光(河瀬直美監督)評価と感想/百聞は一見に如かず、なのに会話が成立しない映画

光 河瀬直美 評価と感想
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押しつけがましい人 ☆2.5点

1997年『萌の朱雀』で第50回カンヌ国際映画祭カメラドール受賞、2007年『殯の森』で第60回カンヌ映画祭グランプリ受賞した河瀨直美監督が、前作『あん』の永瀬正敏さんと、ヒロインに水崎綾女さんを迎え、弱視のカメラマンの男性と視覚障害者向け映画音声ガイド制作に従事する女性との交流を描いたラブストーリーで第70回カンヌ映画祭エキュメニカル審査員賞受賞作

予告編

映画データ

光 (2017):作品情報|シネマトゥデイ
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監督は河瀨直美さん
「瀨」の字の右の方が「頁」じゃなくて「刀」の方の字です。
作品は前作の『あん』をWOWOWの放送でしか見たことがありませんが、面白かったです。

カンヌ映画祭では50回、60回、70回と節目ごとに何らかの賞を受賞してますし、2013年に日本人の映画監督としては初めて審査員も務めていてカンヌに愛されてるなぁと思います。
そのうちパルムドール獲るんだろうなと思います。

2017年1月クールのテレビ東京のドラマ「山田孝之のカンヌ映画祭」の6話に出演されてて、その回が特に面白かったんですけど、演技指導の方法とか独特だなぁと思いました。

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主演に永瀬正敏さん
日本のザ・映画俳優という方で、改めてウィキペディアで出演作品見ましたら、ホント色んな映画監督の作品に出演されてますね。
そして特にこの監督の作品に出演し続けるということもない。
主役にも脇役にも回れる感じで、代表作といってもパッと思い浮かばない感じなんですが、そういう色が付かないのがいいのかなぁと思います。
昨年は『後妻業の女』で観ました。

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W主演で水崎綾女さん
河瀬監督に起用されたのは、意外だなと思ったんですけど、よかったなとも思いまして。
映画『ユダ』で話題になった方で見てないんですけど、ヌードにもなったみたいですが、正直、脱ぎ損かなと思いまして。
ユダ撮った監督もその映画1本しか撮ってないみたいなんで、その後どうしてるんだろう?

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アマゾンプライム会員だとタダで見れるみたいです。

あらすじ

視覚障害者向けに映画の音声ガイドを制作している尾崎美佐子(水崎綾女)は、仕事を通じて弱視のカメラマン中森雅哉(永瀬正敏)と出会う。
雅哉の素っ気ない態度にイライラする美佐子だったが、彼が撮影した夕日の写真に衝撃を受ける。
やがて症状が悪化し、視力を失いゆく雅哉を間近で見つめるうちに、美佐子は……。

シネマトゥデイより引用)

ネタバレ感想

まずオープニングは永瀬正敏さん演じる雅哉が映画館に入ってきて音声ガイダンスのイヤホンを耳につけるところから始まります。

そして場面変わって奈良駅前の様子を言葉で説明する水崎綾女さん演じる美佐子の声になります。
これ、結構長いんでずーっとやってるのかな?と思うと、藤竜也さん演じる小林監督による劇中映画の音声ガイダンスに繋がっていくんですが、これを視覚障害者の方にモニターしてもらって意見を聞くということをやってるのが分かります。

なので美佐子が駅前の様子を説明してるのは訓練だと分かります。

映画の音声ガイダンスは、テレビの2時間ドラマのサスペンスなんかでも副音声で「目の不自由な方にもお楽しみいただけます」っていうのがありますが(あれたまに聞きます)、あれと同じで出演者の表情や情景描写などを説明するというもので、テレビだと解説放送といわれるみたいです。

