自分も男ですけど、男死ねと思いましたね ☆4.5点
予告編
映画データ
TOHOシネマズシャンテで度々予告編を目にしていて、行こう行こうと思ってたんですけど、1月27日の週から『ドクター・ストレンジ』とか『スノーデン』とか『マグニフィセント・セブン』とか、続々と公開されて追っつかなかったんですけど、もう4週目に入るってときにやっと角川シネマ新宿で観れました。
とってもよかったです。
あらすじ
1912年、ロンドン。劣悪な環境の洗濯工場で働くモードは、同じ職場の夫サニーと幼い息子ジョージの3人で暮らしている。
ある日、洗濯物を届ける途中でモードが洋品店のショーウィンドウをのぞき込んでいると、いきなりガラスに石が投げ込まれる。女性参政権運動を展開するWSPU(女性社会政治同盟)の”行動”の現場にぶつかったのだ。それが彼女と”サフラジェット”との出会いだった。
同じ頃、女性参政権運動への取り締まりが強化され、アイルランドでテロ対策に辣腕をふるったスティード警部が赴任してくる。彼は歴史上初となるカメラによる市民監視システムを導入し、無関係だったモードもターゲットの1人として認識されてしまう。
やがてモードに大きな転機が訪れる。下院の公聴会で証言をすることになったのだ。工場での待遇や身の上を語る経験を通して、初めて彼女は”違う生き方を望んでいる自分”を発見する。けれども法律改正の願いは届かず、デモに参加した大勢の女性が警官に殴打され、逮捕された。そんな彼女たちを励ましたのが、WSPUのカリスマ的リーダーであるエメリン・パンクハーストの演説だった―。(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
物語は20世紀初めのイギリスで女性参政権を求めて闘った人たちの話で、キャリー・マリガン演じるモード・ワッツって人が主人公の話なんですけど、このモード・ワッツって人が歴史的に有名だとか、この運動のリーダーとかではないです。
実在した人かどうかも分からないんですけど、もしかしたら映画用のキャラクターかもしれません。
モードは24歳の女性で洗濯工場で働いてるんですけど、同じく洗濯工場で配達の仕事をしている夫サニー(ベン・ウィショー)と4~5歳くらいの男の子がいます。
モードは当初、婦人参政権の運動には興味なかったんですね。
運動に参加してる女性の中には過激な人もいて、街でお店のショーウィンドーを割ったりしてて、そのせいで迷惑を被ったりして、わりと冷めて見てたんです。
モードは洗濯工場で班長だったんですけど、新しく入ってきた女性バイオレット(アンヌ=マリーダフ)が3週間のうち2回遅刻して工場長に怒られてたのを庇ったことで知り合います。
モードは工場長に気に入られてたから出来たんですけど、理由は後で分かります。
バイオレットが遅刻した理由は運動に参加してたからで、バイオレットには12歳くらいの娘がいて、その子も洗濯工場で働いてます。
それで婦人参政権について議会で公聴会があるから行かないかと誘われて、当初は断ってたんですけど聴くだけならということで行きます。
すると、その日、公聴会で話す予定だった女性が欠席し、その女性の手紙を代読する羽目になるんですけど、公聴会での席に座ったら手紙を読むんじゃなくて、自分のことを話せばいいと言われて自分のことを話すんですが、それがもう聞くも無残な女工哀史なんです。
モードのお母さんも洗濯工場で働いていて、モードは生まれも育ちも洗濯工場なんです。
お父さんはいなくて、お母さんは4歳のときに死んで、7歳から工場で働いて12歳で社員みたくなって17歳くらいから班長みたいなことやってるんですね。
洗濯工場の仕事はきつくて肺をやられる女性も多くて長生きできないといいます。
男性も働いてるけど、男性は配達が中心でラクな仕事なのに給料は女性の1.5倍くらい。
ただ、夫も子供もいて仕事もあって満足してるみたいなことを言うんですけど、聞いてる議員とか出席してる人々の心を打つんですね。
モードはそれが普通だと思ってたので周囲の反応に驚くんですけど、同時に自分の話がウケたことに喜ぶんですね。
ただ普通だと思ってたモードにも辛い過去があってそれには蓋をしてたんですけど、工場長がバイオレットの娘にセクハラしてるのを見て思い出すんですね。
自分も同じようなことをされてきたことを。
世間を知らなかったモードは工場で生きていくことが全てでしたし、男性には従うものだと思ってましたし、工場長とのことは嫌だったけど自分が我慢したら済むし、それで今の立場(ある程度、工場長に物を言える)もあるんだけど、女性にも参政権がある世の中だったら、今とは違ったのかな?と考えるようになります。
モードは公聴会の反応が良かったことと、自分の心に蓋をしてたものが少し外れたこともあって、初めてデモに参加します。
