差別と区別 ☆3.5点
アルゼンチンで大ヒットしたラブコメ映画『Corazón de León』を『プチ・ニコラ』のフランス人監督ローラン・ティラールが南仏マルセイユに舞台を移したリメイク作品。
主演にフランス人男優初のオスカー俳優ジャン・デュジャルダン、ヒロインにヴィルジニー・エフィラ
予告編
映画データ
結構前から映画館で予告編を目にしていて「これ絶対面白いやつや!」と思っていたので鑑賞。
平日夜の回でしたが8~9割の入りでお客さん結構入っていましたね。
男女比も半々くらいで年齢層も幅広かったです。
監督はローラン・ティラール
フランスの監督さんなので初めましてですね。
元々はアメリカのワーナーブラザースで働いてたようで、その後は芸能ジャーナリストとして有名映画監督のインタビュー記事などを執筆してたみたいなので、経歴的には先月観た『パーソナル・ショッパー』のオリヴィエ・アサイヤス監督に近い感じでしょうか。
主演はジャン・デュジャルダン
アカデミー賞主演男優賞受賞作『アーティスト』は見てなかったので、こちらも初めましての俳優さんです。
予告を見たときは、てっきり小さい俳優さんがやってると思ってて、観る直前まで知らなかったんですが、この俳優さんが身長182cmもあると知ってややテンションが下がりました。
CGだったり、膝立ち姿だったり、撮り方工夫したり、ボディダブル使ったりして撮ったみたいです。
ヒロイン役の主演にヴィルジニー・エフィラ
こちらも初めましてでベルギー出身の女優さんです。
観てる最中は何歳くらいなのかな?と思って観てましたが今年でちょうど40歳でした。
身長は175cmみたいで、映画内の男性の設定は136cmだったので約40cm差ですね。
あらすじ
敏腕弁護士のディアーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)は、女たらしの夫ブルーノ(セドリック・カーン)と3年前に離婚。
だが仕事のパートナーでもある彼とは毎日オフィスで顔を突き合わせるため、口論が絶えない。
今日もむしゃくしゃする気持ちで帰宅した彼女のもとに、一本の電話が入る。
相手の名はアレクサンドル(ジャン・デュジャルダン)
ディアーヌがレストランに忘れた携帯を拾ったので、渡したいという。
彼の知的でユーモラスな口調に気分も一変、ほのかなときめきを覚えたディアーヌは、さっそく翌日彼と会うことに。
久々にドレスアップをして、期待に胸を膨らませて待っていた彼女の前に現れたのはしかし、自分よりもずっと身長の低い男性だった。
当てがはずれたディアーヌは早めに切り上げようとするが、茶目っ気たっぷりのアレクサンドルの話術にいつのまにか魅了されていく。
リッチで知的で才能あふれる建築家の彼は、そんな彼女にいままで経験したことのないエキサイティングな体験をプレゼントしたいと申し出て、飛行場に案内する。
あっけにとられる彼女の手を引き、セスナから一緒に空中ダイビングを試みる。
絶叫の瞬間の後に訪れる高揚に、胸を弾ませるディアーヌ。
すっかり意気投合した彼らは、次のデートを約束して別れる。
こうしてふたりの距離は急速に縮まっていったが、周囲の反応は穏やかではなかった。
ディアーヌにいまだ心惹かれている夫は、相手が背の低い男と知ってショックを受け、アレクサンドルを侮辱する。
ディアーヌの母親は、社会的体裁を気にして反対する。
そんなムードにディアーヌ自身の心も揺れ始める。
自分は周りの目を気にすることなく、この人とつきあって行けるのだろうか。
アレクサンドルと本当に心を分かち合えることができるのか。
そんな彼女の気持ちを敏感に察知して、アレクサンドルは尋ねる。
「僕たちまだ続けられるかな」
彼の複雑な気持ちを垣間見て、ディアーヌの心はますます彼への思いと不安のあいだで引き裂かれて行く―。全ての女性にとって永遠のテーマである「オトコの価値は何で決まる?」という問いに、彼女が出した答えとは?
