原題は「BODY」です ☆3点
第65回ベルリン国際映画祭(2015年)銀熊賞(監督賞)受賞作品でポーランドの女性監督マウゴシュカ・シュモフスカの作品です。主演にヤヌシュ・ガイオス、マヤ・オスタシェフスカ、ユスティナ・スワラ
予告編
映画データ
シネマート新宿で予告編を見て、ベルリン映画祭受賞作と知り、気になりましたので鑑賞しました。
監督はマウゴシュカ・シュモフスカ
ポーランドの監督さんなので初めましてですね。
マウゴジャタ・シュモフスカという表記もあるみたいで、ウィキペディアを見るとロマン・ポランスキーやアンジェイ・ワイダを輩出したウッチ映画大学の卒業生みたいです。
主演にヤヌシュ・ガヨス
ポーランド演劇界・映画界のベテラン重鎮のようです。
この方もウッチ映画大学で学ばれて在学中に俳優デビューしたようです。
主演にマヤ・オスタシェフスカ
この方もポーランドの有名な女優さんのようです。
アンジェイ・ワイダ監督の『カティンの森』で主役をされてます。
主演にユスティナ・スワラ
素人さんだそうで、痩せてる人を探しててフェイスブックで見つけたそうです。
拒食症ではなかったそうです。
他に共演と配役は以下の通りです。
ヤヌシュ役:ヤヌシュ・ガヨス
アンナ役:マヤ・オスタシェフスカ
オルガ役:ユスティナ・スワラ
ヤヌシュの彼女役:エヴァ・ダルコウスカ
アダム役:アダム・ヴォロノヴィチ
ヤヌシュの助手役:トマシュ・ジエテク
息子を亡くした女性役:マウゴルザタ・ハイェウスカ・クリストフィク
看護師役:エヴァ・コラシンスカ
墓掘り役:ロマン・ガナルチック
隣人役:ヴワディスワフ・コヴァルスキ
あらすじ
父親のヤヌシュ(ヤヌシュ・ガヨス)とその娘オルガ(ユスティナ・スワラ)は母親を亡くし、2人で暮らしている。検察官であるヤヌシュは妻の死後、事件現場で人の死体をみても何も感じなくなっていた。一方、オルガは心を閉ざし、摂食障害を患っていた。母親を失った今、ヤヌシュはそんな娘にどう接して良いか分からず2人の溝は深まっていた。
日々痩せ細っていくオルガを見かねたヤヌシュは彼女を精神病院へ入院させる。そこでリハビリを担当しているのはセラピストのアンナ(マヤ・オスタシェフスカ)。思慮深いアンナは発声練習や感情を出させる練習を積極的に取り入れ、同じ病を患う女の子たちの治療にあたっていた。
ヤヌシュは相変わらず凄惨な事件現場でも冷静に分析をする。女子トイレに新生児が産み捨てられた現場をみたすぐあとにも食事をとり、部下からも怪訝な目で見られてしまう。そんなヤヌシュは、オルガと対照的に太っていくのであった。
とある集会で息子を亡くした女性が語る。「アンナを通して息子から10通の手紙を受け取っている。最初はこんなことが起きるとは信じられなかった。今は心が安らかになった。」 まわりの女性も一様にアンナに感謝している。アンナは霊と交信し、受けとったメッセージを残された人に伝えることを使命としていたのだ。
しかし、アンナにも心にぽっかりと空いた大きな穴があった。息子を亡くしていたのだ。今、彼女を待っているのは大きな犬・フレデクとの暮らしだけ。気丈にふるまっているものの、やはり大きな喪失感を抱えて日々を暮らしていた。
そんな中、ヤヌシュの家では不思議な出来事が起き始める。水が出しっぱなしになったり、部屋が極度に寒くなったり、かけてもいないのにレコードが鳴っていると隣人に苦情を言われたり…。それを聞いたアンナはヤヌシュとオルガに、母親の霊と交信し直接話すことを試みようと持ちかける。「妙な期待をさせないで欲しい。」一度は拒絶したヤヌシュだったが、ある晩、引き出しを開けるとそこには妻と自分しか知らないことが書かれた手紙が入っていた。信じられない出来事にアンナを訪ね交霊を依頼する。アンナとヤヌシュとオルガの3人は手と手を取り合って交霊を始める―。(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
