全米公開日が運命を分けた気が ☆2.5点
アメリカ同時多発テロ事件を題材にしたパトリック・カーソンによるオフブロードウェイ舞台『エレベーター』の映画化で監督はアルゼンチン出身のマルティン・ギギ
主演はチャーリー・シーン、共演にウーピー・ゴールドバーグ
予告編
映画データ
本作は2017年9月9日(土)公開で全国で20館弱での上映です。
最終的に30館弱くらいでの公開になるようです。
予告編は新宿武蔵野館で1回だけ見たことあったんですけど、特に見ようという気は起きなくて。
何気にアメリカ同時多発テロの映画って見てなくて、『ユナイテッド93』とか『ワールド・トレード・センター』とか。
唯一見たことあるのがマイケル・ムーア監督の『華氏911』くらいです。
それで見る気無かったんですけど、シャンテでシネマイレージ使って『オン・ザ・ミルキー・ロード』見るか、新宿ピカデリーでクーポン使って『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』を見ようかと思ったんですけど、男女関係ない新宿武蔵野館の水曜サービスデーで本作が目に留まりまして、そういえばチャーリー・シーンだなと思いまして。
それで本作はアメリカでも2017年9月8日(金)公開で全米で425館くらいでの上映なんですけど週末3日間の興収見たら17万ドルなんですよね。
1館当たり400ドルくらいしかいってなくて、アメリカって映画料金7~8ドルくらいですか。
仮に7.5ドルで計算すると1館あたり3日間で53人くらいしか入ってない計算なんでガラガラです。
ロッテントマトを見ても驚異のフレッシュ11%で、腐ってもチャーリー・シーンとウーピー・ゴールドバーグが出てる作品で、この評価と興行成績ということで俄然気になって観に行った次第です。
監督はマルティン・ギギ
初めましての監督さんです。日本公開作も初めてっぽいです。
サントラ手掛けてることも多いっぽいんで音楽畑の人なんじゃないかと思います。
気になる方はこちらをどうぞ。
主演はチャーリー・シーン
本作がHIV告白からの映画復帰作になります。
HIV告白前の最後の映画出演作『マチェーテ・キルズ』も観てました。
共演にウーピー・ゴールドバーグ
ずっとテレビに出ていたようで映画では久しぶりです。
まぁ『天使にラブ・ソングを…』もちゃんと見てないんですが、ウーピーゴールドバーガーはたまに食べに行きます。
共演にジャクリーン・ビセット
8月に『ベイビー・ドライバー』を観たとき『ブリット』を思い出しましたが73歳に見えない美しさでした。
他に共演と配役は以下の通りです。
ジェフリー: チャーリー・シーン
メッツィー: ウーピー・ゴールドバーグ
イヴ: ジーナ・ガーション
エディ: ルイス・ガスマン
マイケル: ウッド・ハリス
ティナ: オルガ・フォンダ
ダイアン: ジャクリーン・ビセット
アンダーソン: ビリー・マローン
あらすじ
2001年9月11日、早朝。ニューヨークのワールドトレードセンタービル・ノースタワー内。二人の男女が、とある弁護士事務所で離婚調停中だ。夫のジェフリー(チャーリー・シーン)は、ウォール街の億万長者。家庭より仕事優先で世界中を飛び回っていた。17年連れ添った妻イヴ(ジーナ・ガーション)は、そんな身勝手な夫に失望し、離婚を決意。離婚したくないジェフリーは必死で妻を説得しようとするが結局は口論になるばかり。
バイクメッセンジャーのマイケル(ウッド・ハリス)、美しく着飾ったティナ(オルガ・フォンダ)、ビルの保全技術者のエディ(ルイス・ガスマン)、そしてジェフリーとイヴの5人は偶然同じエレベーターに乗り合わせる。
突如、ビルに正体不明の飛行機が激突し、彼らは北棟の38階辺りに閉じ込められてしまう。外部との唯一の通信手段はインターコムを通じて話せるエディの同僚でオペレーターのメッツィー(ウーピー・ゴールドバーグ)だけ。彼女からアドバイスを受けながら脱出の方法を探るエディたち。
彼らは、崩れ落ちるビルと恐怖と闘いながら外への逃げ道を探す。そんなとき、奇跡的にイヴの母ダイアン(ジャクリーン・ビセット)から電話が鳴り、イヴは自分たち夫婦が閉じ込められたことを伝える。やがて5人は極限状態の中、それぞれの人生を振り返る。
改めてイヴの存在の大きさを感じたジェフリーは、イヴに約束をする。
「二度と淋しい想いはさせない」
そんな彼らが極限状態で下した決断とは──。(公式サイトhttp://nineeleven.jpより引用)
ネタバレ感想
感想は、うーん、やっぱり元が舞台っていう作品ですね。