よりよい放送のために | 一般社団法人 日本民間放送連盟
一般社団法人 日本民間放送連盟の公式WEBサイトです。

美佐子は上司の智子(神野美鈴)が女優としても出演してるその映画に音声ガイダンスを付けてるのですが、智子の夫で視覚障害者である明俊(小市慢太郎)と雅哉と他2名に、自分のガイダンスに対する意見を言ってもらうんですが、雅哉にめちゃめちゃダメ出しされます。

情報が多過ぎるっていうのと、主観が入り過ぎてるって言われるんですが、雅哉のつっけんどんな言い方もあって、美佐子はみんなのためを思ってと言い返しますが、上司の智子からは逆にああいう風にダメ出ししてくれるのは貴重だと言われます。
みんな遠慮してホントのこと言わないからと。

確かに序盤の美佐子のガイダンスは素人目から聞いても息が詰まる感じです。

雅哉は元々はプロのカメラマンで風景の写真集なんかも出してる一流カメラマンだったんですが、段々目が見えなくなってきてます。
まだ視力を失うことを受け入れられなくて、美佐子にも厳しく言ってしまったのですが、自宅でも拡大読書器を壊してしまいます。

ある日、美佐子が雅哉の家に拡大読書器を届けに行くと、お茶飲んでってと言われ、家に上がらせてもらいます。
雅哉が牛乳こぼしちゃったので美佐子が床を拭いてると、ゴミ箱に捨ててある結婚式の招待状を見つけて「間違えて捨ててありますよー」と雅哉に言います。
雅哉が「あー、それはいいんだ」と言うと、美佐子は「でも、行った方がいいんじゃないですか」とか言います。

うん、押しつけがましい女。

空気が読めないっていうんですかね。

普通、親しい間柄でも無いのにそんなこと言うか?って思うんですが、美佐子がそういう女なんで、もう映画に全然ノレないんですね。

雅哉からも音声ガイダンスの仕事に向いてないと言われますが、私もその通りだと思いました。

そんなことがありつつもその日は写真集見せてもらったり、焼きそば作ってもらってごちそうになったりします。

美佐子には、実家に一人で住んでるボケつつある母(白川和子)が居るんですが、たまに母から大量のファックスが入るんでそのたびに実家に帰ります。
普段は近所の人が面倒を見てくれてるんですが、たまに帰ると「美佐子ちゃんはえらいねー、それに比べてうちの娘は」とか言われますが、ボケつつある母を施設にも入れないで、何でエライんだろう?と思います。
視覚障害者用の仕事をしているからか?

美佐子は死んだ父のことがトラウマになっていて、最後に持っていた財布を小銭に至るまで大事に取っていて、中に入っていた会員カードなどを含め全て覚えています。
その中に父と夕陽を背景にして撮った写真があって、それが心の拠り所になってるのですが、雅哉の写真集の中にそれを思わせる夕陽の写真を見つけます。
(あー、このインタビューを読むと父は死んでるんじゃなくて、失踪してるのか)

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美佐子は音声ガイダンスをより良いものに仕上げるために上司の智子に小林監督を紹介してもらって話を聞きに行きます。
小林監督はその作品に重三役として出演もしてて、監督としての作品に対する思いや、重三という役に対する思いなどを聞くんですが、美佐子はガイダンスに自分の主観を入れようとするんですね。

例えば、「その表情は希望に溢れていた」みたいな。

重三の最後の表情は希望であって欲しいっていう、勝手な思い込みからなんですが、監督からするとそんな単純なことでは無いんですが、それも監督に押し付けるので、美佐子にはあきれるばかりです。
監督もめんどくさくなっちゃって、適当に美佐子をあしらいます。

ちなみに藤竜也さんの劇中映画の役名の重三ですが、龍三にしてくれたら面白かったのになぁと思います。

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監督へのリサーチも終えて、2回目のダメ出しをしてもらう会。

1回目よりスッキリしてよくなってきたとの声。
ただ、一人の女性から、美佐子はこの映画から何を感じ取ったか聞かれます。
うまく答えられない美佐子。
その女性からは、私たちの想像力は凄くてその映画の中に入っちゃうと言われます。
遠回しに、まだガイダンスに気に入ってない感じが窺えます。