シネマート新宿で予告を見たときは、もっと短いやつだったと思うのですが、単純に父子家庭で、父が拒食症になった娘をセラピーとかに入れて、救う話なのかと思ったんですよね。
でも、そういう単純な話では無くて、病院のセラピストが霊感のある人でオカルトの方に舵を切っていきます。
映画は冒頭、検察官であるヤヌシュが首吊り自殺の現場に立ち会うんですが、死体を地面に下ろす(このときも体を支えることなくロープを切ってドサッと落とす(笑))と、死んだと思われた人が立ってスタスタと歩いていってしまうっていう、不思議な始まり方です。
首吊ってるとき、よく見ると体が少し曲がってたので、ポーランドにも首くくり栲象さんみたいな人がいるのかな?と思いました。
ヤヌシュは検察官なので、舞台はワルシャワなのかな?、で起こる様々な遺体のある事件に関わるんですが、そうした死体を見た後でも、平気で手羽元のチキンとか食べられるんですね。
対照的に娘のオルガは食べても吐いちゃうんですけど、最初は母の死が原因でそうなったのは観客には明示されてないんですね。
物語が進んでもお母さんがどうやって亡くなって、なんでそんなにショックを受けてるかは描かれてません。
セラピストのアンナも、最初は大きな犬との生活がユーモラスに描かれてるんですが、物語が進むにつれ8年前に息子を亡くしてるのが分かります。
でも、そこに至るまでにも唐突に、アンナが乗ってるエレベーターに小さな男の子が乗ってたりするんで、描写としては分かり辛いんですね。
息子が何で死んだとかも説明されないので、そういう説明は一切されずに余白を楽しむ映画なんだと思います。
アンナに霊感があるのが分かっても、最初はヤヌシュは懐疑的です。
ただ家で起きる不思議な現象は、よくよく考えるとポルターガイスト的なものなので、ヤヌシュがアンナに相談すると、空いてる机の引き出しに紙とペンと奥さんが大事にしてたものを一緒に入れておくと、奥さんからメッセージが届く、と言われるんでやってみます。
でも次にヤヌシュが引き出しを開けても紙は白紙のままだったので、ゴミ箱に捨てちゃいます。
ヤヌシュは再びアンナに懐疑的になると、オルガを退院させます。
オルガを退院させてからある日、ヤヌシュがふと机の引き出しを開けると、紙にヤヌシュと妻しか知らないことが書かれてて驚くと、具体的なことを知るために、アンナに交霊(降霊)を依頼します。
ヤヌシュの家に来てもらってオルガと3人で降霊を開始するんですが、なかなか霊が降りてきません。
すると、オルガがあのメッセージは自分が書いたと種明かしをします。
それでも頑張って降霊してると、霊が全然降りてこない代わりに、アンナが鼾をかいて寝てしまいます。
それを見たヤヌシュとオルガが笑って、ジェリー&ザ・ペースメイカーズの「You’ll Never Walk Alone」が流れながら映画は終わります。
と、まぁ、父娘を救ったのは霊的なものでは無くて、おかしみだったという話しです。
お話としてはイタコの口寄せみたいな方に舵を切っていくわけですが、降霊(非日常)は失敗し、2人を救ったのは日常にある些細な事だったという話で、人との関わりはそう複雑なものでは無くて、もっとシンプルなものなんだよ、ということが描きたかったんだと思います。
イタコの口寄せについては、民主党政権のときに、国から助成金が出るってことでニュースになりました。
これは非日常であるからいいみたいです。
死との向き合い方を考えさせられる映画なんだと思います。
鑑賞データ
シネマート新宿 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2017年 131作品目 累計138600円 1作品単価1058円
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