そのデモには警察に追われてる婦人参政権運動のリーダーであるエメリン・パンクハースト(メリル・ストリープ)が久々に顔を見せることも、動機の一つでした。
ただ運悪くこのデモに参加してたモードは逮捕されてしまいます。
拘留は5日間に及び、運動に参加したことが夫や工場に知られ白い目で見られるようになります。
しかし、このことが却ってモードを運動にのめり込ますことになります。
警察は法を盾に運動を取り締まろうとしますが、理不尽さが募るばかりでした。
後日、議会前で、公聴会での意見を検討した結果が発表される場に集まります。
公聴会での反応がよかったことから、婦人参政権が与えらえると期待してましたが、結果は変わりませんでした。
落胆した人々が中々帰らないのを強権をもって退散させようとする警察にモードは再び逮捕されてしまいます。
公聴会での高揚と結果への落胆。理不尽な警察の対応にモードは留置場でハンストを決行します。
ハンストで死なれて、運動の殉教者のようになったら困るって理由で釈放されて家に帰ると、夫は子供を養子に出すところでした。
夫の理解も得られず、子供も失ったモードは、だんだんと過激な運動に身を投じていくことになります。
人通りの無い、朝の早い時間に郵便ポストを爆破したり、公聴会でいい反応を見せていた議長の建設中の別荘を爆破したりします。
すると、今度は逮捕される代わりに警察が接触してきて、スパイになるよう持ち掛けられます。
運動の取り締まりの先頭に立っているアーサー・スティード警部(ブレンダン・グリーソン)は、言葉巧みにモードにスパイになるよう持ち掛けますが、言ってる論理は男社会中心そのものでした。
もう、男の言い分にはいいくるめられないと、決意を強くしたモードはスパイの誘いをきっぱりと拒否する手紙をスティード警部に送ります。
工場もクビになりますが、かつての自分を見てるようなバイオレットの娘を残していけないと、彼女も連れていきます。
運動推進派の議員の奥さんにお手伝いさんとして雇ってもらうことで彼女を救います。
議会に働きかけても事態は動かないし、過激な運動にも限界があるってことで、考えたのが国王への直訴でした。
ちょうどその時の国王ジョージ6世(今のエリザベス女王のお父さんで『英国王のスピーチ』の人ですね)が、ダービーに出席するんで、そこで直訴しようと。
今まで行動を共にしてきた、イーディス・エリン(ヘレナ・ボナム・カーター)とエミリー・デイビソン(ナタリー・プレス)とエプソム競馬場に集まろうってことになるんですが、イーディスが来ません。
イーディスは夫婦で運動推進家だったんですが、夫がさすがにこれ以上危険なことはさせられないとイーディスを監禁しちゃったんですね。
なのでモードとエミリーで行動することになるんですが、最初はパドックで国王に接触を試みるんですが、関係者以外立ち入り禁止で締め出されてしまいます。
と、同時にスティード警部も二人のたくらみに気付いて、エプソム競馬場に追ってくるのですが、エミリーがとった行動は競走中のジョージ6世の持ち馬アンマー号の前に出るというものでした。
自分、競馬は結構好きなんですが、イギリスダービーの歴史の中でこういったことがあったのは知らなかったので、これが知れただけでも、この映画を観てよかったと思いました。
映画はここで終わり、実際のエミリー・デイビソンの葬儀の模様が流れます。
結果、エミリーの死が大きなうねりとなって、イギリスでは1918年に30歳以上の女性限定で参政権が認められ、1928年に男女平等に21歳以上で参政権が認められた旨が記されてました。
それから各国の女性参政権が認められ年が記されてましたが日本は出てこなかったです。
2015年のサウジアラビアが一番最後でした。
この映画を観てると、最初はモードと同じ目線で過激な社会運動には冷めた目で見てしまうんですよね。
過激で攻撃的な行為には全く同意できないのですが、モードのような女性が受けた理不尽な仕打ちを見てると、だんだんとやむを得ないかなと思いました。
テロ行為は許せないですけど、歴史的に見れば女性参政権を勝ち取ったこの運動は革命だと思いました。
だいたい女性に参政権を認めなかったのは、女性は気分屋でヒステリー持ちで、みたいな事がはじめの方のシーンで言われてたんですけど『ヒステリア』思い浮かべましたね。
ホント理不尽なこと極まりないです。
とにかく、この映画観てたら、自分も男ですけど、男死ねと思いました。
鑑賞データ
角川シネマ新宿 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2017年 24作品目 累計20200円 1作品単価842円
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