知恵もまたシングルマザーで孝子を育てていました。
いつまでもパラサイトを許してる煮え切れない祖母に腹を立てるあやこでしたが、家族の深い愛情にまだ気づかないあやこでもありました。
次の日、また孝子が居なくなって家出したと考えたあやこは駅に向かいます。
すると孝子が現れ「家出しようと思ったけど、パチンコですったからやめた」と言ってきます。
あやこが乗ってきた自転車で海に向かうと、孝子にAV女優だったの?聞きます。
孝子はそういうこともやってたと答えます。
父親はAV男優だったの?と聞きますが、それには答えませんでした。
AV女優・彩乃の話は母親にAV女優がバレた話です。
その日もいつものように現場に出かけ男優(川瀬陽太)と絡みを終えると、母親から電話がかかってきます。
「あなた何やってるの?変なコトしてるんじゃないでしょうね」と言われ、完全にバレてます。
「帰って来い」「いや帰らない」と電話を切ると親バレしたため重い気持ちになり、気分転換にいつものバーへ出かけます。
カウンターで飲んでると隣の席に来た男が携帯を失くしたとカバンの中を探してます。
カバンから落としたペンを拾ってあげたことから、オカルト雑誌の編集者だという日比野という男と仲良くなります。
意気投合して楽しい酒を飲んで気づいたら自宅のベッドで一緒に寝てました。
お互い酔っていたため昨夜のことは覚えていませんでしたが、築30年家賃5万円の安アパート、壁が薄く隣の部屋に声聞こえてなかったかなぁ、なんて2人で笑い合います。
日比野に惹かれた彩乃は、土曜日だけど仕事に行くという日比野を、「私も買い物に行く」と言って途中まで送っていきます。
日比野とはその後もバーで、「人格は人間に生まれ変わった回数で決まる」という話をして、彩乃は「あー、私、人間1回目だ」とか言って楽しく酒を飲んでます。
そんな親バレを忘れさせてくれる日比野との楽しい酒でしたが、ある日彩乃が家に帰ると母と妹がアパートの部屋の前で待っています。
釧路から飛行機で来たという母と妹は「あなた何やってるの」と彩乃をなじるのでした。
その日も撮影があった彩乃が出かけようとすると、そんなの行く必要ないと母親が止めます。
それでも行こうとする娘に「あなたは騙されている。お母さんが何とかする」とまで言われ顔を叩かれますが、「叩くのは構わないけど、顔はやめてよ、商売道具なんだから」と言い返し、彩乃はプロ意識を持って撮影に出かけるのでした。
この日の現場は屋外のプール付きの現場です。
ここは「例のプール」ならニヤリと出来たところなんですが、予算が厳しかったのかもしれません。
この日の男優も前回と同じ男優(川瀬陽太)で、「また一緒だね、よろしくー」なんてやり取りの後、バックからコトをいたそうとしたら、倒れてプールに落ちてしまいます。
また同じ男優でテンション下がったのかな?と思いましたが、そうではなくて、体調不良による貧血で病院に運ばれていました。
病院に現れたマネージャーは美穂のマネージャーと同一人物で、美穂をコテージに送った際に別の現場があると言ってたのが、この現場でした。
彩乃が運ばれた病院は、美穂の父が入院していた病院で、治療を受けた彩乃を送って行こうとすると美穂から電話が入り、入れ違いに美穂が病院に着く感じで、この二人の話は緩く繋がります。
彩乃が家に帰ると母と妹はもう居なく、いつでも帰っておいでと書き置きがあります。
妹に電話するともう釧路に着いたとのことでしたが、妹は飛行機で母はバスで青森のおばさんの所に寄るとのことでした。
彩乃は急いでバスターミナルに向かうと深夜バスを待つ母親がいます。
母には、東京で生きて行く決意を伝え、涙を流しながら母親を見送るのでした。
翌日
美穂たちがお通夜の準備をしてると訪ねて来たのは、本間あやこでした。
あやこは孝子から父親が亡くなったことを聞かされ、孝子は亡くなった人間には興味ないと言って、あやこを一人で葬儀に向かわせたのでした。
あやこを迎え入れた美穂と美沙の姉妹は、あやこが生まれる以前に一度、父が孝子を連れてきて会ったことがあると言います。
美穂たちとあやこは異母姉妹なのでした。
『海街diary』の広瀬すずちゃんみたいな感じです。
美穂があやこの手がデッサンの木炭で汚れているのに気づくと、絵を描いてるの?と尋ねます。
あやこが描いてると答えると、父も絵を描いてて特にこの画家が好きだったと言って画集を出してきます。
それはズジスワフ・ベクシンスキーの画集でした。
あやこは「私もベクシンスキーが大好きなんです」と涙します。
父親がAV男優などというのは単なる田舎の噂話に過ぎず、救われるあやこでした。
エンドロール後に事務所の屋上にいる綾乃が日比野に電話をかけ、何か言おうとして映画は終わりますが、きっと日比野にAV女優であることを打ち明けるのだと思います。
ストーリー的にはAV女優あるあるで、自分には見知ったことなので目新しさはありませんでしたが、おそらく映画オリジナルだと思うのですが、美穂とあやこを異母姉妹の設定にして、話にオチをつけたのはよかったと思います。
美穂と彩乃は自分から選択したこと、あやこは境遇で選べないことなので、あやこが救われる展開はよかったなと思います。
彩乃も希望ある終わり方、美穂は夫との話し合いがどうなるかですが、姉がぶっ飛んでるので救われてる部分もあると思います。
美穂役を演じた森口彩乃さんは、普通の主婦がAV女優になりハードな濡れ場もあるという難しい役を見事に演じられてたと思います。
アミューズのHPを見ると、森口さんのお隣の村川絵梨さんも昨年公開の『花芯』でハードな濡れ場を演じられてたのですが、やっぱりこういう覚悟ある方々にもっと邦画に出ていただきたいと思いました。
映画はカメラがよかったです。
撮影監督は佐々木靖之さんという方で、今まで意識していませんでしたが、作品一覧を見てたらわりと好きな映像が多かったです。
AV女優の親バレで言えば鈴木涼美さんと紗倉まなさんが対照的なんですが、奇しくも今年はお二人とも原作が映画化されました。
『身体を売ったらサヨウナラ』の方は、ほぼ歌舞伎町、男、ホストの話なので本作とは対照的ですが、『最低。』では映画のエピソードに使われなかった「男に誘われ上京したススキノの女」が近い話なのかな?
思えば『プラトニック・セックス』も家族を巡る話ですよね。
もう原作が出てから17年ですか。
ちょうどこんな記事も出てました。
人はやっぱり共感されたくて、誰かに必要とされたくて生きてるんだなぁ、とそんなことを思った映画でした。
鑑賞データ
角川シネマ新宿 TCGメンバーズ料金 1300円
2017年 198作品目 累計212800円 1作品単価1075円
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