考古学の神の手事件を思い出す ☆4.5点
予告編
映画データ
あらすじ
工事現場などに侵入しては銅線や金網・マンホールなどの建設資材を盗み、業者に売り払うチンケなコソ泥をしているルイス・ブルーム(ジェイク・ギレンホール)
ある日の夜、車で移動中に交通事故の現場に出くわし、野次馬根性から車を降り現場を眺めていると、あとから車で駆けつけたビデオカメラを持ったクルーに出くわす。
彼らが引き上げるときに何をしてたか聞くと、事件や事故の現場映像を、映像素材としてテレビ局に売るんだということを聞き、自分でもやってみようと思い立つ。
自分が保有している金目になりそうなロードバイクを売って、警察無線を傍受するための無線機とビデオカメラを購入し、見よう見まねでパパラッチ(ナイトクローラー)稼業を始めるのだが…
というお話です。
ネタバレ感想
監督は『ボーン・レガシー』などの脚本を手掛けてきたダン・ギルロイで、この映画ではテレビ局のプロデューサー役のニーナを演じたレネ・ルッソとも実生活では夫婦だそうです。
監督はインタビューなどで、ルイス(ジェイク・ギレンホール)の役柄を構築するに辺り、ステレオタイプ的なサイコパスにならないよう(観客にも自分達の身近な生活のすぐ傍にいる人間だと思ってもらえるよう)に、ルイスが自宅で観葉植物に水やりをするなどの人間的な味付けをしたと語ってましたが、はっきりいってステレオタイプ的なサイコパスでした(笑)
完全に反社会性人格障害。
普通の人も犯罪を犯しますがルイスとは違います。
良心の呵責があります。
ルイスが面白いのは、学歴もコネも無いのでいい仕事にはありつけませんが、冒頭の盗んだ資材を売るシーンでも分かるように、自分を「売る」或いは「アピールする」のは非常に長けている点です。
その辺りは「このペンを売ってみろ」でおなじみの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』とも似ていて、ルイスは反社会性人格障害ではありますが、保険の営業やそれこそ証券の営業職などは非常に向いてるのではないかと思いました。
それとルイスの面白いもう一点は彼なりの美学があるのでしょう。
窃盗や暴行などの軽犯罪は犯しますが人は殺しません。
相手を邪魔だと思っても直接手を下すことは無くて、そうなるよう仕向ける。
まあ、ただ、この映画ではそうかもしれなかったですけど、ゆくゆくは人を殺す可能性もあるかもしれません。
この映画が面白いのは、テレビ局のプロデューサーより、資材を買った土建屋の社長の方がルイスの本質を見抜いてるんですよね。
ルイスが盗んだ資材も二束三文で買い叩くし(まあ本来は盗品なので買うなですが)、彼の自己アピールも全く相手にしません。
本質的に信用できない人間なので極力関わらないようにしています。
これって結構みんなの普通の感覚だと思うんですけど、現在の日本の社会でもこれと同じようなことが起こっていて、最近テレビやマスコミでパッと話題になるような人はルイス的な人が多いです。
自分の身近に居たら絶対に関わりたくないような人なんだけど、いつの間にか有名になってたり成功してたりという。
そうやって考えるとこの映画で一番悪いのはレネ・ルッソ演じたテレビ局のプロデューサーのニーナなんですよね。
そしてこのニーナは我々も彼女みたいになる可能性のある非常に近い存在。
監督は「自分やあなたもルイスになりうる日常に潜んでいることを伝えたかった」としていますが、どっちかというとニーナになる危険性の方が高いのではないかな?と思いました。
という訳で本作、倫理やモラルを逸脱する話(映画)はわりとありますが、パパラッチから、より細分化された報道スクープを狙うナイトクローラーに焦点をあてた切り口は新しいと思いますし、ジェイク・ギレンホールの怪演もあって非常に面白い映画に仕上がっているのでおすすめです。
鑑賞データ
ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズ ハッピーチューズデー 1000円
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