カメラがとにかく素晴らしい ☆5点
予告編
映画データ
ツイッターとか見てたら、何やら評判が良さそうなので鑑賞。
全国で12館くらいの上映で、東京ではシネマート新宿と楽天地シネマズ錦糸町の2館での上映です。
楽天地シネマズ錦糸町は全然行ったことが無く、シネマート新宿(TCGメンバーズカード加入は嬉しい)もたまに行くくらいなので予告編も全く知らずでの鑑賞です。
予備知識としては
・『チェイサー』のナ・ホンジン監督作であること
・連続殺人事件モノであること
・村はずれに住む國村隼さんが怪しいこと
くらいですがチェイサーは観たか忘れました。
あらすじ
平和な田舎の村に、得体の知れないよそ者がやってくる。彼がいつ、そしてなぜこの村に来たのかを誰も知らない。この男についての謎めいた噂が広がるにつれて、村人が自身の家族を残虐に殺す事件が多発していく。そして必ず殺人を犯した村人は、濁った眼に湿疹で爛れた肌をして、言葉を発することもできない状態で現場にいるのだ。
事件を担当する村の警官ジョングは、ある日自分の娘に、殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く。ジョングが娘を救うためによそ者を追い詰めていくが、そのことで村は混乱の渦となっていき、誰も想像てきない結末へと走り出す―(公式サイトhttp://kokuson.com/story.htmlより引用)
ネタバレ感想
まず冒頭からカメラが素晴らしいです。
3年連続アカデミー撮影賞を受賞したエマニュエル・ルベツキにも負けない感じで何者?と思いました。
撮影監督はホン・ギョンピョって方で、未見ですが『スノーピアサー』とか撮られてます。
舞台は韓国の北東部にある谷城(コクソン)郡という田舎なんですが、日本にもありそうな、なんてことない田舎な気もするんですが、ホント景色が美しく撮れてるんです。
最初の2カットくらいでタダモノじゃない感じがあります。
で、事件の方は一家惨殺事件が連続して起こるんですが、家族の中の一人が伝染病みたいな皮膚病にかかって頭おかしくなって殺すんですが、まあ、雨とか泥とか『セブン』ぽい感じもするわけです。
冒頭に聖書の引用もあるので。
で犯人は皮膚病でただれてゾンビみたくなってるんですけど、何でそうなったかの原因を警察は捜査していくんですが、犯人からは毒キノコの成分が出たのでそのせいじゃないかってことになるんですが、それでもあそこまで凶暴にならないだろ、ってなる訳です。
すると、警察の部下が、村はずれの山奥に住む日本人(國村隼)の噂を話すんですね。
山に鹿狩りに行った猟師が、足を滑らせて谷に落ちたときに、猟師が仕留めた鹿を生で食ってたって。
その様子は真っ裸で喰らいついていて、目は赤く光り、鬼のような形相だったと。
だから、たぶん、そいつが怪しいと。
主人公の警察官ジョングはクァク・ドウォンって人が演じてて、ピエール瀧さんみたいな感じでガタイがいいんですけど、わりとビビりなんですね。
警察署で部下が日本人の話をしてるときに雷で停電するんですけど、そのとき玄関の窓の外に例のゾンビみたいな感じの女の人が立っててすごいビビるんですけど、この辺なんかはジェームズ・ワンのホラーみたいな感じなんです。
で、この女の人も一家惨殺して首吊って自殺しちゃうんですが、ジョングが現場保全の警備をしてると、ずっと石を投げてくる女(チョン・ウヒ)が現れ、殺してるとこを見たって言うんです。
そして勝手に現場に入っていって手招きするのでついて行くと女は消えちゃうんですが、現場の裏手に回ると日本人が何かの生肉を貪ってるのを見るんですね。
ただこの後、ジョングの夢オチが結構出てくるんで、観客というか自分としては、國村隼さん演じる日本人が本当に鬼というよりは、よく分からない外国人だから怖いというだけで、未知の者への恐怖っていうか、そういうものの象徴なのかな?と思ったんですね。
なのでこの一家惨殺事件や皮膚病の原因では無いだろうと思って、どうやってストーリーを帰結させるのだろう?って思って観てました。
それで皮膚病の犯人は骨も変形するんで、水俣病とかイタイイタイ病とかの公害の方に話が転ぶのかな?と思ったりしながら観てて(昔、破傷風の映画で『震える舌』ってありましたけど、あれ異様に怖かったのを思い出したりもしてました)、公害から『エリン・ブロコビッチ』みたいな流れになるのかなと思ったんですけど、そっちの方には進まず『エクソシスト』みたいになりました。
ジョングが災いの元は日本人だと決めつけて、村から追い出そうと会いに行ってから、ジョングの娘が皮膚病になってエクソシストみたくなります。
で、それを見た義母が祈祷師(ファン・ジョンミン)を呼ぼうとなって『陰陽師』とかみたいになります。
韓国の祈祷は『水の声を聞く』でもそういうシーンがありました。
祈祷シーンでの銅鑼や太鼓のジャンジャカした音は『バンコクナイツ』を思い浮かべました。
祈祷シーンは訳分かんなかったけど凄い迫力だったなぁ。
あれはアジアのエネルギーといいましょうか、邦画では撮れない感じだなぁ。
日本なら園子温監督かなぁ。
祈祷師は日本人が悪魔だと言って「殺」をかけるんですが、日本人も殺を打つという呪術の掛け合い。
結局、祈祷師が日本人を悪魔だと思っていたのは間違いで、日本人も祈祷師で悪魔を倒しに来ていたことに気付きます。
悪魔は石をずっと投げつけてきた女なんですが、ジョングは家族を救うことは出来ませんでした。
日本人も石投げ女に突き飛ばされてジョングの運転する車に轢かれて死んだはずなのですが生きてて、最後、鬼になって終わります。
祈祷師はジョングの家で惨殺現場の写真を撮っていて、持っているカメラは日本人のと同じ物。
日本人が燃やしたはずの現場写真を持っていて同一人物?ってなります。
『ツイン・ピークス』で言えば片腕の男と小人の関係か?
ふむ、ぐるっと1周回って考えるとツインピークスっぽい感じもします。
なので最初のサスペンススリラーの答えを求めて観ると答えは出ないんですが、それを上回る圧倒的迫力とカメラの映像美で凌駕されます。
上映時間が156分とやや長い気もしましたが、先の読めない展開と説明するのも難しいあらすじは、映画での表現にこそ向いてる気がしますし、ジャンルが次々にシフトしていくカメレオンみたいな映画はめったにお目にかかれれない代物でおススメでございます。
鑑賞データ
シネマート新宿 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2017年 45作品目 累計43000円 1作品単価956円
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