他人の視線や先入観に左右されがちな人間の心理を見つめさせるような普遍的なテーマも秘めた、ロマンティックで楽しいフレンチ・ラブストーリーが誕生!(公式サイトhttp://otonanokoi.jp/#fullPage_storyより引用)
ネタバレ感想
物語はだいたい予告編で見た通りに進み、予想した通りに終わる王道ラブコメです。
スマホを拾ってくれた男性は会話が上手く、ユーモアに溢れ、行動力もあり、男女問わず友人が多く、お金持ちでハンサムでって、非の打ち所がありません。
唯一、背が低いことだけを除いては。
ふむ、この条件で自分がディアーヌの立場だったら、背の低さなんて全然気にならないですけど、それだと映画がすぐ終わってしまうので、ヒロインが悩む話です。
アレクサンドルはレストランでスマホを落としたディアーヌを追いかけて渡さずに、スマホ調べて自宅にかけるっていうストーカーっぽいところがあるんですけど、それは本人も認めてて、その場で追いかけてホイっと渡したらそれで終わっちゃうでしょと。
そうはなりたくなかったと正直に話すところが好感もてます。
ひとめぼれで明らかに好意を抱いててグイグイ押してくるんですけど、それが嫌な感じにならないのも上手いんですが、ふつうにモテそう。
ディアーヌは知らない人とはディナーしない主義だったので、遅めのランチっていうかお茶する約束で会うんですが、初めて会ったそのレストランでは、アレクサンドルはウェイターとは顔なじみで、モデルみたいな美女が友人で声かけてくるのも好感高いし、安心材料です。
「忘れないうちに先にスマホ返しとく」っていうのもスマートで、レストランから飛行場に電話して1時間後のスカイダイビングを予約するって「この人何者?」って思いますし、この人と一緒にいたら楽しそう感がすごく出てましたね。
2回目のデートはディナーで待ち合わせは港の倉庫街。
倉庫の奥に入っていくと、常連しか知らないレストランがあって、シェフは日替わりで寄港する船のコックだという店のサプライズ感たるや。
店のマダムは口悪くて厳しそうな人なんですけど、アレクサンドルは気に入られてるっていうのもポイント高し。
もう、この2つのデート描写でバブルの頃のウォーターフロントって感じなんですけど、最近のドラマや映画では見なくなっちゃった王道のデート描写って感じがしてよかったんですよね。
フジテレビのトレンディドラマが流行っていた頃のワクワク感といいましょうか、なのでディアーヌがアレクサンドルに惹かれていくのがすんなりと入ってきました。
最初、ディアーヌは税理士とか会計士かな?と思ったんですけど、フランスらしいなと思ったのは、ディアーヌは離婚したけど、元夫とは共同で弁護士事務所を開いてて、そういう設定がフランスらしいなと思ったのと、アレクサンドルも離婚してて、もう成人近い息子のベンジー(セザール・ドンボア)がいるんですけど、初めて結ばれるのは自宅で、翌朝、アレクサンドルは仕事が早くていなくて、ディアーヌはベンジーと朝食を共にするっていうオープンさもフランスらしいなと思いました。
ちなみにアレクサンドルの家にはお手伝いさんがいるんですが、平田敦子さんに似てました。
あと大きな犬を飼ってるんですが、その犬にアレクサンドルが押し倒されるっていうギャグを何度もやってました。
アレクサンドルはディアーヌを自宅に招待して息子に会わせたりオープンな交際をしてるのに、ディアーヌは職場でも付き合ってるのを隠そうとします。
元夫に馬鹿にされるのが嫌だからなんですが、秘書の女性は同性のカンですぐに見抜きます。
ちなみに秘書の女性は玉城ティナちゃんに似てました。
ディアーヌはアレクサンドルに「家族とか友人を紹介してくれないの?」と言われてからやっと母に会わせるんですが、ここもフランスらしい皮肉といいますか、ブラックユーモアが効き過ぎてて、翌日、母と叔母と一緒に行くことになってた写真展にアレクサンドルを連れていくんですが、男性の裸の写真展なんです。
みんな立派な体格してるんです。
こういうところが、シャルリーエブドの国だな皮肉がキツいな、と思うんですが、権力に対しても同じようにやってるので、表現の自由を大切にしてるのと、タブーを作らない国なんだなぁとも思いますが、誤解されやすいよなと。
現に『世界の果てまでヒャッハー!』ではあまりいい気がしなかったですからね。
ディアーヌの母親も再婚してて、義父は聴覚障害者です。
写真展のあとディアーヌの母と義父を交えて4人で食事するんですが、ここでは義父の喋ってることがアレクサンドルには聞き取れなくて、何回も聞き直すっていうのをやってるんですが、ここは常日頃から小さいことで差別されてきたアレクサンドルだからこそ、変に気を使わないで聞き取れなかったところは聞き直したって解釈でいいのかしら?