雅哉からは「ラストシーンのガイダンスは削除したまま入れないのか?」と聞かれます。
美佐子は「そこは考えた末、みなさんの想像力に委ねようと…」と答えます。
すると雅哉が「逃げるのか?」と言います。
美佐子もムキになって言い返し、雅哉に想像力が無いんだみたいなことを言い出します。

いや、ホンマ、ひどいでこの女。

ただ、物語的には、ラストシーンのガイダンスはどういう風にするんだろう?ってトコに向かっていく映画だと分かります。
この劇中映画のガイダンスを完成させるというのがメインのお話ですね。

雅哉は半年ぶりにカメラマン仲間の山田(大西信満)他1人と居酒屋で会います。
雅哉が今何やってんの?と聞くと、2人は、いやグラビアばっかりだよーと、グラビア写真家を下に見るような発言をするので、監督がそう思ってるんだなぁというのが感じられます。

雅哉はもう撮らないの?とか聞かれて、いやー、もう俺は見えないから撮れないよ、みたいなやり取りがあって、そういえばこないだ雑誌の表紙になったと山田が一流雑誌を取り出します。

雅哉がどんな写真なの?って聞くんですが、山田も写真の説明を主観的にしようとするんです。

普通だったら、屋久島のマングローブの原生林の中で天気は曇り気味で女優の誰々に白い麻のワンピース着せて座らせて、とか説明すると思うんですが、美佐子にしても山田にしても主観的に語らせるので、逆に主観的に語られることへのアンチテーゼなのかな?と。

いや、最近、テレビのニュースや報道とかを見てても、事実を淡々と伝えるのではなくて、キャスターだったり解説者だったりの主観で伝えられることが多いじゃないですか。
だから、そういったことへのアンチテーゼなのかなぁ?とか思ったりしました。

ちょっと、百聞は一見に如かずになんだから、この人(登場人物)たち説明下手過ぎない?と思ってしまって…。

そして、ここからがまた酷いんですが、雅哉が居酒屋出て帰ろうとすると、酔ってるのと、まだ白杖使ってないこともあって、足元がおぼつかないんですが、歩道にぶちまけられてたゲロに足を取られて転んでしまうんですね。

それで、そのときに持ってたローライフレックスのカメラを落としてしまうんですけど、何者かに持ち去られてしまうんです。

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ただ雅哉はまだ弱視の状態だったので、持って行った人物の靴だけ見えたんですね。
それは赤い靴だったんですけど、盗んだのは山田なんです。

気付いた雅哉が取り返しに行くんですけど、友達なのに酷くないですか?
転んでゲロまみれになってるのを助けないどころか、カメラ盗んでくなんて。

もうこの辺の鬱展開でげんなりするんですよねぇ、この映画。
なんだろう、社会は悪意に満ちている、ということを言いたいんだろうか?
いや、まあ、そうなんですけど。

このあと、美佐子は山田からカメラを取り返して出てきた雅哉を偶然見かけて(っていうかこの映画、美佐子が偶然、雅哉を見かけることが多いんですけど)、雅哉の葛藤を知って心を通わせていくんですが、公式サイトにラブストーリーって書いてあるんですけど、これが分からない。

美佐子は雅哉に夕陽の写真を撮った場所に連れてってもらうんですが、そこでカメラを投げ捨てた雅哉にキスするんですけど、これが分かりません。
雅哉がカメラを捨てたのは分かります。
視力を失う覚悟が出来たっていうか、受け入れるっていうか。
ただカメラを捨てることは無いと思いますが、それこそカメラマン仲間にあげればいいのにと思いましたけど、映画的に分かりやすい表現だからいいです。

ただ、美佐子が雅哉にキスするのが分からない。
今までそういう雰囲気ないですから。
今まで厳しかった人の弱さを知って、コロッといったか?
いわゆるギャップっていうやつ。

