ほとばしるエネルギーが凄い ☆5点
予告編
映画データ
あらすじ
琴子(Cocco)は世界がふたつに見える。ひとつに見えるのは歌っているときだけだ。琴子には幼い息子・大二郎がいる。日常は予測できない恐怖に満ちている。息子を守ろうとするあまり強迫観念は肥大化し、琴子は現実と虚構の狭間を彷徨いはじめる。そして世間から幼児虐待の嫌疑をかけられ、愛する息子と引き離されてしまう。そんなある日、田中(塚本晋也)と名乗る男が突然、琴子に声をかけてくる。彼女の歌と、歌う姿に魅了されたという田中と一緒に暮らしはじめ、世界はひとつになると思えたが……。
(MovieWalkerより引用)
ネタバレ感想
テアトル新宿にて4月28日犬童一心監督とのトーク回と5月9日リリーフランキーさんとのトーク回を観に行きました。
塚本作品は初鑑賞です。
Coccoさんのファンである塚本監督がCoccoさんの世界観に迫りたく作られた作品だそうです(『ヴィタール』でエンディング曲を依頼した経緯もあります)
映画自体はストーリーを追うような感じではなく夢を見ているような映画で、観る人の感性に委ねられる映画だと思いました。
塚本監督の情熱とCoccoさんのエネルギーが、激しく絡み合い昇華した作品だと思います。
人が二人に見えるくだりは、疲弊した現代社会において上辺だけの人間関係を象徴しているように思えましたし、本音と建前を使い分けてる社会そのものとも感じました。
時折挿入される悲惨なニュース(子供が犠牲になる事件)も、まさに現実社会そのもので、子供を愛するがゆえに失うことへの大きな恐怖は、親ならば誰もが感じるのではないかと思います。
映画『セブン』でモーガン・フリーマン演じるサマセット刑事のセリフを思い出しました。
「子供ができた。ずっと昔の話だ。生まれて初めて怖いと思った。こんな世界に子供を?こんな酷い世の中に産むのか?って」
映画は怖いし痛いしグチャグチャですけれども、ハッピーエンドです。
上映後のトークで犬童監督が仰ってましたが、黒澤清監督の作品は怖いのが出てきて、ずうっと迫ってきて、で最後までやっぱり怖いんだけど、塚本監督のはやっぱり怖いのが出てきて迫ってくるんだけど、最後はグチャグチャになっちゃって一緒になって気持ちいい、みたいなことを仰られていて、あぁその感覚分かるわぁ(後日、鉄男と悪夢探偵を見た)と思いました。
そして塚本作品は基本ハッピーエンドだと。
これは塚本監督のポジティブさや優しさがそうさせているのだろうと仰っていて、それがまた観終わったあとにパワーがもらえるのだ、というようなことも仰っていました。
また、100歳になっても自主製作で独自の作家性を失わずに作品を撮り続けられている新藤兼人監督を引き合いに出されて、海獣シアター製作で独自の作家性を失わずに映画を撮り続けている塚本監督を尊敬するし、是非がんばっていただきたいというようなことも仰っていました。
私も同感です。
メジャー作品も良いですが、こういった強烈な個性の作品も多くの方に観て頂きたいです。
塚本監督もこの作品をヒットさせるべく、ツイッターを駆使して自ら広報・宣伝本部長として頑張っておられます。
一人でも多くの方に観て頂けたら幸いです。
鑑賞データ
テアトル新宿 TCGメンバーズ料金 1300円
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