ホドロフスキーのDUNE 評価と感想/未完に終わった大作

ホドロフスキーのDUNE 評価と感想
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ホドロフスキーという人の魅力につきる ☆4点

予告編

映画データ

ホドロフスキーのDUNE (2013):作品情報|シネマトゥデイ
映画『ホドロフスキーのDUNE』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:『エル・トポ』などのアレハンドロ・ホドロフスキー監督の企画で中止となったSF大作について、貴重な資料や証言を交えて当時の裏側を明かすドキュメンタリー。
http://cinema.pia.co.jp/title/163541/

『エル・トポ』『ホーリーマウンテン』の2作によって確固たる伝説的なカルト映画監督の地位を築いたアレハンドロ・ホドロフスキー監督

その監督がデヴィッド・リンチ監督が手がけた歴史的失敗作『デューン/砂の惑星』の何年も前に映画化を試みていたなんて初めて知りました。

そして、その1970年代半ばの試みが、後のSF映画作品に多大な影響を与えていたなんて!
(ニコラス・ウィンディング・レフン監督なんかも影響受けてて、ホドロフスキー監督の愛弟子みたいです)

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前記2作によって世界的評価の高まっていたホドロフスキー監督は、フランスの映画プロデューサー、ミシェル・セドゥと知り合います(このセドゥという人はフランスの映画会社パテやゴーモンの一族で、最近では『アデル、ブルーは熱い色』でパルムドールを獲得したレア・セドゥなんかと同じ一族)。

このセドゥの協力を得て、予てから映画化したかったフランク・ハーバードの小説「DUNE」の映像化に取り組みます。

思い入れのある小説だけにアイデアは豊富。監督の頭の中で撮るイメージは出来上がっているので、詳細な絵コンテによるストーリーボードがどんどん出来上がっていきます。

また監督がその世界観の実現の為に、集めようとする人々が豪華です。
キャストとして切望したサルバドール・ダリを筆頭にそこから繋がったデザインのH・R・ギーガー、ダン・オバノン(このコンビは後に『エイリアン』でSF映画の金字塔を打ち立てる)。
役者としては旬を過ぎていて名優から怪優へと変貌していたオーソン・ウエルズ。
そして、当時最も勢いのあったロックバンド、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーなどなど本当に凄いメンバーばかり。

それで、ホドロフスキーの映画って、ああいう感じですから、実際のホドロフスキー監督ってどういう人かイメージつかないじゃないですか。
神秘的でおっかない人かと思っちゃいますが、全然違ってフランクで少年みたいな熱い志を持って誰の懐にでも飛び込んでいくいい人。
身振り手振りを交えて魅力的に語り、人を惹きつける。
上記面々もそういう監督の魅力で実現した人ばかり。

ホドロフスキーのDUNEは結局、資金難(と、ハリウッドの映画会社がホドロフスキーが監督することにビビった)のため実現しませんでしたが、その絵コンテによる詳細なストーリーボードやデザインなどは後のSF映画に多大な影響を与えることになります。
(というか、ハリウッドの映画会社はホドロフスキーのDUNEを検討するにあたり入手したそれら絵コンテを、後々小出しにして自社作品に反映させた気すらします)

当時、自分が映画化できなかったときはひどく落ち込んで、ディノ・デ・ラウレンティスが映画化権を取得してリンチに持っていったときは、リンチなら上手く撮れると思って更に落ち込んだそうですが、出来上がった映画を見て(これも傷つくのが嫌だったが周囲の説得で渋々見た)、これは失敗作(リンチといえども製作会社に骨抜きにされた)だと喜んで元気が出たと言ったりする辺りは大変お茶目な人で笑っちゃいました。

私は渋谷のアップリンクで観たんですが、上映後、アップリンクの浅井社長のトークがありまして、そこで天井桟敷の寺山修司と浅井社長の関わり、そこから浅井社長のホドロフスキーへの思いから今回の配給が実現するまでのお話(浅井社長がいなかったら、このドキュメンタリーとこのあと公開されるリアリティのダンスの日本公開はなかったかもしれません)を聞けたんですがとても興味深かったです。

ホドロフスキー監督、日本では『ホーリーマウンテン』から『サンタサングレ』、サンタサングレから今度の新作までの間が空いていて寡作なイメージですが、メキシコでは間に一本ずつ撮っていたようですし、フランスのバンド・デシネ(漫画)の原作やタロットカード研究をするなどの多才ぶりで一般の商業映画監督の枠に収まらない人だと思いました。

御年85歳だそうですが、全然若く見えますし、まだまだエネルギッシュでここにきて、日本での動きもありましたし、是非、新藤兼人監督のように100歳またそれ以上になっても映画を撮って欲しいなと思いました。

鑑賞データ

渋谷アップリンク 会員料金 1000円

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