うーん、でも愛情というより同情にしか見えない。

なんか作品全体を通してもそうなんですが、哀れんでる感じしか伝わってこないんです。

物語はあと、いよいよ母ちゃんがボケちゃって、失踪騒ぎが起こってという話が挟まり、それが父ちゃんと夕陽の写真を撮った場所で見つかったというものなんですが、母ちゃんも父ちゃんがそこに戻ってくると思ってたという。
そこで一応、母娘の父への執着が片付くって感じでしょうか。

このエピソードは物語的に無くてもいいような気がするのですが、この話が無いと森が撮れないのと、河瀬監督の生い立ちがそうみたいで、わりと他の作品でもこのテーマやってるみたいなのでライフワークなのかなと思います。

映画はオープニングのシーンに戻って、そこが完成披露試写会みたいになってたんですね。
劇中映画の小林監督の映画が上映されるんですが、音声ガイダンスが樹木希林さんになってるんです。

てっきり音声まで美佐子の担当だと思ってたんですが、書くとこまでだったんですね。

それで、樹木希林さんのガイダンスは、やっぱ上手えーってなります。
樹木希林スゲーって、思うだけの映画なんですが、ギャラ、タダみたいです。

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タダでこのクオリティって、お金もらってやってる人の立つ瀬が無くなっちゃうんじゃないかと、要らん心配をしてしまいます。

映画はラストのガイダンス
「佇む重三の視線の先には一筋の光」
みたいなことを言って終わります。
ちょっと違うと思いますけど、きちんとしたナレーション忘れました。
だから私の主観入ってると思います(笑)

ただ、ラストはタイトルにかかってくるんだな、上手いなと思いました。
落語みたいにスッと落ちてきました。
北野武監督の『HANA-BI』の「ありがとう、ごめんね」みたいだなと思いました。

映画はですね、永瀬正敏さんの目の見えない感じの演技は凄いなと思いました。
カメラマンというビジュアルを職業としていた人が、視力を失っていくことへの葛藤が伝わってきました。
ちょっと、つんく♂さん思い浮かべました。


水崎さんの役は、ああいう役だから仕方ないと思います。
樹木希林さんの記事にあるように「河瀬さんはもともと勘違いしているところがあるから」っていうところを美佐子の役に反映させたのかなと。

あと、映像がですね、非常にアップが多かったんですが、これあまり好きになれなかったですね。

https://mainichi.jp/articles/20170524/dde/012/200/004000c

永瀬正敏&水崎綾女、河瀬直美監督『光』クランクアップで魂の涙「終わっちゃったな」 | cinemacafe.net
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上の記事を読むと、昨年のカンヌにも短編の審査員で訪れていて、そのときには脚本出来ていて、キャストとかロケ地決めたのがその後みたいですが、撮影が2016年10月16日から11月14日まで行われたみたいですが、これ完全に去年のグザヴィエ・ドラン監督のグランプリ受賞作品『たかが世界の終わり』に影響受けてないですかね?

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自分はこの作品、非常に評価低いんですが、映像的には似てたと思います。

アップだからダメという訳ではないんですが、心情が撮れてなかったように感じました。
光の射し込み具合とかは綺麗だなと思いましたけど、ただそれだけです。

最初に書いたように河瀬監督作品は『あん』しか見てなくて、それはとても面白かったんですが、ドリアン助川さんの原作があったからよかったのかなぁ。
まあ、樹木希林さんと市原悦子さんのタッグが強烈だったというのもあるんですが、本作は、おや?っていう部分が多くてノレませんでしたね。

音声ガイダンスの制作っていう着眼点は面白いと思うんですけど、言葉を定義するっていうのでは『舟を編む』ていういい映画があるしなぁと思いました。

鑑賞データ

丸の内TOEI ファーストデー 1100円
2017年 86作品目 累計91500円 1作品単価1064円

コメント

  1. 映画「光」を観て | Procの日記 より:

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