また、このシーンでは、チラチラ見てくる隣のテーブルにディアーヌがキレるっていうシーンもあります。
食事のあと帰るときにアレクサンドルは、自分と付き合うことに自信が持てなくて戸惑っているディアーヌに気付いて、付き合いを続けるかどうか確認するとディアーヌは続けるとの返事。
それを聞いたアレクサンドルはディアーヌを困らせてる元夫のブルーノに宣戦布告します。
いつまでも惨めったらしい思いはやめろと。
道路上で言い争いになりますが、アレクサンドルはいがみ合ってるより自分を知ってもらった方がいいと考え、自宅で開くパーティーにブルーノを招待します。
ブルーノとは自宅のパーティーでもひと悶着あり、後日、卓球で勝負つけようとなるんですが、それは描かれずじまいで宙ぶらりんのままでした(ブルーノが依頼人の妻に走ったことでディアーヌに執着しなくなったというオチはあります)
パーティーにはディアーヌの母も招待したんですが、結婚を前提に付き合ってることを知ったらショックを受けて来ませんでした。
娘が障害のある男と付き合うのが耐えられないというのが理由ですが、聴覚障害の夫が「何言ってるんだ、お前の夫も障害者じゃないか?」と言います。
母は「あなたは見た目普通だから他の人からしたら分からないけど、あの男は見た目で違うから」と言うと、その心が差別を生むんだと言って怒られます。
こうしたことがあってやっぱりの周囲の目が気になるディアーヌは、アレクサンドルの心を傷付けてしまいます。
事務所の玉城ティナに相談すると「それはあなたの心が小さい」と一喝されます。
玉城ティナはアレクサンドルのことを当初から「小さい、カワイイ」と子供に接するがごとくお気に入りでした。
ディアーヌは今度こそと覚悟を決めてアレクサンドルの家に向かいますが、手掛けてる建築現場に出張に行ってて不在です。
ベンジーにも子供の頃からの話をされ、これ以上パパを傷付けないでと言われます。
ラスト、ディアーヌがとった行動は、アレクサンドルが手掛けている建築現場にスカイダイビングで駆けつけてハッピーエンドというものでした。
自分の勇気、決意を示すってことでしたが、ここはリアリティ無さ過ぎたかな。
劇中では冒頭のタンデムで1回飛んだだけですから、いくら何でも無謀だと思うのですが、アレクサンドルの反応も薄くて映画的な盛り上がりもあまり無かったです。
正直ラストは「えっ、これで終わり」って感じでした。
まぁ、劇中は結構笑って観れますし、結末も予想通りに落ち着く感じで、面白いといえば面白いんで☆4点でもいいかなと思ったんですが、ラストのスカイダイビングで拍子抜けしたのと、やっぱり俳優が小さい人じゃ無くて、CGで小さくしてそれを笑うっていうのは、この作品では致命的な気もして☆3.5点にしました。
『ツインズ』のときのダニー・デヴィートが147cm(または152cmの表記有り)ですか。
まぁこの役も本作も小人症じゃないんですが、昔はミゼットプロレスなんかや映画でも、そういう人の活躍の場があったと思うのですが、最近はめっきり減ってしまっていて、これも劇中で描いていたヘンな気の使い方という名の自粛の結果だと思うんですが、アナ雪にしろ本作にしろ、ありのままでと言ってるわりには、社会は逆行してる感じで残念な気もします。
このヘンな気の使い方は今流行りの忖度にも通じると思うんですけど、誰も望まない方向に進んでると思うんですよね。
本作の主人公を観てて、真っ先に思い浮かんだのは乙武さんなんですが、会話は上手いですし、ユーモアのセンスもあって、あとアレクサンドルと共通するのは自虐ネタのセンスですよね。
よく乙武さんが自虐ネタを言って複雑な顔をしてる人がいますが、面白かったら普通に笑えばいいんですよね。
それを不謹慎だという人がいる。
本作のディアーヌも初めはそういう人で、アレクサンドルの自虐にひきつったり、母や叔母が好意的な冗談を言ったのにも過剰に反応するし、秘書に対してでもそうでした。
こういう人って、勝手に自分の中の障害者像を作って、そこにあてはめようとする。
だから、そこから外れるとバッシングするっていうのが、昨年の不倫炎上騒動の背景にあると思います。
本来は障害者だろうが障害者でなかろうが当事者同士の問題のはずなのに。
と、まぁ、話がかなりそれましたが、冒頭に書きましたように自分なら気にしないですし、ディアーヌの悩みなんて同じフランス映画の『ティエリー・トグルドーの憂鬱』に比べたらおめでたい話なので、あまり深く掘り下げずにサクッと観るのがいいのかなと思いました。
鑑賞データ
ヒューマントラストシネマ有楽町 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2017年 102作品目 累計109100円 1作品単価1070円
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