誰のせいでもない 評価と感想/心情の機微を3Dで映すチャレンジ

誰のせいでもない 評価と感想
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巨匠ヴィム・ヴェンダース先生! ☆4点

予告編

映画データ

誰のせいでもない (2015):作品情報|シネマトゥデイ
映画『誰のせいでもない』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:近年『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』などのドキュメンタリーを手掛けてきた、ヴィム・ヴェンダース監督によるヒューマンドラマ。
http://cinema.pia.co.jp/title/170042/

あらすじ

冬の夕暮れ。田舎道を走る一台の車。雪が降り、視界は悪い。
突然、丘からソリが滑り落ちてくる。車はブレーキをきしませて止まる。静寂。
そこには車の前で虚ろに座り込んでいる幼い少年がいた。幸い怪我もないようだ。
ほっとしたトマスは彼を家まで送る。
しかし、母ケイトは息子の姿を見て半狂乱になる…。
運転していたのは、作家のトマス。この悲劇的な事故は、彼の過失によるものではない。
弟のあと少しの注意を払うべきだった小さなクリストファーの責任でも、そしてまた、もっと早く家に帰るように息子たちに言えたはずのケイトの責任でもない。
事故はトマスの心に大きな傷を残し、そのせいで恋人サラとの関係は壊れてしまう。
トマスにできることは、ただ書き続けることだけ。
しかし、他人の悲しみをも含んだ自らの経験を書く権利が、彼にあるのだろうか?
ようやく書き上げた小説は、トマスに新しい扉を開かせることになった。

月日が流れ、やがてトマスは作家として成功を収め、編集者のアンとその娘ミナと新しい生活を始めようとしていた。
一方、ケイトやサラもまた、それぞれの人生をゆっくりと歩み始め、すべてはうまく行き始めたように見えていた。
そんな中、11年前に5歳だったクリストファーから、トマスのもとへ一通の手紙が届く…。

公式サイトより引用)

ネタバレ感想

7年ぶりの新作だそうで、前作『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』に引き続き3Dだそうです。前作は見てないので先生の3Dならばと観てまいりました。

先生の作品を映画館でみるのは『ミリオンダラーホテル』以来です。

といっても作品自体それほど見てなくて『パリ・テキサス』『ベルリン・天使の詩』『夢の涯てまでも』『時の翼にのって/ファラウェイ・ソークロース!』くらいです。

日本では2D版と3D版の上映があるようですが、もちろん3D版で見てまいりました。

が、結論からいうと3Dでなくてもよかったかなと。

物語が静かに流れる人間ドラマですので、何かが飛び出るとかそういうのは無くて、少し奥行きを感じられるくらい。

監督自身もそういうのは狙ってなくて、「感情を、心の奥底を、3Dで描き出す」ということのようです。

たしかに、ちらちら降る雪のシーンや研ぎ澄まされたような風景の描写は凄く綺麗でしたが、これ4Kカメラでも狙った効果出るんじゃないかな?と思いました。

考えてみると先生は新しいテクノロジーを積極的に取り入れてるんですよね。
『夢の涯てまでも』のときはNHKの全面協力でハイビジョンで撮りましたし、そのうち4Kや8Kでも撮るんじゃないかと思いました。

物語の方は、これといって何も起こらないので、つまらないです。

先生はノルウェーの作家、ビョルン・オラフ・ヨハンセンのオリジナル脚本の罪悪感と赦しというテーマに興味を惹かれたようですが、何ていうんですかね、こういう「業(ごう)」といいますか、原因があって結果がある、といいますか、そういうのを描いていたと思います。

3D技術の新たな扉は演技と物語に開かれている―ヴェンダース監督が語る『誰のせいでもない』 - webDICE
ジェームズ・フランコ&シャルロット・ゲンズブール主演、「罪悪感」を描く人間ドラマ

それまで芽の出なかった作家トマス(ジェームズ・フランコ)は、不可抗力とはいえ、明らかに子供を轢いて死なせてしまってから、作家として大成するんですよね。

トマス自身は基本的には自分中心の人間で、自分はとにかく小説を書いていれればいい、という人です。
事故を起こした当時付き合っていた彼女のサラ(レイチェル・マクアダムス)のことは全く思いやれず、サラとは別れて作家として大成して、連れ子のいる女性編集者アン(マリ=ジョゼ・クローズ)と結婚しても変わりません。

トマス自身は変わってないんだけど、子供を死なせてしまった罪悪感や自身のスランプから自殺未遂を起こしたりことが、結果として自分の書く作品に深みを与えているけど、それには気づいてなく、自分の才能で大成したと思ってます。

トマスは演奏会でたまたま10年ぶりくらいにサラと再会しますが、暫く二人で話をしてるとサラにビンタされます。
これはトマスが変わってないからです。

トマスは轢いてしまった子供の家族のためなら何でもすると言っておきながら、その子供のお兄ちゃんが助けを求めてきた際には自分の原稿を優先して無碍にします。
少年の母(シャルロット・ゲンズブール)に言われて会いますが、親身になってるとは言えません。

お兄ちゃんがトマスの家に不法侵入の上、ベッドに小便をかけるという事が起こって、ようやく事態の深刻さに気付きます。

そしてお兄ちゃんにこう言われます。
「弟が死ぬ前と死んだ後では、あなたの小説は明らかに違う」と。
「弟が死ぬ前のものは見るべきものは無かった」と。

サラにビンタされたことや、ここに至ってようやくトマスは変われた気がします。
お兄ちゃんを抱きしめて学校へ送り出し、トマスのアップで映画は終わります。

 

台詞で語る映画ではないので地味なんですが、自分なんかが想像もつかないくらい、カメラの構図とかこだわってると思います。
どこを切り取られても絵画的に美しくなるように計算されていたり、様々な映画的技法が使われているのだと思います。

そういう意味で映像作家を志す人には教科書的な映画な気がしましたし、詳しい解説が知りたいと思いました。

鑑賞データ

ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズカード ハッピーチューズデー鑑賞 1000円+3D料金400円
2016年 131作品目 累計146700円 1作品単価1120円

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