予算も無いでしょうから90分の上映時間中の殆どがエレベーターの中で、外側から飛行機が突っ込む映像とかは実際の映像を使えばいいわけで、そういう意味でいえば9.11映画なんですが、エレベーターの中のやり取りを見てると必ずしも9.11じゃなくてもよくて、そういうシチュエーションで繰り広げられる密室劇になってます。
ジェフリーは離婚調停が不調に終わってイヴのご機嫌をとるためにエレベーターで下まで送ってこうとするんですね。
でも止まったのが上行きで間違ってエレベーターに乗ったのが運の尽きとなります。
バイクメッセンジャーのマイケルは届け物、ティナはかなり年の離れたパトロン(何階にいるかは明かされません)に別れ話をするためにエレベーターに乗ってました。
ビルの保全係のエディは35階から乗ってきてトイレの詰まり物を確認したあとだったような気がします。
で、エディがエレベーターに乗ってすぐ1機目の飛行機が激突して37階と38階の間くらいに止まってしまいます。
エレベーターのインターホンも通じなくてしばらくは状況が分かりません。
携帯電話も通じません。
エレベーターのドアを開けようにもロックが掛かってて少ししか開かず、エレベーターの上から出ようとしますが蓋が開きません。
これ観てるとエレベーターの天井の蓋を開けようとするのに、太っていて背の低いエディをみんなで持ち上げるんですが、保全係だからといって特に技術があるわけじゃないんですね。
マイケルが「用務員か」というのですが実際そうで、この場合エディより痩せていて背の高いマイケルかジェフリーがやった方がいいのになぁと思って観てます。
しばらくするとインターホンが回復して、メッツィーとやり取りできます。
このときはまだ小型機が激突した事故だと思われていました。
エレベーターが全機停止していて消防士が90階まで階段で上がって消火活動をしなければならないので救出はかなり遅れるとのことでした。
エディはエレベーターのドアのロックの解除方法が分からないので、近くにエレベーター責任者のフランキーがいないかメッツィーに聞くんですが、1機目の激突を確認に行ったまま戻ってこないと言います。
そうするとエレベーターの中ではすることが無いので身の上話を始めます。
映画のイントロダクションを読むと
本作は、歴史の分岐点でもある大事件を題材にしながらも、パーソナルな物語にフォーカスすることで、現代の世界が抱えている問題──自国主義、テロリズム、人種、移民、経済格差、性差別といったことから、家族の愛という人間の深部までを浮き彫りにしていく。たくさんの約束が守られず、果たされなかった日。だからこそ、本当に大切な人に気づく瞬間を鮮烈に活写させることで、単なる映画としてだけでなく、犠牲となった人たちの想いを掬いあげる時間へと昇華させた、魂に語りかける人間ドラマとなった。
とあって、それが本作のテーマというか肝なんですが、却って脱出に対する必死さを失わせてて緊張感やリアリティに欠ける展開になってしまいました。
まずエディがウォール街の風雲児と呼ばれたジェフリーに気付いて金持ちでいいなぁと羨ましがるんですね。
エディはビルの保全係この道一筋20年ですがギャンブル狂でいつでも金欠です。
結婚してて娘もいて大学に行かせてあげなきゃならないんですが、この期に及んでも競馬で1発逆転してやるとか言ってるんで全然話にノレないんです。
おまけにメッツィーとのやりとりが「100ドル返してね」なのでいい話なんだか悪い話なんだか…。
マイケルはこの日が子供の誕生日でお祝いもそこそこに切り上げて仕事に出かけてきたんですけど、そんな日にエレベーターに閉じ込められてと悪態をつきます。
膝を悪くしながらこの仕事をやっているのでエディと同じようにジェフリーを羨みます。
白人の金持ちと、黒人とヒスパニックの低所得者という構図です。
そのうちこの2人の羨みが妬みに変わってくるとジェフリーに文句を言い始めます。
するとイヴが反論して「ジェフリーも元は貧しかった、大変な努力をして今がある」と擁護するんですが、あんたら離婚するんじゃないの?となります。
で、そんなんやってるうちに2機目が激突してこれは故意だろってことになって慌て始めます。
相変わらずエレベーター責任者のフランキーの行方が分からないのですが、ジェフリーがエレベーター責任者が必要なのではなくロックの解除の方法さえ分かればいいと言うと、エディがエレベーター管理室にエレベーターのマニュアルがあるのを思い出して、メッツィーに取りに行ってもらいます。
そんなんやってる間にイヴの電話が繋がって電話がかかってきます。
かけてきたのはイヴの母親のダイアンでワールドトレードセンターのエレベーターに閉じ込められてることを伝えるのでした。
マイケルとエディも自分の家の電話番号と妻の名前を伝え、家族に連絡してくれるようダイアンに頼みます。
メッツィーがビルの管理室からエレベーターの管理室まで行って戻ってくるのにしばらく時間かかるっていうんで、今度は声を出せば助かるかもってことでみんなで助けてと声を張り上げるんですが、いまさら感が否めません。
メッツィーがマニュアル抱えて戻ってくると、こういう(説明書き)のはよく分からんと言ってロックの解除方法が図解してあるのを言葉で説明するんですが、何とか伝わります。
エレベーター扉の左上の小さなシリンダー状のロックを解除すればいいと分かると、扉の隙間から手を伸ばすんですが、これも背が低くて手足の短そうなエディにやらせるのでマイケルの方がいいんじゃないかなぁと思って観てます。
エディは案の定レンチを落として、ドライバーで仕切りなおすとロックが解除されます。
扉の外の壁は運よくモルタルの壁になっていてハンマーで破壊でき、壁の向かうは用具置き場になっていました。
ここはエディ、マイケル、ジェフリーと男たちが代わり替わりにハンマーを打ちつけると人ひとり入れる穴が開きます。
レディファーストでティナとイヴを先に穴から脱出させようとするんですが、ティナが動けなくてイヴが先に行きます。
イヴが穴から脱出しようとしてるうちにエレベーターを支えるワイヤが切れ始めて、結局脱出できたのはイヴだけでした。
ワイヤが全部切れそうなので、イヴはロビーに助けを呼びに行くと言います。
ジェフリーが最初にエレベーター止まったときに、80階からエレベーターの籠が落ちた事故で助かった女性がいた話をしてて、その人は床に寝ていたということで、皆仰向けに寝ます。
お約束通りワイヤが全部切れると37階から一気に1階(ロビー階)まで落ちます。
が、安全装置のブレーキが効くのでいくらかソフトランディングです(皆ちょっと血が出る怪我をしますが)。
メッツィーはエディを呼びかけますがこの頃になると当然のようにインターホンも繋がらなく、メッツィーのいる管理室にも消防士が来てビルが崩落するから撤退しろと言われます。
1階に降りたイヴは砂埃が舞い視界の悪い中、ロビーのエレベーターの中に人が閉じ込められてると助けを求めます。
2人がかりで負傷者を助け出していた消防士の一人アンダーソンがロビーのエレベーターホールに回ってくれると、声がするエレベーターを器具を使ってこじ開けます。
数人助け出されますが、ジェフリーたちではありませんでした。
イヴが他のエレベーターに回ると僅かに声がします。
アンダーソンに器具でこじ開けてもらうとジェフリーたちでした。
エレベーターの籠は1階より半分くらい地下に下がって停止しています。
ティナ、マイケル、エディの順で助け出すと籠が下に落ち、籠の中が僅かに見えるだけでもう人が通れそうにもありませんでした。
ジェフリーは覚悟を決めて「君たちだけでも逃げろ」と言います。
みんなを避難させると消防士のアンダーソンが戻ってきます。
エレベーターの天井のハッチからジェフリーを引き上げて助けようとします。
ジェフリーの腕をしっかり掴み、引き上げようとしたところで大きな崩落が起こり映画は終わります。
うん、アンダーソン、かっけーという映画でした。
なので『ワールド・トレード・センター』でいいじゃんと思ってしまいました。
なんか本来は緊迫してる状況なのに、ジェフリーによくジョークを言わすんですよね。
ティナもエディに「ずっと私を見てたでしょ、気持ち悪い」みたいなこと言いますし、シリアスなんだかふざけてるのかよく分かりませんでした。
ダンケルク撤退戦ではそういう描写無いですからね。
ずっと緊張を強いられる胃がキリキリする展開を強いられますが、本作もそれでいいと思うんですが。
うーん、よかったのはティナ役のオルガ・フォンダが凄い美人だったくらいですかね。
役柄的には金持ちの愛人で、結局自分は何も持ってないことに気付いて自立しようと思い、別れ話に行こうと思ってということなんですが、相手の事とか何も掘り下げられないので、無くてもいい役だったような気もします。
しかし、興収17万ドルってヤバくないですかね。
9月8日の週ってバカ当たりしている『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』が公開された週で、1位が1億ドル超えに対し、2位が900万ドル、3位が500万ドル弱と完全に1強なのですが、それにしても運が悪い。
9月8日公開なので9.11に合わせて公開されてるのは明らかなんですが、当のアメリカが忘れちゃってるのかな?
鑑賞データ
新宿武蔵野館 水曜サービスデー 1000円
2017年 153作品目 累計163700円 1作品単価1070円
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